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咎人の宴  作者: ノムリ
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曖昧な覚悟

 ピピピピピ、とスマホのアラームが鳴る。


 布団の中から伸ばした腕をで出鱈目に動かしてスマホを掴み取り、画面に触れてアラームを止めた。

「ふぁ~、三時間しか寝れなかったな」

 寝癖の着いた髪を掻き大きな欠伸をしながら洗面所に向かった。鏡に映る自分の顔は疲れ切ったサラリーマンみたいな顔をしていた。

 長時間戦闘の疲れを三時間の睡眠で完全に取ることは不可能だったようだ。冷水で顔を洗い無理やり眠気を飛ばした。タオルで顔を拭きリビングにあるテレビの電源を入れた。


『昨夜十二時に出現したゴブリンの集団を神話学園の生徒の活躍により鎮静化されました。――――』

 ニュースを聞き流しながら冷蔵からアルミパックの栄養ゼリーを取り出し口に加えた。疲れが残っている体に固形物はまだキツイ。ゼリーを飲み込みながらイスに掛けてある制服に手を伸ばした。

 今朝、家に帰ってきてから洗濯して乾燥させたやつだ。血痕も血の生臭い匂いも取れていつも通りの制服だ。袖を通して、空になった栄養ゼリーのパックをゴミ箱に投げ入れる。鞄を持ち腰に刀をそして家を出た。


「あ~、いい天気だ。憎らしいほどに」

 ドアを開けて外に出ると見事な青空だ。太陽の光が忌々しい程に注がれている。

 学校に向かって歩いているとあちこち壁に引っ掻き傷や砕けた部分がある。昨日の戦闘の痕だろう。死体に関しては掃除屋という魔獣の死体回収班がある存在するが、破損個所は一定のレベルまで壊れない限りそのままにする。ちょっとの傷を治していたらきりがないからだ、資源にも限りがある。

 

 自宅から歩くこと十五分で燕が通う。神話学園に到着した。正式名所は神話学園名古屋支部だ。神話学園は東京、名古屋、大阪の三つがある。


 体育館に入ると入口近くから一年生、二年生、三年生の学年順にならんでいた。自由な場所に座れるので逃げる時に最初に逃げられるように一番後ろに座る。腕時計で時間を確認すると開始するまで二十分はある。

「暇だし寝て待つか」

 腕組をして目を閉じるとすぐに意識は薄れていった。


 真っ白な空間に燕一人と数歩先に地面に突き立てられた紅色の刀身の恐ろしくそして美しい刀が一本。

 刀に近づき触れようとした瞬間に声を掛けられた。


「主は儂を手に取る覚悟があるのか」


 声が聞こえた方を見ると、そこにいたのは百四十cm程の背丈に病的なまでに白い肌。紫色の着物に身を包み。長い黒髪の間から除く額から伸びた二本の角も生えた鬼の女の子が居た。


「覚悟か、正直曖昧だな」

 両親とも討滅者で二人とも殉職が敵を取るために学園に入ったわけじゃない。危険度は他の職と比較にならない、代わりに金額がいいから選んだだけだ。生きるためには金がいる。

 別に親が嫌いだったわけじゃない。愛してくれたし愛していた。両親が居なくなった時は泣いたし、子供の頃は敵を取ろうと誓ったこともある。だけど、神話学園に入って両親が見ていた景色を、同じ体験をしたら、殉職するのも当たり前なことだと思えてならなかった。

 任務に迎えば危険は付き物。大型魔獣との戦闘は殉職者が出ることは当たり前。自ら望んで危険に飛び込んでいるのだから。


 鬼の女の子は何かに納得したのか目を閉じて頷いた。 

「まあええわ。覚悟が決まったら儂の名前を呼び。儂の名は――――」


 薄れる意識の中で鬼の女の子の名前を聞いて意識を失った。

『以上で始業式を終了します。学生の皆さんは電子掲示板でクラスを確認して各教室で待機していてください』


 目を覚ましたと同時に始業式は終わっていた。

 四十分ある始業式を全部寝て過ごした事に溜息を洩らし電子掲示板で確認を終えてクラスに移動を始めた。二年生は三クラスあった一年生では四クラスだった。減ったのは学園を辞めていった生徒数が関係している。ケガが原因でやめる生徒もいれば戦場に出て精神が折れてやめる生徒もいる。別段珍しいことじゃないが知り合いがやめると少し寂しく感じる。


 燕は自分のクラス二年A組のクラスに到着した。

 ドアを開けて教室を見渡し出席番号順の自分の席に座って教室を見渡した。僅かにだが知らない人もいる。

「燕じゃんか一年間よろしくな!」

 隣の席に座っていたツンツンした髪が特徴の中峰なかみね勝悟しょうごが朝から無駄に高いテンションで挨拶をしてきた。

「よろしく、朝からなんでそんなにテンション高いんだ?」

 フフフ、と腕を組みながら笑っている。正直聞いたことを後悔した。どうせ徹夜明けの謎のテンションだとそんなことだろ。


「テンションが高いその理由は徹夜だからだ」

 やっぱりか。俺も三時間しか寝れてないしな。とのテンションの高さに納得した。

「おはよう。二人とも」


 声を掛けてきたのは同じ俺と学科の橋本はしもと拓真たくまだ。指示が出すのが上手いから集団戦になるとリーダーの役目を負うことが多い。


「中峰くんは一段とテンション高いね」

「徹夜だそうです」

 なるほど、と理解したらしい。拓真もいつもに比べて疲れがたまっているようだった。


「お前も疲れ取れてないっぽいな」

 苦笑いをしているということはそういうことなのだろう。

「おはよ~!」

 ガン!と後頭部に強い衝撃が走った。頭を擦りながら後ろを見ると夏凛が肩にL96の入った黒いバッグを担ぎ仁王立ちしていた。

「お前も徹夜なのか?」

「よく分かったね。家に帰ったら五時半でいろいろやってたら時間なっちゃって寝れないよ!」

 グッド!と親指を立てているが、全然グッドではない寧ろバッドだ。

 四人で昨日のゴブリンの大量発生について情報交換したり、次に大量発生するのは何かについてなど、主に学生らしくない会話をしていた。


「担任が来たぞー席に着けー」

 前のドアから入って来たのは数学担当の田村先生だ。怒らせない限りは普通の先生だ怒らせなければ。そう怒らせないことが大事だ。本当に。

 ホームルームは昨日のゴブリンについてと始業式そうそう学園を辞める人が居たという話しがあり、十分ほどで終わった。


 ホームルームが終わり次に始まるのは学科の授業だ。

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