前文 End of the world
暗がりの中、1人の男が影から姿を現した。まるでその影の中から新しく産まれたかのように。
一方、その男に駆け寄るもう1人の男がいた。
「孟子よ、よく我が呼び出しに応えてくれたな」
「先生の呼び出し、無視する理由はずがありましょうか」
「うむ、そうだな」
孟子は辺りを見回す。先生に呼び出され来てみたものの、ここは何処なのだろうか?
「私が君を呼び出したのは異世界だ、元いた世界とは違うね」
「異世界…… とは何でしょうか?」
孟子の質問に答えず、男は続ける。
「なぁ孟子よ、私はこれから一つ君に協力して欲しいことがあるのだ」
「そ、それは何でしょうか」
「私と一緒にこの世界を滅ぼしてほしい」
男の冷酷な話ぶりに背筋が凍る。
「それは一体……」
男は答えて曰く
「この世界を滅ぼすとはそのまんまだよ、この世界の生物は皆殺しにして文明は完膚なきまでに破壊する。 ただそれだけのことだ」
孟子は何も言い返せなかった。疑問はあった、明らかにこの男は生前自分が慕っていた師匠とは違っていた。
けれどもその冷酷なオーラは孟子の口を開かせないのには十分だった。
「はっ我が身で良いのなら使って下さい」
孟子は頭を下げる、本当は抵抗したかったのだが本能その全てが男に歯向かうことを拒んでいた。
「良かったよ、アレを見てくれ」
男は草むらの奥の方を指さす、そこには大量の死体が転がっていた。
「あっあっあっ……」
皆見知った顔だった。
「彼らは四聖十二哲、私の愛しい弟子だったものだ。 私が皆を召喚して頼んだのだがね、君以外の全てが私の提案を断った」
「それどころか私は本物の師匠ではないと言い反抗してね、だから」
「だから?」
「皆殺しにした」
男が浮かべている笑いは明らかに生前に浮かべていたそれとは違っていた。
孟子は思った、これは絶対に師匠ではないと。
師匠ならば自分の最愛の弟子を殺し、そしてそれで笑ったりはしない。
「さて、君にはまずこのアペイロンの雫を取り込んでもらう」
そう言うと男の手のひらから大量の影のようなものが湧き出る。
それが孟子の方へ向かう。
影は口から孟子の体へ入る。
「これで君も同じだ、アペイロンを操れるようになった」
「はっ……」
「まずは君にはα型を3体、β型を6体渡す、手始めにだ。 異世界からの訪問者、八王子秀並びに山崎闇斎を殺害しろ」
影が体に入り、力がみなぎってきた。
どんなものでも倒せる、そんな気がする。
「はい、師匠。 あなたの期待に応えられるように頑張ります」
孟子は深夜の帳の中を飛び出していく。
ほくそ笑む孔子を残して……




