第3話 兵士訓練所1
次の日、休暇に入っていたと言うスタッフたちが戻ってきた。厳つそうなおっさんもいれば普通のモブっぽいお兄さんもいた。その日から入隊の準備が行われた。
話を聞くと、どうやら今年の入隊者は80人くらいらしい。このような規模の訓練所が、この国には20くらいあるらしいので、全体では毎年1600人が参加していることになる。
そして、俺たちはそこで、何とか役に立つことが出来ていた。訓練所の草むしり、宿舎や、本舎の窓ふきから床ふき、壁ふきまでの掃除。
更には訓練用のアトラクション的な何かの設置まで行った。ちなみに、ヒナタはというと、ショッチョサンに無理矢理建物の中に連れていかれた。その時にショッチョサンが
『おいしく食べれるようにしてやるよ』
って言ったときはマジでやばいやつだと思ったけど、普通に料理を作らされてるだけだった。腐ってんな俺の心。
そして、現在入隊式の1日前。
「おい! カイト! ちょっとこっちへこい」
「何でしょうか?」
いつも通り草むしりをしていたが、ショッチョサンに呼ばれたので、そっちに向かった。
「お前何かと自力でやるのは不便だろ。いくつか魔法を教えてやるよ。水魔法だって雑巾洗ったりするのに便利だろう?」
「確かにそうですけど……えっ、と言うかショッチョサンって水魔法以外にも使えるんですか?」
「お前俺をバカにしてるだろ」
「してませんよ。全く」
「ほら!今微妙に口元が緩んだ! 全く……。まあいい、確かに後、俺が教えられるのは土魔法と、木魔法くらいだからな」
結局他に使えるのそれだけかよ!
「じゃあまずは、土魔法からだ」
「サンド!」
そう言うとショッチョサンの手からさらさらの砂が出てきた。
「そしてもうひとつ。マッド!」
すると今度は泥が出てきた。
「と、まあこんな感じだ」
「おおっ。で、使い道は?」
「……この土は不純物が含まれてないから、きれいな泥団子が作れるぞ」
おおっと。現在使えない度ナンバーワンに輝きました。
「ちなみにこの魔法はは血の中の鉄を変換して使っているから使いすぎると貧血を起こすんだ」
「死ぬほど使えないですね」
「実は俺もほとんど使ったことがない」
ならなぜ教えた。
「次は木魔法か」
「リーフ!」
するとショッチョサンの右手から葉っぱが数枚生えてきた。
「このように体から葉っぱを生やす魔法だ。鍛えれば全身から出すことができる」
「で、デメリットは?」
「成長のエネルギーがとられるから腹がとてもすくんだ」
さあ、使えない度ナンバーツーに輝いたぞ。
「なおこれも使ったことがない」
「死ね」
「おおっと。それを上司に言っちゃうか? 俺の力をもってすればお前を追い出すことなんてすぐにできるんだぞ」
魔法に職権乱用とかあるんですかねぇ。もしこの人が覚えていたら最強魔法でしょ。
「なんか、こうもっと使えそうな魔法は無いですか? 炎魔法とか」
「おれが得意なのは水魔法だ。それに反する炎魔法は苦手中の苦手だ。マッチくらいの炎の魔法で裸で冬に外に出るくらい寒くなる」
「……なんで、所長なんて出来るんですか?」
「筋力と体力……だな。」
脳筋かぁ……。まあ、確かに体力とかは飛び抜けているけど。
「と、まあさすがにこれじゃあ面目がたたないので、ある人を呼んでいる」
「ある人? すごい人ですか?」
「おれが知るなかでは、この訓練所で一番成績が優秀だったやつだ」
おおっ! それは期待できる!
