最終回 後編 秀曰く 終わりよければすべて良し
ついに長かった異世界孔子伝も最終話です
「ここは……」
案内された空間は奇妙な所だった。
空を見ると、いや床下にも大量の星が瞬いている。
まるで星々の海の中に浮かぶガラスケースの中みたいだ。
男は地面に日本の刀を刺してから言った。
それぞれ折れた麒麟剣の片割れだ。
「ここはこの平行世界群から外れたありとあらゆる権能が通用しない空間だ」
「なるほど一切の能力を排除してサシでやり合おうというわけか」
敵の真意はわかった。だが……
俺は剣道をやったこともないのに勝てるだろうか。
相手は無数の端末を持つ男、当然その中には剣術家もいたはずだ。
果たして、あっという間に差がつけられる。
こちらは逃げるので精一杯だった。
「逃げてばっかりでは勝てないぞ」
覚悟を決める。
「ゃああああああああああ」
目を閉じ敵に突っ込む。
ドスッ、鈍い音がした。手応えがある。
目を開くと敵の胸に刀が刺さっていた。やったのか?
「どうして足が動かなかった……」
敵は驚愕している。
「まさか孔子……」
「その通りだよ」
後ろから声がして、振り返るとそこにはもう一人の男がいた。
「私の名前は孔子、そこの偽物とは違って本物さ」
「孔子……!?」
何だって確か孔子はあいつに取り込まれたんじゃ? というかそもそも何でここに?
「聞きたいことは沢山あるだろうから順を追って説明する」
「まず、あいつは取り込んだ人間の記憶を見ることでその人の能力を使うことができる」
「はい、それで孟子さんも騙されていました」
「はぁ…… 彼の気持ちも分かるんだけどもう少しなんとかならなかったものなのかね。 まあいいや、でその能力を使うときなんだけど一時的にスキが生じるんだ」
「スキ……ですか?」
「ああ隙さ、記憶をほじ繰り返す作業は傍から見ると人格を入れ替えるようなものだからね。 だから私は奴の体の主導権を少しの間握ることが出来た」
「まさか……」
「そう、エグゼクティブを奴が殺った時、その時にも東方のとある剣豪の記憶を読み取った。 そして隙が生じたんだ。 だから私は奴の体を乗っ取り転移権能で君たちと四天王達をアペイロンから逃がした」
そうだったのか、彼こそが命の恩人。
「そして今、再び剣豪の記憶を読み取ろうとした時私が体の主導権を握りそして体を動けなくさせた」
「それを俺がとどめを刺したということですか」
「そういう事だ。 本当に感謝する、私はこの時をずっと待っていたのだ」
孔子とそして奴の体は崩れていく。それと同時にこの空間も。
「さらばだ八王子君、君は責任をもって転移魔術で送り届けよう」
孔子の声と共に視界が暗転した。目を覚ますと先程の公園にいた。
かくして世界は救われたのだ。
一方、壁外にて
「強敵……だったな」
「ああ」
孟子は近くの壁に倒れ死んでいた。全身は数100箇所もの損傷がある。
傍から見ると誰の死体かも分からないくらいの損傷だ。
しかし顔はどういうわけか笑って見える。
「やっと死ねた。 私は世界の破壊者にならなくて済んだのだ」と
「さあ俺達も帰らないとな」
そう言い出したのは山崎闇斎だった。
「おう、この世界は救われた。 後の復興この世界の住民の仕事だからな」
クラスメイトの男達は同意する。
「帰るのか? せめてカトモン達にお別れをしなくては」
キョクボーが引き留めようとするが、彼らは笑って断った。
この世界に名残惜しくて帰れなくなっちゃうからなと。
闇斎は思った。得難き経験が出来たと。
彼は後にこの経験をふまえ、垂加神道というものを樹立する。それは別の話。
王国は八王子秀の勝利に歓喜していた。
次々と送られる惜しみない賛辞、勲章。
しかし彼にもまた別れの時が来ていた。
「俺ももう帰らなくちゃあな」
「もっとゆっくりしてってもいいのにぃ」
そう言うのはモミジだ。
しかし、カエデはそれを咎める。
「無理を言うんじゃないのモミジ」
そしてカエデは八王子の方を向いて言った。
「あなたは最高にかっこ良かったわ。 まさにあなたは君子に勝るとも劣らない」
次期四天王はカトモン、カザン、シロ、キョクボーとなった。
特にカトモンは宰相として、女王のカエデを補佐し復興に当たっていくのだとか。
この世界はもう大丈夫だろう。そう思いながら帰った。
崩れていく空間の中2人の男は喋っていた。
「オレをオデをよくもコロシタナ。 カキュウジゲンのニンゲンが…… もうオマエたちをマモルものはない。 ヘイコウセカイグンのソトからのガイテキ、ヤツらはカンリシャのオレがなき、いまネラッテイル」
「平行世界郡の外からの外敵ですか。 大丈夫です、彼らならこれから先どんな困難があっても乗り越えて行けるでしょう」
やがて空間は完全に消滅した。
十年後、八王子秀は地方の医学部に進学しやがて医者になった。
彼は何度も女の子にプロポーズやら告白をされたが全て断ってきた。
彼は忘れられなかったのである。顔回を。
そして……
「やっと開業できたぜ」
彼は眼科医を開業した。顔回を忘れられなかった彼は眼科医になることで彼女と一緒にいようと思ったのだ。
そんなある日
看護師の一人が慌てて話しかけてくる。
「急患です、先生」
その言葉で気付く、自分も先生と呼ばれるのが似合うようになってきたなと。
ワタリービ、伯楽先生、緑川、様々な先生にやっと追いつけたのかもしれなと。
「眼科に急患だって?」
そう言いながらも患者に会いに行った。
「彼女は……」
それは顔回だった。
彼女は目を閉じ動いていない。大怪我をしているようだ。
「この娘はどこで見つけたのかね」
「裏の駐車場です」
目を覚ましてない理由は分かる、恐らく時間停止魔術だ。
ワタリービがやったように彼女は時間停止魔術を体にかけそして自らを世界と世界の隙間にさまよわせていたのだろう。
当然この世界に戻ってこれる可能性などほとんどないのに、俺に会いたい一心で。
「これより緊急手術を始める」
顔回は目を覚ました。
「先輩、どうしてここに。 会えてよかった」
「俺もだよ、顔回」
やっと再開出来たのだ、もう離してやるものか。
かくして二人は結婚していつまでも幸せに暮らしました。
めでたしめでたし
これで八王子秀と顔回の物語は終わり
そのうち続編とリメイクをします




