第一章 家を追い出されました…
目が覚めるとそこは見たこともない天井だった。
起き上がり周りを見渡すと男達が雑魚寝をしていた。
まだ焦点が上手く合わない目を必死に凝らして現状を確認し、そして思い出す。
「そうか、俺死んだんだっけ」
東京のとある会社に勤めていた俺は通勤中不運にも交通事故に遭ってしまった。
そして異世界に転生してしまったらしい。
俺が生まれた家はツヨイーゾ帝国のヨル家という貴族で武力で成り上がってきた家だそうだ。
俺はそのヨル家の次男アルトとして生まれた。
次男と言っても他の兄弟とは血が繋がっていない、いわゆ妾の子である。
そのため俺の立ち位置は良くはなかった。
父親はまるで俺がいないような扱いをし、正妻はなにかと俺に八つ当たりをしてきた。
兄弟とはあまり関わっていない、正妻が俺と関わるのを良しとしなかったらしい。
そんなこんなで俺は10歳になった。
正直転生前の記憶がなかったらここまで心が持たなかったと思う。
10歳になってすぐ父親が俺を連れて神殿に訪れた。
この世界では10歳になると固有スキルというものを神殿で貰えるらしい。
固有スキルには様々な種類があり、どんな固有スキルを手に入れるかで人生が決まるとまで言われている。
俺はこの固有スキルに僅かながらの希望を見出していた。
もしかしたらここで有能なスキルを手に入れて家族は俺を見直してくれるかもしれない。
神官が俺の前に立ち手をかざすと手から光を放ち体が熱くなるのを感じた。
光が収まると神官が俺に横10センチ縦5センチ程度の鉄の板のようなものを渡してきた。
それを手に取った瞬間鉄の板に文字が刻まれた。
「細分化」/「念動師」(他者には閲覧不可)
「なにこれ……」