俺のひめ
ある日の塾の帰りのこと。
俺はいつものように彼女と帰ろうとしていた。
「ああ、ちょっとまって。」
学校帰りに塾に来ているため、茶色の可愛らしいブレザー、赤色が目立つチェックのスカ―ト、そして、こげ茶色のローファーのままだ。まだ、学校が始まって日が浅いせいか、彼女は履きなれていないローファーに悪戦苦闘している。
「早くしないと、おいていくぞ。」
おいていくわけないのにな…と思いつつ、彼女を焦らせる。「わあわあ」とかいいながら焦って履けていない彼女もまた可愛い。
「よしっ」
ようやく履けた彼女は俺のもとへとかけてくる。赤色のスカートがひらひらと揺れる。
「じゃあ帰るぞ。」
「うんっ。」
俺たちは歩きはじめた。
…さて…こっからが俺の楽しみだ。塾内だと何もできないし、してこないもんな。
俺は勉強(たったの30分)の疲れを癒すことにした。
試しにほっぺたをつつく。
…ぷにぷに。
「わあ!どしたの?」
反応良好。今日も可愛いやつだ。そして餅のように柔らかい。さて、お次はお腹を触ることにしよう。服の中に下から突っ込んで…。
…すっ。
「!」
…ぷにっ。
「きゃあっ、へんたい!」
今日もいい感じに柔らかい。やっぱり柔らかいのは女の子の特権だな。俺は構わずぷにぷにし続ける。
「こ、こらあー!やめなさーい!」
なんだその可愛い怒り方は。不思議なことに全然怒っているように聞こえない。本当に…
「可愛いやつだな。」
彼女の顔が見る見るうちに赤くなっていく。まるで桜餅のようだ。嗚呼、可愛い。
「く、くぉらあー!」
さーて、ここのへんでまた仕掛けるか。さっきまでぷにぷにしていた手を天国から引き離す。嫌だけど。そして、ポケットに突っ込む。
「?」
さて、どう出るかな…
「ぷにぷにはダメだけど、ポケットに突っこまないでよ。」
よしよし…
「アアーテガーヌケナイー」
わざと手に何かを握って引っかからせる。
「ふふっ、私が手伝ったげる。」
彼女が俺の腕をつかんで上に引っ張り上げる。「ううー」とかいいながらがんばる。でも俺が逆方向に力をかけるから抜けない。
「もー」
上目づかいで俺に訴えかけてくる。…仕方ないなあ。
スポッ。
「よしっ…」
だが俺の手には生徒手帳が握られていた。
「…没収!」
ああー俺の生徒手帳ー。犠牲になってくれ。
無理やり俺の手から生徒手帳をぶんどられるとすぐさまポケットの中に退散する。そう、2回戦目だ。
「ああっ!もうっ」
また引っ張り上げる。俺はすぐさま何かを握り引っ張られる。
スポッ。
「よ…」
だが俺の手にはスマホが握られていた。
「没収!没収!」
スマホ―。生徒手帳と仲良くしててくれー。
またぶんどられ、退散し、そして怒涛の3回戦目だ。
「…」
心なしかちょっと不機嫌か?じゃあ、仕方ないな。
彼女の機嫌を100%直してくれるものを手に握る。
「むう。」
それでも彼女は引っ張り上げてくれる。俺はなんの力もかけずに引っ張られる。
スポッ。
「…ぁ。」
彼女が小さく驚いたのを俺は見逃さなかった。そして少し笑顔になったのも。
それは彼女が誕生日プレゼントにくれたハンカチだった。
「…ふふっ」
それを没収せずにじっとみてニヤニヤしている。
…まったく、わかりやすいやつ。
「没収しないの?」
「する、するよ!」
…しょうがないな。
俺はハンカチを没収される前に反対側の手で持ってポケットに入れた。
そして彼女の手を握った。
「これがしたかったんでしょ。」
コクコクとうなずく。
「ハンカチ使ってくれててうれしかった。」
彼女はちょっと赤くなりながら下を向いて言う。
「こっち向いて言いなさい。」
反対の手でくいっと顔をこっちに向ける。顔がより一層赤くなる。
「ハ…ンカチ、使って、くれて…ありがとう。」
彼女からくれた心のこもった贈り物を使わないわけないじゃん、とか思いつつ、このご褒美恥じらいタイムを存分に味わう。
あと、彼女にもご褒美をあげなくちゃね。
「どういたしまして」
くいっとしてた手で頭をなでる。
「わああああっ!」
…まったく可愛いやつだな。
読んでくれてありがとうございます。
5/21 誤字訂正 技と→わざと
さて→…さて
な。俺は→な。<改行>俺は