その3
震える指先で、封筒から紙を取り出す。
マナの知る紙とは違う、ごわごわとした手触りに、手紙の書き手も苦戦したことを伺わせる文字が踊っている。
『日本から来たであろうあなたへ。
はじめまして、ユウコと申します。
先に言っておくと、ここは日本でもなければ外国でもない、地球上のどこにも存在しない世界です。信じられないとは思うけど、本当のことです。
ちなみにこの国の言葉や文字は脳内で自動翻訳されるみたい。お約束過ぎて嘘くさいけど、聖女の基本スペックに感謝。
今のあなたの戸惑いが手に取るようにわかります。
10日前のわたしもそうでした。そして3日前に召喚されたばかりのもう1人の少女もそうでした。
でも人間慣れるもの。
あなたはまだ夢やドッキリを疑ってると思うけど、わたしたちに会って話をすればきっと疑いが晴れるはずです。
この手紙を持つ三つ子たちはとてもいい子たちです。そしてとてもイケメンだけど、ときめいてはいけません。その理由はおいおい説明するとして。
早くお城に来て。そこがどこかわかりませんが、この国で安全なところは、もはやこのお城以外にないそうです。
ここに来ればあなたが知りたがっている全てのことがわかります。そしてやるべきことも。
道中お気をつけて。
ユウコ』
(そっかーセイジョって聖女かー)
薄々勘づいてはいたが、認めたくなかった。
ゲームや漫画の世界では掃いて捨てるほど多く存在する聖女設定。
万人ウケというよりオタクウケしそうな設定であるから、ドッキリよりは夢の方が可能性としては高い。
「聖女様、ご納得頂けましたか?」