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異世界孔子伝 〜End Of The World?〜  作者: さいたまのそよかぜ
第2篇 修己治人 End Of The Worldの章
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子曰く 四十にして惑わず

 説明会によると今後の作戦はこうなるらしかった。


・生き残った国民を全て首都内へ避難、首都を壁で囲い防衛す


・外から来た敵は壁上からの弩や投石機で攻撃する


・一部、影の巨人と渡り合う覚悟のある勇気あるものは打って出て戦い、敵の壁への到達を遅れさせ、少しでも多く岩や弓を当てる時間を稼ぐ




「儂らは壁の外に出て戦う力あるものを求めている、他の奴らはみな壁上からの攻撃部隊へ配属だ」


 無茶苦茶だと思った。影の巨人は四天王数人がかりで行かないと倒せない強敵なのだ。

 先程の村みたいに5、6体も同時に襲ってきたらこの場にいる全ての戦力でも賄いきれない。



「アペイロンが首都内に発生したらどうするんだよ」


 目の前にいた男が質問する。


「いい質問ですね。 その問題なんですが我々解析班が対アペイロン装置を作ることで回避しました」


 あれは先程の説明にあったマッドサイエンティストのテトラだ。いや魔術師だからマッドウィザードというべきか。


「対アペイロン装置だと!?」


「正確にはアペイロン誘発装置ですがね。 アペイロンは魔力密度の高い場所から順々に発生していくことが我々解析班の力で明らかになりました。 」


 テトラはドヤ顔で語る。


「そこで壁外に魔力密度の高いホットスポットを作りそこに誘発することでアペイロンを防ぎます」




「その作戦が上手くハマればどれだけ多くの影の巨人を殺れるんですか。 それにアペイロンには巨人だけではなく影の竜もいるといいますし」


 また別の男が質問する。


「20だ、我々の計算では20体の敵を1日に倒し切れる」


 カトモンが答える。


 何だって…… アレを1日に20体も?

 あの影に触れたものは消失する、それが何であれ。

壁もまた例外ではないはずだ。



「全ては闇斎の存在と敵が物理を完全に無効化しないというのが分かったからだからな」



 なるほど、これでようやく希望が見えてきた。

 問題はあの竜に乗っていた男だ。あの正体が気になる。



「すみません、俺からもいいっすか。 恐らくこのアペイロンには黒幕というか裏で操っている人がいると思うんですけど」


 ワタリービが答える。


「うーんそれが良くわかってないんだよね。 そもそもアペイロンって何なのか? 収穫とは何なのか? そういう現象があるのはわかるんだけど誰もメカニズムが分かってないんだ」


「つまり……?」


「あの男をとっ捕まえて吐かせないといけない訳だ」



 そもそもあの男はここまで来るのか?

 思わず疑問が口から出てしまう。




「来るよ」



「だって今ここに来てるわけじゃん」



「!?」


 その場にいた全員が音のした方を向く。そこには……


「やあ生き残ったこの世界の皆さん、どうもこんにちは。 そしてさようなら。 今日は皆さんにお別れの挨拶を言いに来ました」


 誰だ。こいつは……!?どこかで見たことがある、声を聞いたことがある、そんな気がする。



「なんだぁてめぇら、名を名乗れ」


 レンカの命令に無視して言う。


「異世界人の2人は……いや3人か。 君たちはこんな世界置いて今すぐ元の世界に逃げ帰った方がいいよ。 『収穫』されるのはこの世界だけだから」


「『収穫』って何だよ」


 俺は質問する。

 この男が黒幕なのか?全てを知っているのか?



「めんどくさいから孟子説明頼んだ」


 孟子と呼ばれた男が何も無いところから姿を現わす。これは転移魔術……?


「転移魔術ではないよ、ここの座標に錨を下ろしたのさ」


 どういう……ことだ?


