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チョコっと変わった世界  作者: 勒野宇流
生まれ変わったら、日常……
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(1) 事実は小説より『普』なり

 

 日常に戻ってみても、なにひとつ違いがない。あれほど片っ端からラノベを読んだというのに、生まれ変わった世界が、なにひとつ変化がない、これまでの日常そのままの世界だなんて。そんなこと、まったく想像していなかった。

 

 「事実は小説より奇なり」、という使い古された言葉を思い出す。小説では、生まれ変わった世界はとんでもなく日常とかけ離れた世界なんだろう。でも事実はちがう。一度死んで生まれ変わった世界には、親もいて兄妹もいて、同じ国で同じ言語で同じ通貨で、通っている大学もあって電車もバスもある。あまりに当たり前すぎて、これこそ逆の意味で、「奇なり!」と言っていい。

 

 拍子抜け。イヤになるくらい拍子抜け。ぼくの住んでいる、いや、住んでいた、21世紀の日本。寸分の狂いもない。ぼくは本当に、あの崖から落ちて死んだのだろうか。案外、死んでなかったのではないか。でも、だとしたら、あの転落場所で見た、自分のメチャクチャな死体はなんだったのだろう。

 

 ぼくの死体を、手で触った感触がしっかり残っている。まだ温かかった。とても夢だっただなんて、一言で片付けられない。

 

 それはもちろん、こうやって、死んだあとも普通の生活ができることはとてもうれしい。でもでも、とっても拍子抜け。転生が日常。なんなんだこれは!

 

 ぼくは、今までと同じ生活をすごす。朝起きて、母親の作ってくれた朝ご飯を食べて、大学に行く。せめて生まれ変わったのなら、満員電車だけでも改善してほしいものだ。でも、そうはいかない。同じぎゅう詰めの車内に、ぐったりしながら揺られる。いいことも、悪いこともない。まったく変わらず。大学の授業は、やはりまったく興味を持てないもので、卒業という区切りを待つだけの、退屈な場所。就職をして社会人になったところで、退屈は変わらないだろう。食べるためだけの仕事をして、淡々と日常を過ごす。

 

 そんな気持ちだから、4年生だというのに就職活動に身が入らず、今もって内定を受けていない。

 

 ぼくが勝手に転生したと思い込んだだけなのか!!  なにしろ、あまりに違いがなさすぎる。あの、崖から落ちた感覚。そして自分の死体を見つめていた、あの光景。あれほど鮮明に覚えている。でも、夢なのだろう。なんとなく、ぼくは、授業など受ける気にならず、2限の途中で出てしまう。大講堂だったので、出やすかった。ぼくはひとり噴水わきのベンチで、本もスマホも見ずにボーッとする。

 

 


 

 


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