第一話【生徒会長となった神子】
第一章が遂にスタート!
※かなり物語を変更しました。
月日は流れあれから10年経った。
当時5歳であったアルフォースももう15歳、現在【魔法学校シュテルネンリヒト】の高等科へ進学していた。
そして………。
「見て、生徒会長よ!」
「ああ、今日は朝から幸運ですわ……!」
「今日もお美しいです……。」
女子生徒達から黄色い言葉が投げ掛けられ……
「あれで同じ男……でも、惚れそう……。」
「可愛ければこの際……。」
と男子生徒からは危険な言葉が聞こえてきた……
生徒達の注目を浴びて歩いている者こそ、魔法学校シュテルネンリヒトの現生徒会長アルフォース・ティアナ・リンガーだった。
この10年で益々母エリシアに似てきて姉妹に間違われる程の美しさと可憐さを併せ持ち、性格も誰にでも優しく、何時も笑顔で礼儀正しい清楚な感じが更に人気を高めていた。
昔はショートカットだった金色の髪も、腰辺りまで伸びて頭の後ろで一纏めしていた。
………しかし、アルフォースも男である。可愛いとか美しいと言われて嬉しい訳ではない。
「はぁ……。」
「なんだ、朝からため息か?」
「!、シリウス、お早う。」
「ああ、お早う。」
ふんわりとした笑顔でシリウスに挨拶をすると、シリウスはアルフォースの頭に手をやって撫でながら挨拶を返した。
「キャー!副会長のシリウス様よー!」
「生徒会長と副会長のツーショット……ここの生徒で良かった……!」
アルフォースとは対照的のシリウスも人気が高く、何時もこんな感じだ。
……が、男子生徒には不人気である。
「ちっ、来やがった……。」
「アルフォースさんの横に何時もいるな、本当に!」
所謂アルフォースの横に常にいるシリウスが鬱陶しいだけなのだが、残念ながら、この学園では仕方がない事であった。
【魔法学校シュテルネンリヒト】の生徒会は全ての学年で上位者にしか入れない。
そして、生徒会長はこの学園で最も強い魔導師であることを証明する称号なのだ。
副会長はその生徒会長の次に強いという意味を持ち、生徒会長と副会長はこの学園では特に特別な存在なのだ。
学年とは高等科に限らず、初等科、中等科、そして大学部も含まれる。
その全ての頂点にアルフォースは中等科1年から立ち続けているのだ。(生徒会長決定戦参加は中等科から)
「お前がため息していた理由は大体察しが付くが諦めろ。」
「もう、他人事だと思って、やっぱり髪切ろうかな?」
「………止めておけ。」
「皆止めるよね?だからここまで長くなってしまったんだけど。」
「アルに何かあったら最初に被害受けるの俺なんだよ……。」
「?、なんで?」
「なんでもだ、会長室にさっさと行くぞ。」
「?、うん。」
2人で話をしていると、そこへ……。
「ア~ル~!おっはよ~!!」
一人の緑髪の女子生徒がシリウスを吹っ飛ばしてアルフォースの腕に抱きついた。
「う、うん、お早う、イオン。」
アルフォースとシリウスの昔馴染みにして、生徒会書記を勤める女の子イオン・フローリアンが抱きついてきたのだ。
「おいてめえ!イオン、何しやがる!?」
「あっれ~、シリウス居たんだ~。」
「てめ…、ごふっ!?」
シリウスは立ち上がろとしたが、今度は踏まれた。
「お早うございます。アルフォース様、イオン。」
「あ、お早う、リンク。」
「おっはよ~、リンク!」
生徒会の会計であるリンク・サリオンがシリウスを踏みつけて現れた。
「てめぇ……。」
「おや、失礼致しました。シリウス。何かを踏んでるとは思っていましたが。」
「白々しいこと言ってんじゃねぇ!このクソ執事!」
「まあまあ、そう怒ってばかりだと血圧上がるわよ?」
「まだそんな歳じゃないわ!全く……。」
シリウスは埃を叩いて立ち上がった。
「そういえば、アインの姿が見えませんが?」
「アインにはシュプリューレーゲン魔法学校に行ってもらってるよ。」
「五校魔法大祭の件ですね?」
「うん、三ヶ月後だからね。」
「ふん、どうせまた俺達の圧勝だろう、俺には興味無いな。」
「国王陛下主催だからちゃんとしてね、シリウス?」
「分かっているさ。」
「取り敢えず、会長室に行こうか?」
「ああ、そうだな。」
【魔法学校シュテルネンリヒト】
魔導王国レイフォードにある五つの魔法学校の中でも最も優秀で高い素質を持つ学生が多く集まる学園である。
初等科から中等科、高等科、そして大学部ありエスカレーター式で学年が上がる。
