表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
チョコっと変わった世界  作者: 勒野宇流
生まれ変わったら、日常……
4/54

(4) ぼくは、ぼくの「死」を思い返す

 

 駅からまっすぐ、家へと向かう。異世界なのに、迷うことなし。ぼくの生きていた現実世界とまったくちがいがないからだ。家の並びも同じ、信号の待ち時間も同じ。そして車の交通量も、同じくらい……。

 

 早めの帰宅に、母親が、……いや、母親と同じ人がキッチンから顔を覗かせたが、ぼくが、疲れたから帰ってきちゃったと言うと、フーンと言って引っ込んだ。ぼくが現実世界でよく言ってたセリフなのだが、それも通じたということだ。

 

 誕生日の、わずか1日前にぼくは死んだ。まったくもって、みっともないくらいの、単純なミスというような死に方だった。山登りに行って、無理な行程で疲れきって、足を滑らせて崖から転落したのだ。自分でも分かってることだった。朦朧とする頭で、こりゃちょっと危ないなぁ、死んじゃうかもなぁ、と思いながら歩いていて死んじゃったのだ。まだ成人してたったの数年。社会人にもなっていない。それでこんな死に方。育ててくれた親に申し訳なくて仕方ない。できることなら生き返って土下座したいくらいだ。

 

 統計では、人間は誕生日の前後で死亡率がちがうという。誕生日前の3ヶ月間は死亡率が低く、誕生日後の3ヶ月間は死亡率が高いという。単純に考えれば、12ヶ月どれも変わらないはずなのに。

 

 人間は無意識のうちに、誕生日を目標にしているらしいのだ。だから誕生日までは生き延びようと、微妙に意識が上がる。それで誕生日前後に、数字のちがいが出てくる。ぼくの死は、その事実に完全に逆らってる。誕生日一日前の死なのだ。人生の最後まで、なんというか、間が抜けている。自分でもイヤになる。事故は予測不能のものだからその統計には当てはまらない、とも言える。しかしぼくの事故は、たんなる自分の不注意としか言いようのないもの。誕生日への意識が強ければ、防げたかもしれないのだ。

 

 ぼくはこれから、この世界でどうやって生きればいいのだろう。波風立てず、平凡に暮らしていけばいいのだろうか。せっかく生まれ変わったのに、それもちょっとなぁ……。

 

 自室の、いや、自室とそっくりな部屋のベッドに寝転がりながら、ぼくはとりとめなく考えていた。

 

 



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