第参話 ~世界創造からイエス誕生~
少女は自身の事を悪魔だと言った。
神様すら信じていない俺が悪魔など信じるわけがない。
だが少女は俺の反応などお構い無しに話を進めはじめた。
「小僧は事故にあった時、首の骨が折れて即死しておった。魂が肉体を抜けかけている時にたまたま近くにいた儂が小僧の魂を無理矢理肉体にぶっ込んでから重症の傷を治してやったんじゃ。」
こいつ更に信じられない事を言いだしたなと思い、俺はハッキリ言ってやった。
「ちょっと待ってくれ。そもそもそんな話信じられないし、まずお前は誰だ?どっから来たんだ?家はどこだ?なんでここにいるんだ!?」
「いっぺんに聞くな。小僧の質問にはちゃんと答えてやるし、これから起こることも説明してやるつもりじゃ。」
そう言うと彼女は語った。
少女の名前はシーファ。
シーファは超自然的な存在の中の一つである悪魔。
どこから来たのかと聞いたが超自然的な存在は至る所にいるらしい。
ただ普段見えていないだけで精霊などはそこらじゅうにいるという。
神や天使は『アーウェルササイド』、通称『裏側』と呼ばれる所にいるらしく
人間達が住んでいる所は『フロンスサイド』、通称『表側』。
『表側』と『裏側』は常に同じ形で存在しているらしく、『表側』の人間達が作った建造物は『裏側』にも反映され、
『裏側』の精霊達が作った植物などの生命は『表側』にも反映されていて
常に表裏一体となっているという。
そもそも最初は神のみが存在している一つの世界だった。
しかし神は1人だけの寂しさから46体の天使を作られた。
だが天使達は神とは違い、不死の存在ではなく、他の生命を喰らわなければ存在できなかった。
そこで神は天使達を生かすべく、生命が宿った植物を創り出した。
天使達は喜んで植物から生命を喰らった。
そのうち植物だけでは足りないと1人の天使が言った。贅沢だという天使もいたが、他の天使達も足りないと言い始めた為、神は土を天使達と同じ形にし、生命を吹き込み人間を2人つくった。
そこで神も予想出来なかった事が起きたのだ。
人間には植物と違い、思考があった。
2人の人間はこう言った。
「自分達も神様や天使様達と同じで考えることも出来て感情もある。なのに喰われる為に産まれてきたのはとても悲しい。」
それを聞いた神は考えた末に家畜を創造した。
家畜の生命力を天使達が喰らい、肉体を人間が喰らう。
そうすることによって秩序が保たれはじめた。
だが人間は天使達と違ってとても多く繁殖してしまった。
そこで神は人間達をまとめる役として1人の人間の肉体に1人の天使を入れた。
そして名前を付けられた。
イエス と。
イエスは天使達の中でも特に力が強く、人間の肉体を手に入れて更に信じられないほど力がついてしまった。
その力は神をも凌駕するほどだった。
イエスは自分こそがこの世の支配者に相応しいと思い始め、まず手始めに自分が神になろうと考えた。
そこで神を殺そうとしたが不死である神を殺すことはできなかった。
しかたなくイエスは神をある物に閉じ込め、封印してしまった。
そして次の行動に移った。
人間を家畜にし、繁殖させ、管理する。と
だが人間はイエス1人では管理できないほど繁殖してしまっていた。
そこでイエスは40体の天使達に人間を管理させることにした。
40体の天使は人間達を6つに分けて管理した。
そして天使達は人間を増やし、喰らい、また増やし喰らっていった。
ある時ある天使が気付いた事があった。
それは喰らった人間によって自分達の寿命の延びや、力に差があると。
不思議に思った天使達は家畜である人間を喰わずに、しばらく観察する事にした。
そして観察する事によって理由が判明した。信仰心のある人間と信仰心のない人間では生命力が違うことに。
それが分かった天使達は人類全ての者に信仰心を生ませようと考えた。
神の存在を信じ、聖なる場で祈る事によって信仰心を生み、清めた人間の肉体と魂をもった生命力は天使達にとって力の増幅であり美味だった。
信仰心を生ませる為に布教活動がはじまった。
そこで神の存在を語るためにつくったのが『聖書』だ。
イエスは天使と人間が同じ場所にいるのが気に入らなくて、世界を『表側』と『裏側』に分けた。
そして天使達は『聖書』を使い、1600年かけて人類に信仰心を植え付けた。
そこから現代にいたるという。突拍子もない話だ。別に否定する気もないが信じる気にもならない。
まず俺がした質問は4つだ。それに対して内容が100も200もになる答えが返ってくるとは思わなかった。
「まだ信じられんか?だがこれは全て真実じゃ。受け止めるしかないんじゃ。」
「そんな話をいきなりされて信じるやつが珍しいだろ!てか今の話に悪魔と精霊が出てこなかったのはどうしてだ?」
「ほほう、いい質問じゃな小僧。まず精霊から説明してやる。
精霊はイエスの次に力を持っていた天使が作ったのじゃ。
その天使は人間より植物を好んで喰らっておった。だが神がいなくなり他の天使達は人間を好んでいたので自分で植物を管理する事にしはじめたんじゃ。そこでその管理を手伝ってもらう為に精霊を作りおった。
だから精霊は今でも『裏側』で植物、草木をつくっておる。」
精霊は働き者になのか。とか思いながら俺は聞いていた。
「そして悪魔じゃな。悪魔は元は天使じゃ。悪魔は儂を含め4体しかおらん。
神が創った46体の天使のうち、1人はイエス。もう1人は精霊天使、そして40体はそのままの天使で残り4体が悪魔じゃ。」
この話をここまで聞いた俺はもうついて行くのに必死というか、ほぼついていけなかった。
「頭痛い」
俺はボソッと呟いた。