その中でも生徒会長とは特別の地位であり、その権限は学園長の次に高い権限と発言力を持つのだ。
生徒会長室は学園内にある生徒総会庁舎の最上階にある。
ここは、一般の生徒は勿論、一部の教員も入る事が出来ない場所である。
生徒総会庁舎・生徒会会長室
「アルフォース様、本日の業務内容でございます。」
「ありがとう、リンク。」
生徒会長及び副会長、会計、庶務、書記の五名については一部の授業免除の代わりにその他の業務が山のようにあるのだ。
「アル、今回の五校魔法大祭は各校から10名だろ?残りはこの前の生徒会長挑戦権トーナメントで残って役職付きになった4名だとして、もう1人はどうするんだ?」
「僕としてはエリナの弟が最有力候補かな。」
「!、シリウスと戦った子だよね?」
「うん。シリウスに破れはしたものの、あのまま埋もれさせるには惜しいからね。」
「実力、能力共に姉のエリナさんには劣りますが、それでも充分の実力者です。私は賛成です。」
「うん、じゃあ今度僕の方から伝えるよ。」
「おいおい、お前自ら伝えに行く気かよ?」
「うん。僕が頼む方だからね。」
「はぁ……。」
シリウスは溜め息を吐いたが、その気持ちが分かるリンクとイオンはシリウスに同情した。
そのやり取りをしていた所に、無表情の水色の髪をした少女がイオンの影から現れた。
生徒会庶務のアイン・レイ・ストラトスであった。
「帰りました。」
「あ、アイン。」
影から出てきたら普通は驚く所なのだろうが、最早日常と化している為驚く事も無くなってしまった。
「お疲れ様、アイン。向こうは要求を呑んでくれたかな?」
「はい、呑ませました。」
「そう、良かった。ありがとうね、アイン。」
「…………はい、アルフォース様。」
「良いのか?呑ませたって聞こえたぞ?無理矢理してねぇよな?」
「無理矢理は良くありません。何も話してないのに呑みました。」
「そ、そうか、じゃあ問題ねぇな。」
(そりゃ、そんな無表情でずっと見られたらそうするだろう。)
これ以上追及するのは無意味と思ったシリウスはそれ以上は特に何も言わなかった。
「………さてと、シリウス。」
「!、ああ、そろそろか。」
「僕とシリウスはこれから定例会だから後は頼んだね。」
3人は頷き、それぞれ出ていった。
「じゃあ行こうか?副会長。」
「ああ、会長。」
アルフォースとシリウスは定例会の為会長室から出ていった。
一方、その頃学園長室では……。
「ふむ、おんしが軍部から来てくれるのは心強い……が、まさか、弟の為にという理由とは思わなんだ。リンガー少将。」
「可愛い弟の為ならば何処へでも行くつもりですから、それに実力が無い者が来られても困るのでしょう?学園長。」
学園長である、ルドガー・ターフェルルンデの元に20歳にして最年少で少将まで上り詰めた天才にして軍部のエースのアルフォースの実兄・アルカディアがいた。
「さぞかしアルフォース君も驚くだろうな。」
「ええ、これから定例会ですよね?」
「うむ、その時に紹介もする予定だ。」
「楽しみですね!」
「……そうかのぉ、楽しみなのはおんしだけだと思うのだがのぉ。」
そして、定例会のある大講堂には学園の幹部が集まっていた。
初等科・中等科・高等科・大学部の各校長、副校長、教頭
王立教育協議会の会長、副会長が並んでいた。
『まもなく生徒会長及び生徒副会長がお見栄になられます。皆様御起立ください。』
アナウンスによりその場に居た者が全員立った。そして、直ぐにアルフォースとシリウスが入ってきた。
「失礼致します。」
アルフォースとシリウスは用意されている椅子へと進み座った。2人が座るのを確認してから他の者も座った。
「生徒会長、後は学園長と新任教師のみとなります。」
「承知致しました。ありがとうございます。」
「は、はい。」
ふんわりと笑顔で言うアルフォースに伝えに来た男性教諭は赤くなりながら返事をした。
「新任教師ってアルカディアさんだったよな?」
「うん、よくは分からないけどお兄様自ら志願したそうなんだけどね。」
「………ああ、そうか。」
(間違いなく弟目的だろあの人。)
「でも、何故か僕には隠そうとしていましたね、気になったので調べましたけどね。」
「あ、ああ、そうか。」
その場に居た全員が青ざめた。
(可愛い顔してなんてことしやがる……、てか、隠し事一切出来ねぇ……。)
