第四話 ~正義と悪~
ここまでシーファの話を聞いたがやはり信じる事は出来なかった。当たり前だ。
なんども言うようだがそもそも神様すら信じてない俺が悪魔だの天使だの信じる訳が無い。
そんな俺を見てシーファは気づいたのだろう。
「小僧、儂の話を信じてないおらんな?」
「当たり前だろ。お前みたいな女の子が悪魔?人間が家畜?そんな話のどこをどう信じればいいんだよ。」
「まぁ無理もない。天使や精霊などの超自然的な存在を見たことないのだろう?」
「見たことないし、お前がもし本当に悪魔なら超自然的な存在なんだから見えないはずだろ。」
「その通りじゃ。天使や悪魔は普通の人間には見えん。じゃが時々見える人間もおる。ある条件が揃えばじゃがな。」
「ある条件だと?霊感が強いとかそんなか?」
「霊感が強いのはもちろんの事じゃが、あとは天使に取り憑かれてる人間じゃ。」
天使に取り憑かれてる?取り憑くのは悪魔じゃないのか?
俺が今までテレビなどで見てきた物は悪魔や悪霊が人間に取り憑いたという話しかない。
そしてシーファは俺の考えが読めているかのように喋った。
「悪魔が取り憑かれたの悪霊に取り憑かれたの天使が護ってくれたって話は誰が言い出したんじゃ?どっちが正義でどっちが悪なんて誰が決めた?」
確かにそうだ。俺は天使が正義で悪魔が悪だと思っていた。いや、そう教え育てられた。
だがシーファの今までの話を聞くと、俺が聞いてきたものが、全てが覆ってしまう。
俺は信じたくは無いがシーファの話を聞き、とりあえず受け止めようと思った。
「天使が正義で悪魔が悪と人間に吹き込んだのは天使達じゃ。でなければ信仰心は生まれんからな。天使達は人間に取り憑いて悪魔のフリをし、他の天使達が助けに来る。そして人間を助ければ人間達は感謝し神に祈る。全部信仰心を生ませる為の天使達の自演じゃな。」
「じゃぁその取り憑かれてる期間は他の超自然的な存在が見えるから余計神に祈るってわけか。じゃぁなにか?俺は今取り憑かれてるからお前が見えてるのか?」
俺には霊感は無い。だから取り憑かれていないと悪魔であるシーファの事は見えないはずだ。
「大丈夫じゃ。小僧は取り憑かれておらん。今の儂は誰にでも見える。まぁ儂に限らず他の悪魔達も見えると思うぞ。天使であることを捨てた儂らは完全なる超自然的な存在ではなくなってしまったからのう。」
俺はここまで聞いてきたが流石にもう疲れた。
トラックにひかれてクタクタな状態で帰ってきたと思ったらこんな話を聞くなんて。
シーファにはもう続きは明日にしてくれと言った。
「なんじゃもう疲れたのか。最近の若いものは辛抱強くないのう。まぁよい。続きを話す時間はいくらでもある。儂はここに住むからのう。」
俺はシーファから聞いてた話の中で唯一自分の耳を疑った。
【儂はここに住むからのう】だと!?
何を言ってるんだこいつは。いや最初から何を言ってるんだって感じなのだが。
この家はただでも俺と妹の二人暮らしでいっぱいいっぱいなのに悪魔とシェアハウスなんて無理だ。
だから俺はハッキリと言った。
「ここは俺と妹の二人暮らしだからお前はここには住めな…」
急に俺の部屋の扉が開いた。
そこにいたのは妹の佑唯だった。
佑唯は時が止まったかのように立ち尽くしていた。
そりゃそうだ。晩御飯ができたので兄を部屋まで呼びに行ったら知らない少女が兄の部屋にいるのだ。しかも兄と2人きりで兄のベッドに寝そべっている。
俺の事も変態だと思うだろう。妹より年齢がしたであろう女の子を家に連れ込むなんて。
俺はなんて言い訳しようか頭をフル回転させて喋ろうとしたが先に喋ったのは佑唯のほうだった。
「あ!詩織ちゃんここに居たんだ。二人とも晩御飯できたよ!」
佑唯は笑顔でそう言ってリビングに戻っていった。
……え?まてまて。状況を整理しよう。
詩織ちゃんって?まさか俺には見えてないもう1人誰かがいるのか?いや、そしたらシーファ合わせて佑唯には3人見えていたことになる。
だがさっき「二人共とも晩御飯できた」と言っていた。
状況が理解できずにいる俺にシーファがこう言った。
「儂が詩織ちゃんじゃ。」