子曰く 学びて思わざれば則ち罔し
かつてある世界が『収穫』の対象になった時、そこの世界の神はこの世界の神と密約を結んだ。
神の亡命を許し、そしてその世界で人間として生を与える代わりに『収穫』の対象をお前の世界に変えろと。
そして私は応じたのだった。滅びゆく他の世界を見ていつまでも自分の世界があるとは思えなかったのだ。
そして権能を信頼できる人間に与え、移った世界では漢文の教師として過ごし始めた。
しかし、どうしても元の世界の事を忘れられず帰ってきてしまった。もっとも権能も全て失い人間になった自分にできることなどないのだが。
「え……」
「そう八王子君、私が伯楽だ」
伯楽先生…… この世界の住民だったのか。
そして俺の元いた世界、それが『収穫』の被害に合うはずの世界だった。
「先生、会いたかったです」
「済まないね、勝手に死んだりして。 だが元の世界に戻るにはあの体を捨てる必要があった。 君たちには悪い事をした」
彼は生きていたのだ。そしてやっと会えた。
「先生僕はどうしたらいいですか? もう駄目だ、全ての選択を考えても奴に傷一つ与えられない」
「ふう…… まずはこれを見たまえ」
頭にビジョンが入ってくる。これは先程孔子が使っていた魔術か。
壁を破壊し入ってくる影の龍と影の巨人。
壁沿いの街は蹂躙されていた。
「やっぱり……」
しかし突如地面に地響きが走る。
「え……!?」
あれは……シロだ。
シロは大量の魔獣を率いていた。その数は数えれない程だが、影の軍勢より多いのは分かる。
「そうか彼女はシロというのか」
「はい、でもシロがどうして魔獣達を?」
センダガ山の中腹まで登っていたシロは古びた家を発見した。
何だろうこんな所に住んでいた人間がいるのか? そう思い中に入ってる見ると懐かしい感じがする。
そして部屋に飾られていた写真を見て納得した。これは自分の生家だと。
自分は何の獣人かも分からず生きていた訳だが今まで違和感があった。そもそも自分のパワーは力持ちとされる獣人族でも出せぬ域に達していた。
「そうか私は魔獣と人間のハーフだったんですね」
正当な進化の系譜を辿ってない世界の法則を上回る力を持った生き物、魔獣。
彼女はそれと人間のハーフだったのだ。どうしてこの二つが結ばれたのか分からないが。
「ウォーーーーーーン」
シロは雄叫びをあげる。すると近くの魔獣が集まってくる。
「!?」
どうやら自分は魔獣を従える力があるみたいだ。そして国中の魔獣を回収し戦線へ向かったのだ。
「遅かったみたいですが、でもそれでも彼らなら生き残っていると信じています」
シロは決意を込める。
「行きなさい魔獣達、奴らを食いちぎれ」
魔獣達は死の恐怖を持たない、あるのは食欲と破壊欲だ。
当然影の軍勢に有効打を与えられるものはいないが、それでも洪水のように押し寄せる魔獣達は壁となった。
「これで2時間は持たせます。 後はお願いします、八王子さん」
ビジョンが途切れる。
「シロ……」
みんなの思いを背負ってここまで来た。負けられぬ戦いはここにある。
「先生、あのイカれた野郎に傷を付ける方法はあるんでしょうか」
「この世界のものにはない、勿論君の世界のものでも。 だが一つだけある、奴がかつてこの世界に端末を送り込んだ時に残した遺産、上位次元への回収ポットの死体で作ったもの」
「その名は」
「麒麟剣、君が折った刀そのものだ」
「孔子はすでにこの世界に来た時点でその剣を処分した気でいるはずだが、その剣は2つあった。 君が折ったのだからな、だからやつの不意をつける」
大聖堂に現れた時、その時には既に刀は処分していたのだろうか? だがなるほど、光明が見えてきた。
剣を回収し、その刀で奴を刺す。それが唯一の勝機だ。




