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四人用声劇台本  作者: SOUYA.(シメジ)
台本一覧
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25/26

【小桃は寂しがり屋だから】

台本ご利用前は必ず『利用規約』をお読み下さい。

『利用規約』を読まない/守らない方の台本利用は一切認めません。


※台本の利用規約は1ページ目にありますので、お手数ですが、『目次』をタップ/クリック下さい。

 ♂1:♀2:不問1


 小桃こもも ♀ セリフ数:11

〈天才少女。様々な発明品を作って人々を助けているが、本人は特に興味が無さそう。たまに会いにくる蘇芳すおうの事は少し覚えている〉


 蘇芳すおう ♂ セリフ数:25

小桃こももの兄だが、小桃こももはそんな事覚えていないので、彼はただの『蘇芳すおう』。不器用だが、愛はある〉


 女性 ♀ セリフ数:7

〈恐らく小桃こもも蘇芳すおうの母親。娘に忘れられた現実を受け入れられず、脳が少しおかしくなった。会話が出来ない〉


 ナレーション 不問 セリフ数:16


[あらすじ]《8分半程度》

 カチャカチャ、トントン。部屋から聞こえる音は途絶とだえない。真っ黒な夜が来るまで、ずっと聞こえるソレは、少女の息が続いている証でもある―――。












【蘇芳】

 小桃こももめし


【小桃】

 すおー。ひさしぶり。ちょうど、おなかすいてたんだ。ありがとう。


【蘇芳】

 『ひさしぶり』じゃない。朝にも飯を届けたろ。


【小桃】

 あさ、…ああ。そうだっけ。それよりみて。

 てにもたなくていい、じりつがたのカサ。


【蘇芳】

 またみょうなモン作ってるな。

 商品化は出来そうか?


【小桃】

 それはむり。かぜによわすぎて、はなしにならない。


【蘇芳】

 そーかよ。それより、ほら。飯食わねぇと元気出ねーぞ。


【小桃】

 ん、たべる。


【ナレーション】

 物が乱雑らんざつに置かれた部屋の中。ほほ火傷やけどのある少女、小桃こもも蘇芳すおうの手からパンとスープを受け取る。


 小桃こももは昔から、機械イジリが好きであった。

 誰かが持っていた自転車を、誰も乗っていなくても走る自転車に改造かいぞうしたり。

 壊れた電子レンジを直すだけにはとどまらず、冷却れいきゃく機能まで追加する始末だ。


 そんな才能を放って置けなかった、金にがめつい父親は、小桃こももに必要最低限の生活だけをいて、機械や部品を与えて部屋に閉じ込めた。


 それ以降、小桃こももは作った発明品を父親に奪われながら、生活している。


【蘇芳】

 小桃こもも。外に出たいと思わないのか。


【小桃】

 ちょっとまえにも、それきいたきがする。

 そとは、いらない。きょうみないから。


【蘇芳】

 ……お前そう言うよな。


【ナレーション】

 パンを千切ちぎり、スープにどぷんとけて食べ始めた小桃こももに、蘇芳すおうは寂しげな表情かおをする。


 蘇芳すおう小桃こももの実の兄だ。機械イジリに超越ちょうえつした妹の事は、話の聞かない、だけれど可愛い奴、くらいにしか思っていなかった。

 自分の自転車はもう、どこか分からない所で勝手に走っているだろうし、家の電子レンジの冷却機能は意外にも結構役に立っているけれど、蘇芳すおうはそれだけで良かったと思うのだ。


 こんな広いだけの部屋で、機械だけをイジる生活なんて送らせたくなかった、と。


【小桃】

 おとこのひと、またさいそくにくるから。


【蘇芳】

 ……今度は、何が欲しいって?


【小桃】

 うーん、ひとのいのちをのばすきかい。


【蘇芳】

 …………。


【小桃】

 すおー? どうかした?


【蘇芳】

 ……っ何でもない。


【ナレーション】

 本当に、心底。


 こんな生活に吐き気がしてしまうのだ。



✼✼✼✼✼



【蘇芳】

 母さん、小桃こももに飯、やってきた。


【女性】

 あら、元気だった?


【蘇芳】

 ……、皿、ここに置いとくから。


【女性】

 何言ってるの、久し振りじゃない! だってこの間、元気なさそうにしてたから!


【蘇芳】

 ……。


【ナレーション】

 小桃こももとの食事を終えた蘇芳すおうは部屋に鍵を掛けて出てくると、リビングにやって来た。

 リビングの椅子いすには女性が座っていて、蘇芳すおうの言葉に反応して言葉を返すが、何かがおかしい。


【蘇芳】

 ……、母さん


【女性】

 まあいいわ、座ってちょうだい。この間、スーパーで美味しそうな和菓子を見つけたのよ!


【蘇芳】

 …、かあ、さんっ…!


【女性】

 え? なぁに、気を遣わなくたっていいわよ! 私が好きでしてるんだから!


