【無人駅】
台本ご利用前は必ず『利用規約』をお読み下さい。
『利用規約』を読まない/守らない方の台本利用は一切認めません。
※台本の利用規約は1ページ目にありますので、お手数ですが、『目次』をタップ/クリック下さい。
♂2︰♀1︰不問1
不気味な駅員さん ♂ セリフ数:8
落し物をした少女 ♀ セリフ数:9
黒傘を持った少年 ♂ セリフ数:6
ナレーション 不問 セリフ数:9
[あらすじ]《4分半程度》
少女は駅のホームで落し物を探していた。椅子の下、ゴミ箱の裏、階段の隅。ありとあらゆる場所を探すが見つからない。そんな少女に声を掛けたのは不気味な雰囲気を持つ駅員だった――。
【ナレーション】
閑散とした駅のホーム。
時折、冷たい風の吹くホームで二つ結びをした可愛らしい少女が椅子の下を覗いていた。
【落し物をした少女】
うーん、無いなぁ。
うーん、どこに落としちゃったのかなぁ
【ナレーション】
どうやら『何か』を落としてしまったようでゴミ箱の裏や椅子の下をくまなく探しているが見つからないようだ。
【不気味な駅員さん】
どうかなさいましたか?
【落し物をした少女】
うわっ!
【不気味な駅員さん】
おや、驚かせてしまい申し訳ありません
【ナレーション】
恭しく礼をした不気味な駅員はにっこりとこれまた不気味に蚩った。
その笑みに少女は少しだけ後ずさった。
【黒傘を持った少年】
蚩うのやめろっていっつも言ってるだろ?
【ナレーション】
後ずさった少女の真後ろにいつの間にか立っていたのは烏のように真っ黒な傘を持った少年だった。
少年の言葉にすっと笑みを消した駅員はそれでも人当たりの良さそうな顔を隠すことはせず、少女の前へ屈んだ。
【不気味な駅員さん】
ワタクシ、この駅の駅員でございます。
何か落し物を、致したのですか?
【落し物をした少女】
えっと・・・何を、落としたのか分からなくて・・・
【黒傘を持った少年】
またこのパターンか…。
【落し物をした少女】
え?
【ナレーション】
黒傘を持った不思議な少年は少女の消え入りそうな告白に額を抑えた。
少女は異様な雰囲気を持った駅員と自然に会話へ混ざってきた少年を眺めながらも忘れてしまった『何か』を思い出せない焦燥感に目の奥がつん、とした気がした。
【落し物をした少女】
あの、私・・・自分で探すので・・・
【黒傘を持った少年】
何を忘れたのかも分からねえのに?
【落し物をした少女】
うぅ・・・。
【不気味な駅員さん】
おやおや、そんなに責めるように言っては失礼ですよ。どうです、貴方様が宜しければワタクシ達が手伝いましょうか。
【落し物をした少女】
え・・・っと・・・。
【ナレーション】
少女はちらりと少年を見遣る。
少年は何だ、と少女を見返す。
【不気味な駅員さん】
こら、止しなさい。
【黒傘を持った少年】
はぁあーあ。
大方お前が落としたのはここにはねえだろうなぁ。・・・あー、ほら。電車来た。
【ナレーション】
駅員に目線で窘められた少年は頭を掻きながら言葉を紡ぐ。
それを待っていたかのようにガタンゴトンと電車がホームへ入ってきた。
【落し物をした少女】
あっ・・・。
【不気味な駅員さん】
おやおや、これは――。
『アレ』行きの車両ですか。
貴方様が落とされてしまったのは――。
【落し物をした少女】
あっ、・・・そう! そうよ、私が落としちゃったのは『アレ』だよ!
【黒傘を持った少年】
じゃあ、お前にこれやるよ。
【落し物をした少女】
これ、名札入れ?
【ナレーション】
少年が少女に渡したのは名前の入ってない名札入れだった。少女はそれを受け取ると電車へ乗る。
【不気味な駅員さん】
当駅のご利用、ありがとうございました。
【黒傘を持った少年】
無事に還れると、いいな。
【不気味な駅員さん】
えぇ、還れますとも。
【ナレーション】
二人の目線の先では『名前』行きの電車が音を立ててホームを出ていったのだった。
STORY END.




