(8) 街中の兵士たち
陽炎の立つメインストリートを、野犬がトコトコと歩く。
ぼくたち4人は、歩きながらしきりに汗をぬぐっていた。赤道直下とも言える国の、荒れたアスファルトとコンクリートに囲まれた場所。熱が籠り、発酵しているようだった。
人の気配のないガソリンスタンド。昔作られたものがそのまま残っているだけで、ガソリンが輸入されないので営業していないという。高官たちの使用するガソリンは、BRICKS辺りの国が官邸内のガソリンスタンドに空輸しているという。
古びた、重々しい建物の前で、ぼくはギョッとして足を止めた。その前で2人、ボロ布にくるまって眠り込んでいたからだ。ボロ布からライフルが突き出している。
「おそらく、役所でしょうね」
イチカワが言う。昨晩楊さんが、一応各施設には見張りの兵士がいると言った。ライフルを所持しているということは兵士なのだろうが、入り口を塞ぐように居眠りしているのでは配置する意味がない。
昨晩、銃に弾が込められていないと聞いていたので、怖さは半減した。しかしあの兵士たちが練度のまったくないただのゴロツキだということなので、その方での怖さは増した。なにもしていなくてもいちゃもんをつけられ、暴行されたり、ときには連行されたりするらしい。楊さんの話では、兵士は民間人の暴動を防ぐことを、第一の使命とされているらしい。そして彼らの多くは民間人と旅行者の区別がつかないらしいのだ。
駅もなければバスも通っていない。今回は単にここの空気を吸いに来ただけだからいいが、今後問題になりそうだった。カカオ豆をさがしに行くとなると、都市から僻地へと移動しなければならないが、その足がない。レンタカー会社などあるはずもなく、タクシーもない。仮に車を買ったとしても、ガソリンがない。
公共交通機関のないメインストリートは、なにか間が抜けていた。中心地が分からないのだ。おそらくこの国の感覚では、中心地は大統領官邸なのだ。巨大な建物で、かなり離れていても見えた。
「ちょっと歩くけど、港に行ってみますか?」
日に焼けて頬を赤黒くしたイチカワが言った。