【ナレーション】

 女性―――母親は、口調こそ明るいものの、椅子から動かず、ただ一点を見つめて喋り続ける。


 彼女は蘇芳すおうと同じく、小桃こももの機械イジリを放任ほうにんしていた一人だ。

 ただ、数年前。

 父親に軟禁なんきんされた直後の小桃こももに会いに行った彼女は、たった数日で母親を忘れてしまった小桃こももも、その事実も受け入れる事が出来ず、そのまま狂ってしまったのだ。


 今では小桃こももの事も、蘇芳すおうの事も分からず、ただ一人。寝て起きて、生米なまごめむさぼる日々を送っている。


【蘇芳】

 ………。




✼✼✼✼✼




【ナレーション】

 蘇芳すおうは考える。毎日、毎日。


 何が、いけなかったのか。

 どうすれば、良かったのか。


 父親に反抗はんこうすれば、怒りの矛先ほこさきは自分ではなく、小桃こももに向かう。


 小桃こももの頬の火傷は、つい先日、蘇芳すおうが『もう辞めよう』と話をしたせいだった。


【蘇芳】

 あと、何回…続ければいい…。


【ナレーション】

 母親はもう救えないし、小桃こももを連れて逃げても、きっとすぐに捕まってしまう。

 父親から与えられる金だけが、蘇芳すおう達が生き続けられる理由だ。


 小桃こももの発明品でかせいだ、合法ごうほうか違法か分からない金のお陰で、蘇芳すおう小桃こももにパンとスープを食べさせてあげられている。



 ・・・・・・。



 蘇芳すおうは、毎日、毎日、毎朝、毎晩、考えて、考えて、考えて。


 繰り返して、繰り返して、繰り返したある朝の事だった。



✼✼✼✼✼



【小桃】

 そと、いきたい。


【蘇芳】

 ―――――――――え…?


【小桃】

 すおー、そと、つれてって。


【ナレーション】

 いつもと同じ口調。いつもと同じ表情かお


 一瞬、何を言われたのか分からずに、蘇芳すおう小桃こももの顔を見つめた。


【蘇芳】

 な、…んで……?


【小桃】

 ? そと、きょうみあるから。


【ナレーション】

 この数年。何度も同じ問いをした。


 外に出たいと思わないのか。


 小桃こももは要らない、という。興味が無い、と。


 だから、だからこそ。


 この言葉が、蘇芳すおうの心を突き動かしたのだ。


【蘇芳】

 わ、…かった! ちょっと待ってろ、すぐ戻る!


【ナレーション】

 蘇芳すおうは部屋を飛び出して自分の部屋のクローゼットを開けた。ボロボロの袋に入った大金たいきんである。

 父親から渡される生活費のうち、使わない分はずっと隠していたのだ。


 いつか、何かのはずみで、自由になる為の動機どうきが見つかった時、覚悟を決められるように。

 蘇芳すおうは、袋を抱えて部屋を出る。


 相変わらず狂った母親の隣をすり抜けて、キッチンへ入ると、…蘇芳すおう()()を手に取った。





✼✼✼✼✼





【蘇芳】

 はあ…、はあ…、はあ……、


【ナレーション】

 蘇芳すおうは肩で息をする。

 広がる鉄の匂いに、鼻がげそうだ。


 倒れている父親はうめき声一つ上げない。

 蘇芳すおうは、カランとキッチンから持ってきた()()を床に落とした。


 覚悟を持って、自由を手に入れた蘇芳すおうは大金の入った袋を拾い上げて、部屋から走り去った。



✼✼✼✼✼




【蘇芳】

 小桃こもも! 行こう! 外に! 小桃こもも! こもっ………


【ナレーション】

 父親の体液で汚れた服をそのままに、蘇芳すおう小桃こももの部屋に入る。


 やっと、妹の願いを叶えられる。

 やっと、この地獄じごくから抜け出せる。


 そんな蘇芳すおうの目に飛び込んできたのは、









 父親と同じ色をした、妹だった―――。


【蘇芳】

 こ、も、…も……?


【ナレーション】

 胸は上下していない。死んでいる。


 蘇芳すおうの手から、大金の入った袋が落ちた。


【女性】

 あら、元気だった?


【蘇芳】

 ―――っ!!!


【ナレーション】

 母親だ。


 母親の手には、布切りバサミが握られていて、彼女は小桃こももを見つめたまま、いつもと同じ口調で喋り続ける。


【女性】

 何が久し振りよ! この間、会ったじゃない!


【蘇芳】

 ……、か、さん


【女性】

 私? 元気だったわよぅ。元気過ぎてこの間なんかね、ああ待って。こんな所で立ち話もなんだから、座って座って!


【蘇芳】

 ―――…


【ナレーション】

 蘇芳すおうは全ての感情が抜け落ちたような表情ひょうじょうをして、小桃こももが使っていた部品を手に取って、…振り下ろした。


【蘇芳】

おだやかな声で)

 小桃こもも。お前、すげぇな。

 俺には、こんな鉄のかたまりを、よく分かんねぇ妙なモンには出来ねぇわ。













【ナレーション】

 のちに。


 その家から見つかった白骨はっこつ死体は四人。


 一人は部屋で、一人はリビングの椅子に。椅子までの道には、引きられた跡があった事から、誰かに運ばれたと思われる。


 そして、地下の広い部屋の真ん中で、手を繋いだ二人の死体のそばには、血痕けっこんで汚れたメモが一つ。


 それは、兄らしく出来なかった彼なりの、精一杯の『兄貴面』、なのかもしれない。














STORY END.

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