子曰く それ恕なり *12/16改題
「なっ……」
アペイロンの被害はそこまで進んでいるのか!? だがどうして今?
「エグゼクティブが亡くなったからか……」
おそらく世界を支えていたエグゼクティブが亡くなったその瞬間にこの大惨事は始まったのだろう。
エグゼクティブが亡くなったと聞き兵士が狼狽える
「それはどういう……」
「エグゼクティブは殺されました、首を切り落とされて。 そしてその力は顔回に……」
周りを見る。兵士やメイド達は皆困惑している。長い間この世界を守ってきたエグゼクティブの代わりにこんな小さな女の子に任せられるのか、と。
顔回の顔が曇る。今にも泣き出しそうだ。
確かに他の人から見たらただの少女に見えるだろう。だけど俺は知っている、彼女が何回も命を助けてくれた本当に頼りのある子だと。
「顔回は頼りになる奴です。 皆さん信用できないかも知れません、ですが俺たちを信じてください。 この滅びを回避する方法を探してみせます」
そう啖呵を切る。顔回を見ると顔には明るさを取り戻していた。
「先輩……」
「顔回、さっそく山崎闇斎とやらに会いに行くぞ。 それが滅びを防ぐ唯一の方法だ」
とそこまで言った時、カトモンが目の前に現れる。
「山崎闇斎はかつて俺が調査していた。 おそらく今頃はペンクエンの村辺りにいるだろう、頼むぞ世界を救ってくれ」
「この前行った所だ!!道は大体分かります」
「では運転は私がしましょう」
声がして振り返るとそこにはラパパッチがいた。
「ラパパッチさん!!」
「私にお任せ下さい、必ず運んでみせます。 命に変えても」
「カエデさんのことはいいんですか?」
「お嬢様は今必死になって民衆の混乱を収めなさっている、1人の王女として。 もはや私の手助けは不要です」
「なるほどそれならお願いします」
願ってもみない幸運だ。これで足は出来た。後は向かうだけだ。
俺たちは王に礼を告げ、車に乗りこんだ。向かうはペンクエン村、道は分かっている。
王を初めとした他の人間は戦力を首都に結集させ、また商店に働きかけ難民を受け入れる準備をしたり、アペイロンの影について解析したりと大忙しみたいだ。
一方俺たちは、ラパパッチさんの運転は丁寧そのもので、特に問題なくペンクエン村に着くことができた。着くことが出来たのだが
「どういうことだよこれ……」
そこに村はなかった。全くの更地になっていた。
「大気中のマナ濃度が極めて低いです、ここでアペイロンが起きたことは間違えありません」
「生存者は絶望的ですか……」
山崎闇斎もアペイロンに巻き込まれてしまったのか…… なら無駄足だ。
とその時、グシャっという音が聞こえる。
振り返ると車を影でできた巨人が取り込もうとしていた。
「そんな……」
辺りを見渡すと全く暗くなっていない。これはアペイロンではない!? ならこの巨人は一体……
「逃げましょう」
ラパパッチさんが呟く。俺達は全速力で走り出す。
「顔回この前シロから逃げる時にやった加速魔術を」
「大気中のマナがないから使えません」
なんだと…… これはピンチだ。
「このままじゃ追いつかれる」
とその時、
ブルンブルンブルンブルンブルンブルン
大地に無数のエンジン音が鳴り響く。あれは……
「逍遙遊騎士団ここに見参」
500を越えるバイクに乗った男達が目の前に現れる。そして、そのバイクの多くには避難してきたであろう住民が載せられていた。ニケツだ。
「早く乗れ」
そして、そう急かして来た。ニケツは犯罪だが、ここは助けてもらおう。
「お前はあの時レイジングと一緒にいたヤツじゃないか、少し早めの再戦に来たのか?」
そう騎士団長に話しかけられる。彼は誰も乗せてない。
「違いますよ!! 助けてくれてありがとうございます。 俺の名は八王子秀、ある人を探しに来ました。 山崎闇斎という男を知りませんか」
少し考えて騎士団長は言う。
「避難民の中にはいねぇな」
やっぱりか…… 山崎闇斎はもう死んでいるのか。
「俺達はよぉここら一帯であの馬鹿でかい巨人が暴れ始めてから住民達を回収し始めたんだが、その時点で既に死者は出ていた」
「その中にいたらお手上げだ。 あっあとこれはな、将来の逍遙遊騎士団に入るかもしれない未来の仲間を保護するためにやってるんだぜ、慈善家の甘ちゃんと一緒にすんなよ」
何は命はともあれ助かった。それだけは良しとしよう。
「なんだぁあれは」
俺が乗せてもらっているバイクの運転手が叫ぶ。
目の前を見ると影の巨人が複数体立っていた。それだけではない。
「あれは影の龍……!?」
巨人の隣には影で出来た龍が立っている。それは俺たちを見ると真っ黒なブレスを吐き出した。




