求めた温もり
好き。
となりの体温が感じながら──。
好き──。
ただ、あなたが好き。
あなただけが、好き。
ずっとここにいてほしい。
何処にも行かず、ここにいてほしい。
額にかかる髪の毛をそっと、指でよけてやりながら──。
ここにいてほしい。
何処にも行かないでよ。
「好きだよ」
溢れた言葉は、壁に吸い込まれて消えていく。
あなたは、決して目を覚まさない。
となりで眠るあなたの横顔が、なによりもいとおしい。
ねぇ、好きよ。
あなたが側にいてくれるなら、
何だってするわ。
何でもする。
どんなことだって、してみせるのに──。
あなたは何も望んでくれない。
優しい微笑みだけを浮かべて。
「ねぇ、好きよ」
床に沈んで消えてしまう言葉。
あなたの息の根を止めてしまえたなら、あなたはきっとずっとここにいてくれるのに。
何も私はできない。
ただ見てることしかできない。
あなたの横に、私はいない。
私が眠った頃に、あなたは起き出して、ベッドを抜け出してこの部屋を出て行ってしまう。
私が起きた頃に残るのは冷たいベッド。
となりの温もりが消えたベッド。
行かないでほしい──。
何度も言いかけた言葉で。
でも、私はそんな言葉は言ったりしない。
言ってあなたを困らせたりしないわ。
好きだからよ。
本音は、ここにいてほしいの。
私のとなりに立って、私だけにその優しい微笑みを向けてほしい。
けれど、あなたは私のモノにはならない。
好きよ。
誰より、何より、
あなたが好き。
誰よりも、何よりも、
あなただけを愛しているの。
それでも、あなたは私を置いて、去ってしまうのね。
冷めたベッドで、何度朝を迎えても、慣れることのない寂しさを。
私は決して、あなたに教えたりしないわ。
そんなこと知ったら、あなたはもう私に温もりを教えてくれないだろうから。
でも、いつか、きっといつか、
知って
私があなただけを好きなこと。
好きよ。
好き。
いつか、私だけに与えて。
あなたの体温を。