【咲くは夢、枯れるは現。】
声劇タイトル
【さくはゆめ、かれるはうつつ。】です
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♂1︰♀2︰不問1
傘を持つ女 ♀ セリフ数:7
小指の無い男 ♂ セリフ数:9
香りの良い花 ♀ セリフ数:4
ナレーション 不問 セリフ数:6
[あらすじ]《3分半程度》
雨も降っていないのに傘を持つ女は、小指の無い男にキスを強請っていた。傍から見れば異様な光景だが、よくよく話を聞いてみれば二人は交際して二年になったのだという――。
【傘を持つ女】
あら、いいじゃない別に。
【小指の無い男】
何が『良い』だ。
お前の価値観で物を言うんじゃない。
【ナレーション】
赤い傘を持つ女は、雨も降ってないのにそれを差して、隣に立つ小指の無い男を見遣る。
その光景は異様に異様が重なり、一周回って日常に見えてしまうのは『此処』では仕方の無いことなのだろう。
【傘を持つ女】
別にいいじゃない、キスくらい
【小指の無い男】
阿呆なのかお前は。
何が『キス』くらい、だ。
【傘を持つ女】
・・・だって私達、付き合っているのよ?
【小指の無い男】
・・・・・・。
まだ口吸いは早いだろう。
【傘を持つ女】
だってもう付き合って二年よ!
・・・結構我慢した方だと思うのだけれど。
【小指の無い男】
知るか。俺からすれば普通だ。
【ナレーション】
どうやらこの二人は恋仲であるらしい。
交際2年にしてキスもまだとは、と周りに人が居るならば、呆れてていただろう内容に反応したのは、足元に咲く小さな花だった。
小さな、花・・・?
【香りの良い花】
ちょっと! さっきから聞いてればなんなの! そこの小指無し男! 意気地無しにも程があるんじゃないのかしら!?
【小指の無い男】
・・・。
キミ、場所を変えるぞ。
【傘を持つ女】
あら良いじゃない、少しくらい。
此処は夢の中だもの。“隣人”が聞いていたって、何らおかしくはないわ。
【小指の無い男】
・・・。
おい、誰が意気地無しだって?
【ナレーション】
雨は降っていないが、傘を差して奇異な目で見られないのは、周りにもっとおかしな者達が居るからだった。
此処は哀しくも嬉しくも、夢の中であるから。
小指の無い男は、足元の花を踏みつけながら声を荒らげた。
【香りの良い花】
い、痛い痛いッ! 何するのよッ!
夢の中で2年も付き合っておいて、キスの一つもしてあげないなんて意気地無しだって言ってるのよ!
【傘を持つ女】
ほら、お花さんはこう言ってるわ。
キスくらいして頂戴よ。
【小指の無い男】
他者に言われてするものでもない。
【ナレーション】
拗ねたように頬を膨らます女の足は、段々と透けていく。女はもう時間が無いわ、と傘を畳む。
【傘を持つ女】
次はぜーったいキスしないと許さないわよっ
【小指の無い男】
言ってろ
【ナレーション】
言い残して女が消える。
女の夢の時間が終わったのだ。
取り残された男と花はその場で黙る。
暫くして口を開いたのは花の方だった。
【香りの良い花】
良いじゃない、キスくらい。
貴方は恋人なのだから夢の中でくらい『夢』を魅させてあげなさいよ。
【小指の無い男】
馬鹿を言え。
もう死んだ恋人がそんな夢を魅せるとは、余計に残酷だろうが。
【香りの良い花】
本当に意気地無しね。
【ナレーション】
(ゆっくりと)
此処は、哀しくも、嬉しくも、
夢の中である。
STORY END.