「明日の入学式でありがたい言葉を頂くために、すでに呼んである。オーリンさん!」
そう言うと建物の中から、一人の女性が出てきた。
「どうもー! 紹介されちゃいました! オーリンです!」
うわっ。思ってた感じと違う。
身長は低かった。150もないのだろうか。ただ…その……胸が大きい。うん。身長とあってなくてなんだかバランスが悪く感じる。
ちなみに髪は長く、先がすこしカールしている。
「彼女は、3年前にこの訓練所から出ていった。現在は既に上位兵士にも関わらず、魔法で戦っている珍しい人だ」
「そうなんだよね! 皆は銃とか使ってるけど、私は魔法の方が使いやすくて便利だと思うな!」
「あれ? そういえばここは魔法を鍛えるんですよね?」
「そうだが。どうした?」
「いえ、なぜ皆、銃とかを使わないとかと思いまして……」
「あんな高いものを、皆に用意できると思うか? 大抵下級兵士は魔法か、剣や弓だよ」
なるほど……。まあ、これくらいの文明じゃそれが限界ってことか
「まあ、話がそれていたので戻すが、彼女の炎魔法は凄いんだ。見せてやってくれ」
「りょーかい!」
そう言うとオーリンは手を上に構えた。
「永遠の不死鳥!」
そう言うと、火でできた巨大な鳥が姿を表した。
「おお! 凄いですね! ショッチョサンとは違う!」
「お、おい。知らない間に俺をディスってないか?」
ショッチョサンは何かいっているが、それを無視して、オーリンの方を見る。
「そ、そ、そうでしょしょ。し、し、しかもこの鳥あ、あ、操れるんだよよよ」
むちゃくちゃ震えていた。
魔法が得意でもこれだけ代償があるなんて。
「じゃ、じゃあ次はもももっと簡単な魔法を見せるね!ね!」
震えすぎじゃないですかね。
「基本中の基本の技! ファイア!」
そう言うと手のひらから火の玉のようなものが浮かび上がってきた。
「これくらいの魔法だったら火力調整も出来るよ」
そう言いいながらオーリンは炎の威力を上げたり下げたりする。こっちの場合は全く寒そうではない。
「じゃあやってみて! って言いたいところだけど、君は炎魔法が得意かどうか知りたいな。そのために少し安全な水魔法を打ってみようか」
聞くと、水魔法と炎魔法は全く逆の関係になっていて、大抵水魔法が得意な人は炎魔法は苦手らしい。ちなみに水魔法と氷魔法は近いから水魔法が得意な人は
氷魔法も得意なことが多い。なぜかシャッチョサンは使ってなかったけど。
「じゃあ出せるだけ水を出してみようか」
「わかりました。よし! ウォーター!」
そう言うと指先から水が出てくる。
「少し力をいれると、手のひらから出るようになるぞ」
ショッチョサンがそんな説明をする。それを聞いて水のだす方法を変えてみる。
すると手のひらから出るようになった。
ただただ、時間が過ぎていく。
「……ちょっちょっ! もういいよ! これ以上は見ていられない!」
オーリンからストップがかかる。
オーリンは水浸しになった足元を見て、
「……100L? もしかしたらそれ以上かも……」
「それってどうなんですか?」
「確かショッチョサンが出せる限界が10Lだったはずだから、それをはるかに超えているね……。これは炎魔法は諦めた方がいいかもしれない」
オーリンはそんなことをいってくるが、多分これはデメリットが遅れているだけなのだろう。だから、後でデメリットがくる……は……ず?
あ、あれ? 今100L失ったってことは、そのうち自分のからだから100L抜けるってことじゃ……。
「一応炎魔法もやってみる? なるべく火力を押さえて」
俺のそんな不安をよそに、オーリンが話しかけてる。まあ、炎魔法もいくらかは使えるようにしておきたいから、試してみようかな。
「やります」
「へぇ。勇気あるね! じゃあやってみて!」
「いきます! ファイア!」
手のひらを天に向けて大声で叫んだ。
「ま、まずい!」
オーリンが叫ぶ。
手に力が入りすぎたせいか、高火力の炎が天に向かって放たれる。
「は、早く止めないと……?」
オーリンが止めようとしたが、俺の方を見て軽く首をかしげる。
「な、何ともないの?」
「あ、はい」
遅延のお蔭で……。ってまたやりすぎたぁぁぁぁ!!
「へぇ。君面白いね! いっそ兵士になった方がいいんじゃない!?」
あ、それはお断りします。絶対体が持たないので。
「いえ、兵士はちょっと……」
「そう? 惜しいね……。まあ、何をやっててもその魔法適応力は役に立つと思うよ!」
……心がいたい。デメリットが後にくるだけなのに。
言うべきか? いや、でも間違いなく不思議に思われるな……。やめておこうか。
「じゃあ私は少し休んでくるね! またね!」
そう言うとオーリンは宿舎の方へ向かっていった。
さて、何しようかな?
「お前! 凄いじゃないか!?」
そういやこいついたな。
「長い間ここにいるが、炎と水のどっちにも耐性がある人は始めてみたぜ! くそ! 羨ましいな!」
「と、言うわけで」
どんなわけだ。
「残りの草焼いといてくれないか?」
ああ。これは……
「そっちの方が早いし、お前なら余裕だろ? じゃあな!」
雑用で魔法を使いすぎて死ぬかもしれない……。