【月に見初められた姫】
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♂1︰♀2︰不問1
騎士団長 ♂ セリフ数:9
姫様 ♀ セリフ数:11
謎の女 ♀ セリフ数:7
ナレーション 不問 セリフ数:10
[あらすじ]《5分半程度》
姫様のお転婆に困り果てている騎士団長は今日が満月の日だと思い出した。今日くらいはお転婆も休んでくれないかという祈りを知らぬ姫様はまた騎士団の鍛錬場に忍び込んでいた――。
【ナレーション】
ここは騎士団専用の鍛錬場。
今日も今日とて鍛錬に励む団員達を指揮するのはこの国一番の戦闘力を誇る騎士団長だった。
【騎士団長】
覇気が足りないぞ、お前達! こんな事で国の騎士団が務まると思っているのなら大間違いだ!
【姫様】
そうよね、ちゃんと守ってもらわないと
【騎士団長】
そうですね、我々は貴方様を守る義務が・・・って姫様!? こんな所で何をしてらっしゃるのですか! 国の宝とも呼ばれる貴方様がこんな所へ来てはなりません!
【姫様】
あら、偶にはココへ来たっていいじゃない。それに案外、鍛錬を見ているのも楽しいものなのよ。
【騎士団長】
…………。
【ナレーション】
飄々と言ってのける姫様に騎士団長は呆れた様子で息を吐く。城からここまでの道中、ちゃんと護衛を連れてきているのだろうか。いや、お転婆な姫様の事だ。きっと一人でここに来たに違いない、と騎士団長は胃が痛くなるのを感じた。
【姫様】
ねえ、もっと近くで見てもいいかしら
【騎士団長】
他の者が萎縮して鍛錬になりません。ココに貴方様がいるだけで集中出来ていない団員もいるのですから。
【姫様】
んもぅ! 貴方はいつもそうね
【騎士団長】
迎えの者を呼びましょう。
きっと貴方様が居なくなって大層騒ぎになっていることでしょう。
【姫様】
嫌よ、まだ少ししか見てないわ
【騎士団長】
充分過ぎます。
そこで待っていて下さい。全く…来るならばちゃんと書類を通して頂かないと…。
【ナレーション】
騎士団長の小言に姫様はぷくりと頬を膨らませる。事の顛末をチラチラと窺っていた団員達は団長に睨みつけられ慌てて鍛錬に集中する。
そうして騎士団長が戻ってきた先に姫様の姿は無い。
【騎士団長】
……。
あのお方はまた一人で帰られたのか…。
すまないが、ここの指揮は副団長に任せる! すぐ戻ると思うが、休憩は各自取れよ!
【ナレーション】
念の為、武器を持った騎士団長は鍛錬場を出て、城までの道で姫様を探す。
一方その頃、姫様はドレスの裾を摘みながら城への近道である森の中を突っ走っていた。
【姫様】
この道なら団長さんに見つかる事も無いわね
【謎の女】
おやおや、女の童が一人。
【姫様】
……っ!? 誰!?
【謎の女】
そう怯えるこたぁないさ。
アタイはアンタに危害を加えない。
【ナレーション】
姫様に話しかけた謎の女は黒いローブを身に纏っており、一見すれば魔術師のような格好である。
今までこの近道を使ってきたがこのような女に会ったことの無い姫様は少しだけ後ずさった。
【謎の女】
ふっ、警戒するのは良い事だ。
しかしまあ、あまり後ろへ行くと落ちてしまう。
【姫様】
……っ!
【ナレーション】
女の忠告に後ろを向けばそこは少しばかり深い落とし穴のようになっていた。
【謎の女】
はい、捕まえた
【姫様】
……っ!?!?
【ナレーション】
後ろの落とし穴を気にしていた姫様は目の前まで来ていた女に気付けずに頬を手で包まれ、引き寄せられた。
ローブの下に見える唇は赤い口紅がよく映えていてニヤリと笑えばそれはとても不気味なものに思えた。
【姫様】
ぅ、いや……やめ、……やめてっ
【謎の女】
怯えるこたぁないと言ったろう?
だが、そろそろ時間だ。
【ナレーション】
謎の女は意味深に呟くと姫様を手放す。
カタカタと震える姫様は脱力し、地面に座り込んだ。
【謎の女】
それじゃあ、また会おう姫君。
次に会った時はアタイがアンタの為に尽くしてあげるよ。
【ナレーション】
そう言って去ってしまった謎の女。
姫様は立ち上がる事も周りを見る余裕すらもなく、ただその場で震え込んでいた。
【騎士団長】
姫様! この森を抜けようとしたのですか! 全く…! 今日は満月の日だと言うのに!
【姫様】
団長さん、あれは……何?
【騎士団長】
(姫様に聞こえないように)
・・・アレを見たのか・・・。
・・・それは追々話しましょう。
今は城に戻りましょう、皆大層心配しております。我々には貴方様を守る義務がありますから……。
【ナレーション】
そうして騎士団長は姫様を抱き上げる。
いつもならそれに文句を言って自分で歩くと言い張る姫様も顔を俯かせて身を任せた。
【謎の女】
……さあて、今日はどんな月が見れるのかね。
STORY END.




