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9/11

頭痛い

 たくもー、どいつもこいつも・・・・・・って、何? また私? ちょっと、さっき喋ったばっかりじゃない、何で二回も連続になってるのよ。大体、私の話なんて聞いても面白くもなんとも無いでしょ。えっ!? 何よ、褒めたって何にも出て来ないわよ。それに、こんなこと褒められたって嬉しくともなんとも無いわよ。むしろ不愉快だわ。あーもー、腹の立つ。はいはい、分かりましたよ、やればいいんでしょ。どうも、誠に不本意ではございますが、引き続き木下さきがお話させていただきます。



 イライラする。本当にイライラする。なんかもうイライラする。何に対してイラついているのか分からなくなるくらいに、色々諸々余すところなく憤りを感じるわ。

 ――そう仰らずに。

 仕方がないじゃない、私はそういう風にできているのよ。怒りの感情なんて抑えたって不健康なだけじゃない。

 ――悪いようには致しませんから。

 悪いようにはって何よ、どうするつもり? いい加減なこと言わないでくれる?

 ――それなりの対価を頂ければ、全て上手く行くんですよ。

 そんなこと言われても何にも持ってないでしょ。もう、何なの、このチープで残念極まりない問答は。B級映画でもこんな台詞使わないわよ。

 ――いえいえ、そのようなものを頂くつもりはありません。貴方のようなお美しい女性に求めるものなど一つしかありません。

 ふん、褒めたって何にも出て来ないわよ。本当に発想が貧しいと言うか卑しいと言うか・・・・・・最低ね。

 ――えっ!?

 はぁ!? 間抜けな顔して『え!?』とか言ってんじゃないわよ。男もバカなら女もバカね。不愉快だわ。

 ――さあさあ・・・・・。


 プチッ。

 途切れる映像。

 篭るストレス。


「あー、時間だから今日はここまで。次で最後になるから、その後感想文書くからな」

 やっと終わった。酷い授業だ。芸術だか文学だか知らないけど、不快だ。悲劇と言うよりは貧相な喜劇にしか見えない。まあ、私がものの分からない人間であるからなんだろうけれども、分からないものは仕方がないでしょ。


「微妙だな」

 珍しく齋藤と意見が合ったわね。

「もっと女優さんがエロく見えるようにカメラ寄せればいいのに」

 前言撤回。

「性も暴力も中途半端で、楽曲も正直単調で五月蝿いだけと言う感じかな・・・・・・」

 分かったようなこと言ってんじゃないわよ。こういうことだけ詳しくったって仕方がないでしょ。

「下らないこと言ってんじゃないわよ」

「下らなくないよ、大事なことだ」

 珍しく強く主張するのね。全く、どうでもいい所で真剣なんだから。可笑しいでしょ。

 私は大きくため息をつく。

「いや、だってエロとかレイプ性を持った表現ってそこら中に溢れているだろ」

 そう受け取るあんたが変態なだけでしょ。まあ、関心をもっている人も多いだろうし、そういう見方も出来るのかもしれないけれど、私は認めない。

「同意を求められても困るでしょ」

「・・・・・・大事なことだと思うんだけどな。俺ならもっとこう、このあたりからこんな風に」

 身振り手振りでカメラの位置やら撮り方やらを力説してはいるが、正直良く分からない。

「私に言われても分からないわよ」

「いや、そんな大層なもんじゃないよ。カメラんトコに人がいて、その人の目線の通り動かすだけだよ。難しいことは俺にも分からん」

「そう言う目線で女の子を見てるってこと?」

「大雑把に言ってそう言うことだな。例えばこんな感じで・・・・・・」

 そう言って私の体に不愉快な視線を浴びせてくる。そこまで悪い気がするわけではないけど、何と言うか、恥ずかしいでしょ。

「止めてよ、気持ち悪い」

 とりあえず叩く。とりあえず。

「悪い悪い。でも、まあ、女の子も男の視線気になるだろ? そう言うのって大体気持ち悪いだろ」

 まあね。

「悟られないようにするものでしょ」

 気持ち悪いし。

「確かに。秘めると言うか恥じらいと言うかも大事なポイントだ」

 無駄に上機嫌ね。

「やけに嬉しそうね」

 腹立たしいことに。

「俺こういうの好きだからな。エロい映画とか・・・・・・ホラーっぽいのよりも下品で馬鹿馬鹿しいのが良いね」

 頭痛いわ。

「はいはい」

「なんだよ、これでも大真面目なんだぜ」

 力説するな。

「何? 変態監督にでもなりたいわけ?」

 少し考えて、真面目なのかどうか分からないような、何かもの言いたげな顔をする。面倒くさい。

「おう。そう言う業界で働きたいな。

 監督になるかは別として変態にはなっておきたいな」

 逆でしょ。変態を否定しなさい。お願いだから真剣にそんなこと言わないで。

「はぁ?」

 ふざけないでよ。

「俺、真剣だぜ」

 言葉が出ないわ。

「試しに木下で何か撮らしてよ」

 はっはっはー、って笑えないでしょ。笑うな。

「ふざけるな」

 とりあえず殴る。とりあえず。

「痛って」

 あんたが悪い。これでも積極的に話しかけていったところなのに、何なのよ。ああ、もう、今日はおしまい。勝手に痛がってろ、じゃあね。


 バカでエロで・・・・・・まあ、そうれは別に、二百歩くらい譲ってやれば、かまわないのだけれども、おまけに変態とは・・・・・・。しかも、齋藤はかなり本気だ。夢を追いかけるのは悪くないわよ、バカで残念だけど、どんな夢を見ようが自由だろうけど・・・・・・。あー、何で、私はこんな奴を・・・・・腹立たしい。何で、何でなのよ。

 でも、嫌いになるほどではないのよ、気持ちが冷めたって訳じゃないからね。ちょっとショックだったから、今日はここまでってだけだからね。あー、もー、頭痛い。変態の癖に人を困らしてんじゃないわよ。

 まあ、そんな感じだから、私の話はここまで。エロとバカと変態の話だけでごめんなさいね。でも、仕方がないじゃない。もういいから、他の人の話聞いてあげて下さい。じゃあね、バイバイ。お願いだから、休ませてもらえる?

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