『学園長と新任教師がお見栄になられました。皆様御起立ください。』
アナウンスと共に全員が立ち上がった。
そして、扉が開いて学園長とアルカディアが入ってきた。
そして、アルカディアはアルフォースに向かってウィンクをして、アルフォースは微笑み返した。
『これより、定例会を始めさせていただきます。その前に新任の教師であるリンガー先生から一言お願い致します。』
「ご紹介いただきました、本日より軍部から着任いたしました、アルカディア・ディオス・リンガーです。二年前まではこの学園にもいましたのでお力になれることもあるかと思います。よろしくお願いします。」
拍手があって少しして、学園長が司会役に手を挙げて合図を出した。
『皆様ご着席ください。』
全員が座り終え、学園長が周囲を確認した。
「うむ、先程挨拶をしてもらったアルカディア君は先々代の生徒会長でもあったここの元学生じゃ、そして、現生徒会長のアルフォース君の兄上でもある。必ず力になってくれる筈じゃ、皆も先生を頼ってもらいたい、では会議に移る。」
その後、1時間で定例会は終了して各自業務や授業に戻っていった。が、しかし、そこは弟大好きなブラコン兄アルカディアである。
「アルフォース!」
「……お兄様。」
「元生徒会長だからね、何かあれば力になるよ!」
「はい、ですが、何故志願したのですが?お兄様でしたらもっと良い所があると思うのですが……。」
「教師にも興味あったしね、まあ、教師といっても所属は軍部だからね、少将の仕事も別にあるから大変ではあるけど。でも、愛しのアルフォースに会えるなら我慢するさ!」
「………そうですか、今日はどうなさるのですか?」
アルカディアは目で横を見るようにして、僅かに間を置いた。
「今日は基本的には君に同行する事になるかな、一応生徒会顧問という立場になったからね。」
「分かりました。では、これが今日の僕のスケジュールです。」
アルフォースはアルカディアにスケジュールを渡すと一読して頷いたて指で顎先を当てた。
その動作を見てアルフォースは僅かに頷いた。
「了解、午後からまた来れば良いな。」
「はい、ではリンガー先生。僕達はこれから授業がありますので。」
「うん、アルフォースもシリウス君も頑張ってきてね。」
「はい。」
「では、失礼致します。」
アルカディアと別れた2人は少しして周囲を確認した。
「行ったか?」
「ええ、お兄様も気付いてはいたみたいだね。」
ずっと監視されていた感じで見られていたのだが、気付かない3人ではない。
アルフォースはアルカディアにスケジュール以外にもメモを渡したのだ、悟られない様に……。
「ここまで入り込むという事は相当の手練れか?」
「一応お兄様が調べてくれるそうなので、僕達は授業へ向かいましょう。」
「ああ、そうだな。」
2人はそのまま授業へと向かった。
一方で、アルカディアは………。
「優秀な弟を持つとお兄ちゃんは安心するよ……、君もそう思うだろう?」
「グフッ……。」
アルカディアの目の前には血だらけになっている年若い青年が横たわっていた。
「その制服は、ヴァーミリオン魔法学校の学生さんだろう?」
「はぁ、はぁ、グッ……、他校の……生徒に……。」
「他校の生徒に手を出せばどうなるか、かい?そりゃ、お互い様だろうに。君の処分はアルフォースに一任されている。何、殺しはしないさ。」
アルカディアは手を翳した。
「………今のヴァーミリオンは「剣帝」により秩序を保っていると聞いているが………。」
そして、記憶を覗いて、アルカディアは険しい表情となった。
「………これは………。」
その内容はアルカディアにとっても難解だった。
最初こそ目の前のヴァーミリオンの学生に対しては、記憶や供述を取ったらヴァーミリオンに送る予定だった。
………しかし、実態はそう簡単に終わるものではなかった。
「………こりゃ、俺が一人で判断出来る内容ではないな。はぁ………。」
溜め息を吐いて、これからの報告等をどうしようかアルカディアは悩んでいた。
「………仕方がないヤル気を出すしかなさそうだ………、それまで君は俺の監視下に置かせてもらおう。」
「くっそぉ………。」
アルカディアは転移魔法で男をある場所へと転移させた。
そして、この一件はある騒動の引き金と、アルフォースの運命に関連するとは、この時流石のアルカディアでさえ予想すらしていなかった。
刻一刻と、歯車は動き出していく………、神子の運命と共に……。