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異世界孔子伝 〜End Of The World?〜  作者: さいたまのそよかぜ
第1篇 克己復礼の章 Beginning Living In Another World
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子、怪力乱神を語らず

 死刑宣告をされた、やばい。周りを見ると四天王と呼ばれる男、そして一部の執事達が武器を構えている。

 いつでもこちらを殺せるようにか。ラパパッチとシロはどうするか戸惑ってるようだ。


 顔回に目をやる。顔回もいつでも魔術を撃てるように身構えている。


 顔回は強い、少なくとも幼い時から王直属魔術師を見てきたであろうカエデが青ざめるクラスだ。

 

 だけどこれ程の数はやり合えないだろう。もはやここは俺1人の首で場を収めるしかない。



「すみませんでした」


 土下座をする。ぶっちゃけもう俺の命は諦めた、戦闘を避けなくてはならない顔回の命まで危険が及ぶ。


「ふっ謝って済むとは思うなよ、ズキュエイマーこやつを牢に捕らえよ」


 屈強な男が自分の肩をつかむ。ズキュエイマーとかいう奴、四天王と呼ばれていたし実力は高いのだろう。


「俺のハンマーを国宝の破壊に使われるとはな…… 貴様許せないぜ」


 ああさっきのハンマーの持ち主か…… 話に夢中で顔を見て無かった。そりゃ怒るよな。掴む力が強くて、肩が千切れそうになる。


 とその時、モミジが立ち上がって叫ぶ。


「お兄ちゃんは悪くないの、私を庇ってくれたの」



 え?どういうことなのか、ズキュエイマーの手が少し緩む。モミジは続ける。


「さっきお姉ちゃんと2人で先に武器庫に来た時、奥にあるこの剣を触って遊んでて」


「この剣には触ってはいけないと普段から言っているはずだが」


「だから逆に気になったの、それで遊んでたらこの剣が乗ってた棚を壊しちゃって床に落ちちゃった」


「うむということは」


「この剣は初めから折れてたの、お兄ちゃんは悪くないの。 ごめんなさい」


 モミジはこちらへ頭を下げてくる。


「モミジ、お前は一ヶ月オヤツ抜きだ、退出しなさい。 そして八王子といったか、君は疑って済まなかった」



 助かったのか!? 王は付け加える。


「よって詫びとして先程のギャグ、あれは本来なら不敬罪で拘留となるものなのだが、その罪をチャラとしよう」


「たったたた、助かった……」



 緊張が解け床に座りこんでしまう。おそらく生涯において最大のピンチだった。


「先輩良かった……」



 顔回がホッとした顔をしている。周りを見渡すとシロやカエデ、ラパパッチもだ。


「別にあなたが助かって嬉しかったわけじゃなくて、あなたが死ぬと君子も死んでしまう。 それが防げたのが嬉しいのよ」


 とカエデは言う。



 それにしても、だ。俺には死刑宣告をしておいて身内にはオヤツ抜きか。ちと甘すぎないか。


「よお、おかけで俺のハンマーに国宝壊しの異名を付けられるぜ、あんがとな」


 ズキュエイマーは感謝しているみたいだ。さっきはあんなに怒ってたのに……




 その後も宴は続けられた。そしてお開きとなった。自分と顔回は地図を渡された。そして今割り当てられた部屋へ歩いている途中だ。


「地図を読んでると、ほんとさ完璧帰趙を思い出すよね」


「何ですかそれ」


 ヤバイ、ネタが通じてない。ここは誤魔化そう。



「そんなことよりいやー今日は大変だった」


「本当ですね、でもちょっと楽しかった」


 まあ確かに楽しかったことは否定しない。特に宴会でラパパッチがやってくれた腹踊り、アレは破壊力がやばかった。


「先輩」


「何だ? 顔回」


「私がエグゼクティブ様に作られこの世界に送られて、この数日色々なものを見てきました」


「あーうん、俺もだよ。はっきり言って自分が異世界にいるのをまだ夢じゃないかと思っている」


 そこまで言うと顔回は俺の手を掴んできた。


「え!? 顔回さん、何を」


「夢なんかじゃありませんよ!!」


 そう言うと顔回は手を離す。


「ラパパッチさんの話で少し気になってしまって…… 先輩、一つ聞きたいことがあるんですよ」


「なっ、何かな」


「もし先輩が全ての旅を終えて元の世界に帰るとしたら、その時付いていっていいでしょうか」


 ああそういうことか。顔回は必死そうな顔をしている。ここは答えて安心させてあげなくては。


「うん、勿論さ。 大歓迎なんだけど、顔回もこの世界で生まれたばかりなんだろ? だったら見つかるかもしれない、僕よりも大切なものが」


「そんなこと……」


「だからさ、俺が元の世界に帰る時その時もう1度聞くよ 」


「はい」


 顔回は返事した。嬉しそうだ。そうして俺は自分の部屋に戻って寝ることにした。








「ここはどこだ……」


 周りを見渡す、空には星が輝いている。


「やあ気付いたかい」


 後ろから声が聞こえる。振り返るとそこには……


「エグゼクティブ……」



 そこには全身黒づくめの服を着た意識高い系の男が立っていた。


「やあ、少しお話をしようか」



 夜の散歩道を歩く。空を見上げると星が降るような美しさだ。


「あっ……」


「気付いたかい?」


 そうここは夢の中らしい、夏の大三角と冬の大三角が同じ空にあったらそりゃ気付くわ。

 


