トラップ?
カンカンと気持ちいい音が交互に洞窟中に響きわたる。
交互と言うのはオリカと一緒にやっているからだ。
「オリカ、疲れてはいないか。」
「ん、大丈夫。」
とは言っているが、ペースは下がっているし、額には汗が流れている。
「疲れたら、いつでも言えよ。」
「わかった。」
わかったとは言っているがどこまで本当か。
ちゃんと休む時にはちゃんとオリカには休んでもらいたいものなのだが。
しばらくして。
流石に俺も疲れてきたな。
たまに来る蛇もどきを倒しながらやっているからな。
ザッ
地面と靴が擦れる音が洞窟中に響き渡った。
そして反射的に音のした方向をむくそこには息をゼエハァしているオリカがいた。
「おい、やっぱり休め!そんな疲れていたんじゃ、もし戦闘になったりしても使い物にならないし、いい加減に休め。」
「‥‥頼む。お前のそれ以上無茶してる姿は見たくないんだ。」
「‥ん、わかっ、た。」
「俺もそろそろ休むとするよ。どれくらい取れたか一緒に見よう。」
「ん、」
一緒に地面に座るが定位置だと言わんばかりにオリカが俺の上に乗ってきた。
「なあ、どれくらい取れた?」
「これくらい。」
と言いつつ出してくる。
鉄4個 石ころ10個
何というか少ないな。
でも、筋力や器用を考えると妥当な数だと感じた。
まあ、他の人のステータスと取れる鉱石の数を知らないから体感だけど。
ちなみに俺は
鉄9個 石ころ18個だ。
それらをオリカの前にだす。
「まけた。」
「そうだな、だけどステータス差があるからなあ、ステータス差を考えれば妥当だと思うぞ。それにステータス差さえなかったらオリカの方が取っていたと思うぞ。」
「そう。」
少し顔を赤らめているのが近くに顔があるから余計にわかる。
ああ、我が妹はなんと可愛いことか!
しかし、鉄の数合わせて13個か。
なんと不吉な数字だろうか。
でも、それは英語圏の話だからまあいいか。
日本は4だからな。
さてと定期的にくる蛇もどきをさっさと倒す。
ん?なんだこれ?
黒水晶というドロップアイテムが落ちた。レアドロップか?
あとで効果と値段を見ておこう。
「そろそろ、疲れも取れただろ。」
「とれた、またいける。」
「さっきみたいに無茶するなよ。」
一応釘は刺しておく。
「ん。」
鉱石の採掘ポイントを探しながら歩き回っている最中。
「そういえばこのダンジョン、下層があってそこでは何かいい鉱石が手に入るらしいな。ちょっとさがすか?」
と話題をだす。
「知ってる、なんか特殊なアイテムが必要だとか。」
「そうなんだよな。」
「というかここどこかわかるか?どうも見覚えがないんだけど。」
いつのまにか嫌な予感が辺りに満ちていたのに気づき、確認の為にオリカに話しかける。
いや、嫌な予感が凄まじすぎて一緒に居るはずのオリカを確認したかったのだと思う。
「ん!?ほんとだ、どこ、ここ。」
そこは今までの迷路状のダンジョンだったのが一直線の道になっていた。
「おかしい、ちゃんと見ていたはずなのに気づかないなんて!」
それはどっちの言葉だったか、しかしどちらも驚いていたのは確かだ。
どういうことだ。後ろを振り返る。
そこにはあるはずの道がなかった。
どういうことだ?
「ここが、新しく発見された下層なのか?」
そう考える他なかった。
しかし、なんでここに来たんだ?
なんかのトラップ?
それだとしてもなんでだ?
トラップならモンスター部屋に入れるはずだからだ。
しかしモンスター、一匹もここにはいない。
それなのになんで嫌な予感が凄まじくあるのだろうか。
一応今まで温存しといたステータスポイントを振っておこう。
そして振った結果はこれだ。
Lv.20
HP260
MP120
ST105
STR98
VIT12
MIND9
AGI96
DEX5
LUK15
ステータスポイント0
STRとAGIは3桁に届きそうだ。
しかしそれでも安心できないというのが恐ろしい。
MPにも一応振っておいた。
MPは1振ると10増えるから結構増えたがそれでもないよりこの脅威が近くにある感じから考えたらちっぽけなものだ。
STRとか能力値に振っておけば良かったかもしれない。
横のオリカを見るとどうやらオリカも殺気のようなものを感じ取りステータスポイントを振っていた。
「準備は出来たか。」
「ん。」
いまの状況ではこれぐらいの方がいい。
そして一本道を歩き始めた。
しばらくすると。
扉があった。
その扉はとにかく大きく巨人でも居るのかと思える程の大きさであった。
そして装飾にドクロなど、お世辞にも趣味の良いとは言えない装飾で飾れられていた。
そして俺にしかわからないが、ここからとにかく巨大な嫌な予感がしていた。
そして気づいてしまった。
今までの嫌な予感としか言えないものはここから流れ出た残滓のようなものでしかないと。
しかし、出口はないやれることはここに居る何かを倒すだけだ。
しかし、体は正直であった。
体は恐怖からか動かなかったのだ。
体は震え、足も正直グラグラしている。
それでも、
「行くぞ。」
「ん!」
自分を奮い立たせて恐怖に縛られた体を無理矢理動かす。
扉は近づくだけで開いた。
そこにいたのは‥‥
何もいなかった。
どうやら訓練所のような土の床が広がっている広間だった。
しかしよくよく見てみると黒い何かが、いや、靄が集まっていく。
それはさっきの比じゃない程の恐怖をもたらした。
その瞬間、自分の中の何が弾けた。
まるで走馬灯のように一瞬にして今までの人生が見えた。
「アアアアアアアアアアアア!!!!」
そして体中から痛みを感じた、普通ではそんな痛覚は遮断されるはずだというのにだ。
痛みによってあらゆる器官が壊れるような感覚を感じる。
そして‥‥
「お兄!しっかり。」
その声が俺をひっぱりだしてくれた。
いつのまにか痛みは無くなっていた。そして体が軽い。まるで自分の体ではないようだ。
そして今まであった恐怖が消えていた。
ステータスを見てみる。
そこには
獣性因子Lv3
と映っていた。
これのせいか?
そして、急に後ろから気配を感じ、攻撃を避ける。
チッ!
掠ったか!
今までの感覚とまるで違う。
なんというか全てが研ぎ澄まされているような感覚だ。
なっ!
自分のHPをみると1しか残されていなかった。
オリカは先に気づいて躱していたようだ。
攻撃をされた方向をみると。
そこには死神がいた。
比喩ではなく、巨大な鎌を持ち、黒に染まったローブに身を纏わせた正真正銘の死神だ。そして死を纏っているとしか言えない雰囲気を持っていた。
鑑定を使う。
ビリッ
という音と共に鑑定が壊れた。
何を言っているかわからないだろうが自分でもわからない。
とにかく鑑定ができなくなったのだ。
しかし、鑑定結果だけは見えた。
その結果は
【選定者】『断罪のリーパーLv30』
だった。
ネームドか!
黒水晶
それは黒く染まった水晶。
その黒さから死をもたらす物とされた。
運低下-10 『死神の標的』
これより死は共にある。
しかし心せよ、それは人を殺すものではなく人が打ち倒すものである。