「では私から説明します」


 孟子と呼ばれた男はそう言うと語り始めた。


「まず先生はあなた方が住む世界とはもう一つ上の次元の世界、ΔUNT3896-2という世界の住民であります」


「上位次元人だって……!?」


 聞いている奴らはみなざわめく。俺としては異世界があるくらいなんだから上位次元の世界があってもそこまで驚くべきではないと思うのだが。



「はい、そしてこの世界とそれを含む全ての異世界を管理するのが先生であり、名は孔子と言います 」


「孔子が異世界人ってふざけてんのか、っていうかそもそも孔子がこんな残酷なことするはずがない」


 思わず憤ってしまった。


「私も戸惑いました、この世界に召喚され初めて先生を見て。 ですが長年、先生と共にいた弟子として断言します。 彼は先生本人です」


 なっ……

 力が抜けていくのを感じた。あの孔子が、俺が尊敬していた人がこんなことをするなんて。



「もう話はいいかな」


 うなだれる自分を見て、孔子がそう言って話を打ち切ろうとしたその時。



ヒューーーーーーン


 風を切るような音がする。あらはレイジングのけん玉だ。

 けん玉の糸は華麗に空を舞い、孔子の首に巻き付く。



「ん? クソッなんだこれは」


「そのけん玉は鋼鉄製のワイヤーで出来てる、無理に外そうとしたら首が落ちるぜ。 エグゼクティブさんのようにな」


「ぐぬぬ、孟子!!」


 孔子は孟子に糸を外すのを手伝えと命令しようとしたがしかし。


「俺の呪詛を使えば精神を崩壊させてしまうなんて簡単なことだ」


 キョクボーだ、キョクボーが咄嗟に精神崩壊の呪詛を孟子に使ったのだ。


 孟子は何かをブツブツ言いながら倒れ、それをズキュエイマーが取り押さえている。



「チェックメイトだよ、上位次元人さん」


 レンカが二丁の拳銃で孔子と孟子を狙っている。こちらの勝ちか?



「フハハハハハハハハ」


 孔子が突如笑い出す。


「なんだこいつは、まさか切り札を隠し持っていたのか? 油断するなよ」


 誰かが叫ぶ。


 不気味な笑い方だった、それはこちらへの哀れみを含んでいるようだった。こんな状況で?




「下がってて、ボクが殺る」


 暗殺職人ことカザンちゃんだ、僕っ子だったのか!?



「いっけーーーーーーーーー」


 カザンちゃんは孔子と名乗るその男の胸に手を当てると一気に心臓を引きずり出した。


「すげぇ……」


 やってることはグロい。だけどその動きは全て洗練されていてまるで芸術のように思える。




「あっこれだめだ、ボクも心臓を持たない人の暗殺はお手上げだよ」


 カザンちゃんが右手のひらを見せてくる。手のひらはドロのような真っ黒な液体で覆われている。

 あれは……アペイロンの影?


 すると、次の瞬間カザンちゃんの右手を影が飲み込み始めた。


「切り落として」


 カザンちゃんは叫ぶ、至極冷静に。



「後悔すんなよ、おりゃあぁぁぁぁ」


 近くにいた男が刀を抜き、カザンちゃんの右手を切り落とした。

 こうしなくては全身が影に飲み込まれてしまうのだ。



「僕が治療をする、後は君たちに任せた」


 そう言うとワタリービとカザンちゃんは消える。転移魔術だ。



「心臓がアペイロンの影で出来ているだと、いやひょっとしたら……」


「その通り、私の体は全てアペイロンの影で出来ている」


 なん……だと……

 では魔術攻撃は効かないし物理攻撃にも大幅に耐性を持つのか。



「さて帰るとしよう。 孟子助けはいるかい?」


「大丈夫です」



 そう言い孟子は立ち上がる。あんだけ精神が崩壊していたのにもう回復したのか。


「帰るなんて卑怯じゃあないのか」


 キョクボーが煽る、これは精神崩壊の呪詛をかけようとしているのか?



「下らない小細工は辞めておくことだね、僕は四十にして惑わず、つまりありとあらゆる精神干渉系魔法は40歳で克服した」


「なっ……」


 キョクボーは驚愕している。精神干渉攻撃すら効かないというのか?



「さて、君たちには予告をしよう」


「予告だと……」


「ああ明日の夕方の5時をもって私と孟子はこの首都へ向かって総攻撃を仕掛ける」


 何だって、わざわざ攻める時間を予告してくれるのか?


「私と孟子合わせて百万の軍勢を持ってこれを攻め落とそうとする、せいぜい足掻こうとしたまえ。 それでは」


 そう言うと孔子と孟子は姿を消す。転移魔術か?



「先輩、これは転移魔術ではありません。 権能、それも飛びっきり強力なものです」


 周りを見る。

 周りの人間は王や四天王までもが百万という数字に気圧されていた。



「この世界はもう終わりなのかもしれないな」


 思わずそう漏らしてしまった。

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