 まてよ、夢ということは…… 念じてみる。すると周りの景色が荒野へ変わる。やはり夢である以上自分の思った通りになるのか。


「君はこういうのが好きなんだね」


 少なくとも、いかにもリア充が寄ってきそうな夜の散歩道より荒野の方が落ち着く。


「ふーん、まあいいや。 アジェンダはそこじゃないんだ」


「じゃあ神様、そのアジェンダとやらを頼むよ、早めにね」



「ああ言っておくことがあってね、僕は『神様』ではないんだ、この世界の『エグゼクティブ・プロデューサー』さ。 小さな違いに見えるけど大きな違い、ここははっきりしておかなくてはならない」


 だからエグゼクティブ様と呼ばれるのか。ぶっちゃけどうでもいい、俺の頭の中ではこいつは三重県観光大使だ。



「さてASAPで本題へ入ろう」


 ASAP、確か出来るだけ早くって意味だよな。それ、アグリーだ。


「ナビコは僕が作ったと言っただろう」


「ナビコ…… ああ顔回のことね、そういう風に聞いたよ」


「そう顔回はナビゲーションコンポーネントとして、僕がアウトソーシングした君たち異世界人をサポートする役として作った」


 エグゼクティブは続ける。


「初めは感情がなかった、一応最低限のコミュニケーション能力としていくつかの表情とかをインストールしといたんだけどね」



 なるほど、では初め異世界に来た時僕を助けた時のあの笑顔はインストールされた偽物だったのか。


「でもあの町を見てはしゃいだりしてたのは」


 あの時の笑顔を偽物とはどうしても思えない。


「ああ、あれは本物だ、だって君がナビコから顔回にしたのだから」



 ああ、そういうことか。エグゼクティブの話によるとこうだ。

 初め異世界人を助けるための純粋な機械として生み出された顔回だったが、名をつけ、そしてマスターでなく先輩と呼ばせたことにより新たな顔回としての自我が生まれたのだ。


「なるほど、それは良かった」


 心からの言葉だった。


「いや良くないんだよ、おかけでナビコにとっての優先事項が世界から君へとなったんだ」


「え!?」


 ここでエグゼクティブが一度も顔回と呼んでいないことに気付いた。


「人型コンポーネントとは、危険な思想を持ってるが有益だと判断された異世界人に対してリミッターになるものなんだよ。 」


「もしその異世界人が虐殺や征服を始めようものなら、世界から命令が下りそれを殺す、例えどれだけの間相棒として共に生きようともね」


「それが今までのナビコの仕事だった」


 エグゼクティブはまくし立てる。


「ちょっと待てよ、今までって」


「ああそうだ、ナビコは今まで何人もの異世界人のコンポーネントとなり、そしてそれをことごとく葬ってきた、最もその度に記憶は消したから残ってはいないけどね」


「なっ……」



 顔回の言っていたことを思い出す。トラウマがどうのとか異世界人は他にいないだとか、そういうセリフは全て彼女の深層心理が覚えていたのだろう。


「ともかくだ、君が名付け親になった時点でナビコはストッパーとしての世界のベネフィットのために動く隷奴としての任から解き放たれた。 まことに不本意ながらね」


「しかもだ、元の世界に一緒に帰りたいだのふざけているのか」


 エグゼクティブは怒ったようにまくし立てる。



「だから、今すぐ顔回と呼ぶのは止めて名を捨てさせろ。 さもないと」


「さもないと?」


「君を始末する」


 ガチなトーンだった。本気で俺のことを殺す気らしい。だが、決して屈するわけにはいかない。まてよ、ここは夢の中……


「馬鹿だな」


 ボソッと呟いた。


「はぁっっっ、今更自分の愚かさに気付いたっていうのか?」


「ちげーよ、俺はお前を馬鹿だと思ったんだよ」


 地面から無数の杭や鎖を射出する。


「お前は中二病患者の心の中に無策で入ってきた、それが馬鹿だっつってんだよ」


 射出されたもの、そのことごとくがエグゼクティブに刺さる。やはりここは俺の夢の中、効くのか。


「さあこいよ、エグゼクティブ・プロデューサー。 お前を殺す妄想はとっくのとうに済んでいる」


「クソカスがぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 2人の男が今夢の世界でぶつかりあった。

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