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終/キハ四十系ボックスシート


 今日の出来事だ。

 場面は、田舎町を走るJR線のボックスシート車両である。今日は休日だった。うららかな陽気の所為か、花見やピクニック、行楽代わりに南側の商業区に向かう人たちで、ロングシート席が埋まってしまう程度に、その列車の中は盛況だった。

 私は今日、商業区へと向かうキハ四十系ボックスシート席にて相席となった、どこかで見たような少年と少女だった。

 ここから話すことは、雨女から始まりヤクザの抗争へと帰結した物語の終章に値するものである。


 がたんごとんと揺れる列車。雑多な静寂。うん、私好みである。自分以外は騒がしいこの静寂は、私の心に凪をもたらす。

 毎年のように、いや、毎年春になるとこの列車の乗車率は高めになる。張るという季節は人を動かすものらしく、今日のような陽気の休日になると、人はどこかに遊びに出かけたくなるものなのだろう。なんせ、ロングシートは大体埋まってしまっているし、大体のボックスシートには誰かが座っている。そんな中、二人の男女が他の客に紛れて乗車してきた。

 いや、男女というには幼すぎる。かといって、兄妹とうには彼らは仲睦まじく、また顔立ちもそれほど似ているものではなかった。まあ、兄妹とはいえ、男女でそれほど似た顔付きになることは稀だし、その違和感は私の気のせいなのかも知れない。

 彼らはちらちらと車内を見回し、自分らが座れそうな席がないことを確かめる。

 ――いや、一つあった。私の席だ。私の座っているボックスシートには、私以外の客がいない。私は、その少年少女に目を向けると、丁度彼らは私の座っているボックス席へと目を向けた。

 彼らは、てくてくと歩み寄ってきて、言った。

「あの、相席いいですか?」

 男の子の問いかけに、私は「いいよ」と答えた。

 男の子と女の子は笑いながら、窓の外を見ていた。丁度、桜の木を横切って、列車に散らされた花びらが窓を潜り抜け、女の子の鼻頭に乗った。男の子は、その花びらを微笑みながら取ってあげる。

 そうして私は、また雑多な静寂の中に埋没する。

 心の奥にはあの天を写す鏡の憧憬。青く澄んだ静寂。

 ふと視線を感じて、目をそちらへと向ける。女の子が、こちらを見つめていた。そして、にこりと笑う。

 次いで、男の子もこちらを見て、微笑む。

 ああ、そうか。彼らはそうだったのか。

「いいこと、あったかの?」

「さあ? でもまあ、いいことがありそうな気がするよ」

 そう言って私も微笑み返す。

 少年少女は桜の花びらを紙に挿んで、私に手渡す。

「あなたの未来に祝福を」

 小さな魔女は言った。

「ありがとう。また、どこかで」

 そう言い渡し、私は列車を降りる。

 きっとこの祝福は永遠に忘れないだろう。この旅路は、きっと良き人生になる。そう確信して、私はその一歩を踏み出した。


Silver Bullet -掌編奇譚集- ――了

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