第一話 【神子の誕生】
廻る廻る、世界の導き運命を背負いし神に選ばれた『神子』が数千年の時を経て産まれる。
「冥光」の名を継ぎし赤子が……
果たして、それは「安定」をもたらすのか、それとも「破壊」をもたらすのか……
それは、『神子』の選択次第。
『神子』の誕生により、世界は再び廻りだす。
「世界樹:ユグドラシル」を中心とした世界
【ルーチェ・オスクリタ】
魔法と共に様々な種族が共存し、繁栄し、そして、時には争いもあり、世界は廻り続けた。
そして………
廻る廻る、使命を継ぎし『神子』が誕生する。
西の天地:【ヒンメル】
魔導王国レイフォード
~公爵家 リンガー邸~
「まだか……、まだなのかー!?」
部屋の前でウロウロして顔を青くしている男性は、
公爵リンガー家当主にして王国軍大将のアルフレド・オールド・リンガーだった。
現在、妻が産気付き今まさに出産をしているのだが、アルフレドはオロオロして邪魔だった為部屋の外に追い出されたのだった。
「旦那様、騒いでもどうにもなりませんよ。」
「だがっ……!」
「だが、も何もありませんよ。取り敢えず五月蝿いんで黙ってください、旦那様。」
「ううっ……辛辣……。」
メイド長のエルサにピシャリと言われてしまい、部屋の前に用意された椅子に力無く座り込んだ。
「全く、アルカディア様の時も大丈夫だったではありませんか、何が心配なのです?」
「い、いや、何と言うか……」
「【月光】の名前が泣きますよ?それに奥様はお強い方ではありませんか。」
「ま、まあ、そうなのだが……。」
「奥様は旦那様と違い若いから大丈夫ですよ。」
「俺もまだまだイケるぞ!」
「黙れロリコン(怒)」
「は、はい、申し訳ありませんでした……。」
妻のエリシア・ティア・リンガーとはかなり歳が離れている。
魔導王国レイフォードに住む者は【真人族】という人間種である。
人間種は二種類に分けられる。
・魔法が使え、長命である【真人族】
・魔法が使えず、短命である【亜人族】
である。
【真人族】は長命で、永遠に近いとさえ言われる。
その為、結婚すると年の差が生じる事がある。
それでも、離れていても平均としては100歳は離れないとされている……が、
アルフレドとエリシアはかなり歳が離れ、500歳以上は離れているのだ。
アルフレドとエリシアの出逢いについてはまた今度……
そして……、
「オギャー!オギャー!」
と赤ん坊の泣き声が聞こえたのだ。
「!!!!!!、漸くか!?」
「その様ですね、暫しお待ちください。確認してまいります。
」
「えっ!?」
エルサに待つように一方的に言われ入るタイミングを逃してしまい、エルサが部屋へと入っていってしまった………
「お、俺は……?」
数分後……
「お待たせしました……、何しているのですか?」
「い、いや、何でもない……。」
痺れを切らして入ろうとした瞬間にエルサが出てきたのでアルフレドは慌てて椅子に座ろうとして転んだのだった…
「………、まあ、いいでしょう。取り敢えずはどうぞお入りください。」
「う、うむ!」
元気を取り戻しアルフレドは部屋へと入り、赤ん坊を抱っこしている女性の元へと向かった。
「体は大丈夫かね?エリシア」
「ええ、私もこの子も大丈夫です。」
「おお!抱っこしても大丈夫かね?」
「ええ、どうぞ。」
エリシアから渡されてアルフレドは抱っこした。
「フフッ、エリシアにソックリだな。」
「ええ、あなた、名前を。」
「うむ、古代ルーチェ語で聖なる奇跡の意味を持つアルフォース、そしてエリシアのティアから、この子はアルフォース・ティアナ・リンガーだ。」
父と母、2人の祝福により誕生したアルフォースは父の腕の中で穏やかに寝ていた。
「アルカディアに続いて男だからな、これでリンガー家は安泰だな、次は女の子かな、な、エリ…ゴフゥ!?」
エリシアに次の子供について話そうとした為にエリシアの魔法により吹っ飛ばされた。
「出産直後の女性に言う言葉ではありませんよね?」
「は、はい、申し訳ありませんでした……。」
「全く、エルサさん、ルーザさんを呼んでいただいたもよろしいですか?」
「承知致しました、直ぐに呼んで参ります。」
エリシアの指示によりエルサは魔力測定師であるルーザを呼びに部屋から出た。
魔導王国レイフォードでは産まれた子供の魔力について測定するのが常識の一つとなっている。
どの様な魔力属性か、どれ程の魔力量なのかを調べる必要がある。
【ルーチェ・オスクリタ】では魔法が使えるか使えないかで、一生の約9割は決まると言われている。
それにより、魔法が使えない【亜人族】は差別を受けており、例え親が【真人族】でも稀に魔法が使えない子供が生まれる事もあり、そういう子供は例外無く差別を受けるのだ。
そして……
「失礼致します。ルーザを連れて参りました。」
エルサと共に初老の男性が機械と共に入ってきた。
「失礼致します、旦那様、奥様。この度はおめでとうございます。」
「うむ、ありがとう、ルーザ。早速ですまんが良いか?」
「勿論でございます、失礼致します。」
ルーザがアルフォースを受け取り、機械の中にある赤ちゃん用ベットに入れた。
そして……
「…………」
測定まで1分位掛かるのだが、少ししてルーザが…
「……、!!!!?」
「どうしたのだ!?」
「こ、これは、しょ、少々お待ちください!」
驚愕しているルーザだが、明らかに何時もと違った。
「まさか、これは………」
「ルーザさん?何かあったのですか?」
「………、旦那様と奥様の魔力は確か、旦那様が火と雷で、奥様が水と氷でしたね?」
「?、なんだいきなり、そうだが?」
「もしかしてこの子に魔力がなかったのでしょうか?」
「……いえ、魔力はあります。しかも、魔力量は旦那様より上です。」
「私よりもか!?まだ産まれて間もないのにか!?」
「しかもこの子が保有している魔力属性は……お二人とは異なるものです。」
「異なる……?」
魔力属性は大きく三つに別けられる。
・四大属性:「火」、「水」、「土」、「風」
・三天属性:「雷」、「氷」、「木」
・神属性:「光」、「闇」、「無」
である。
「神属性」以外は基本的に親の持つ属性により受け継げられる為、大体は親と同じ属性持ちとなる。
「神属性」のみは例外で先天的で、親とは異なる場合がある。
が、これだけでは驚くことはない。
「アルフォースは「神属性」持ちか?」
「はい、しかし、それだけではありません。本来なら有り得ない、「光」と「闇」です!!」
「!?」
「ひ、「光」と「闇」!?」
「そ、それって……」
「め、【冥光の黙示録】か……、ということは『神子』か!?」
「………アルフォースが『神に選ばれし者』」
この時、アルフォースは世界の命運を背負いし『神子』となる。
前の『神子』の伝説から凡そ三千年……世界は新な『神子』の誕生により廻りだす。
『選ばれし神子』と『冥光の黙示録』の伝説が再び世界に刻まれ、新な歴史が作られる。
廻る、廻る、世界は再び廻りだす。
小説を書くのは初めてですので至らない点がありますが、宜しくお願いします。