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作戦会議 ~その1~

―チュンチュン、チュンチュン

 日曜日の朝


 「もう8時か、起きなきゃな。」


今日は、大事な用事がある。

昨日の作業で散らかった自分の部屋を出て、一階へ降りていく。


 「おはよう、亮二。朝ごはんそこに置いてあるから食べな」


 「ありがと、今日帰り遅いから晩ご飯はいいや」

 

 「はいはい」


とりあえず、朝食を済まし部屋へ戻り、

昨日のやり残した作業をすることにした。


カーテンを開けると、窓越しに鳥と目が合った。

ずっとこっちを見ているような気がする。


すると一瞬太陽からの光が目に入り、手でおおった。

もう一度窓の外を見ると鳥はいなくなっていた。


 「今は8時半か、10時までには作業終わらせないとな」


作業を始めて数十分後、電話がきた。

相手は同じ高校に通うクラスメイトの正人(まさと)だった。


 「りゅーじー、昨日買ったやつの組み立ては順調?

  こっちは終わって、予定通り午後の打ち合わせ待ちだけど」


 「お、いいね。

  俺はだいぶ完成に近づいてきたけど、あともう少し。

  今田とハルは?」


 「さっき今田から連絡あって、 筋トレしすぎた!痛い。。。

  だってさ。

  ハルちゃんは連絡なし。」


 「みんないつも通りってことか。了解!

  それじゃ、13時に正人んとこ行くね」


 「完成楽しみにしてるぞー、じゃ」


作業を再開して1時間後、完成した。

午後の打ち合わせの準備を済ませ、1階に降りる。

キッチンには母と妹が2人そろってパン作りをしていた。


 「お兄ちゃん、今日は抹茶のパンだから昼ご飯にでも食べてよ」


 「ありがと、今日部活ないのか?」


 「うん、先週大会終わって昨日は反省会、今日は休み〜

  お兄ちゃんは?」


 「高校生は複雑なんです〜。

  義務教育では味わえない辛い期間に入ったのです。」


 「亮二、試験頑張んないと。美紀みたいに頭良くないんだから。」


 「なんだ、試験休みなら中学もありますー。何を言ってんだか」


いろいろと言われながらソファに腰かける。

バスケリングのある庭をボーっと眺め、

もの思いにふけっているとキッチンからいい匂いが漂ってきた。


時計は11時を回っていた。

正人の家は自転車と電車を使って30分のところにある。

 

 「干からびた兄ちゃん、パンできたよ」


 「光合成や、酸素だしてるんだから感謝してほしいよ全く」


 「そーですか、それはどーもご苦労様です。

  神様、どうかこのお兄ちゃんに知恵をお与えください」


 「冗談です。ごめんなさい」


 「わかればよろしい」


美紀はいつもこうして兄をけなす。

絶対に友達には見せたくない姿だ。

 

 「いってきま〜す」


ーガチャン

自転車に乗り、いつもの田舎道を駆けていく。

これから始まる打ち合わせに胸をはせながら。


正人の家に近づくと今田がいることがわかった。

家の外にまで笑い声が聞こえてくる。

 

そのせいもあっていつも集まるのは一軒家の正人か自分の家である。

当の本人、今田はマンションに住んでいる。

ご近所さんたちは大丈夫なのか心配だが、

今田の明るい性格ゆえに良好な関係らしい。


―ピンポーン


 「お、りゅーじー、入ってー」


 「おじゃまします」


 「亮二!どーやどーや、完成したんかいなー?ハッハッハー」


 「今日終わらせたよ。ハルはまだみたいだね」


 「亮二!聞いてくれ!昨日筋トレしよったら何が起きたと思う??」


今田はわかりやすいことが多々ある。

1つ、素直すぎて顔に何でもでてしまう。

今回もすごい顔がニヤニヤしている。

 

2つ、豪快な笑い声。

さてはさっき外に聞こえてきた笑い声の話なのだと察した。


 「女子テニス部のズボンの中でものぞけたか?」


 「相変わらず好きやな〜そういうの。

  違うわ!

  なんとやっ!一匹の鳥が入ってきてずっとこっちみよるんよ!

  そしてな、気ぃとられて見よったら

  バー持っとるん忘れて胸に直撃や!ドカーンや!ワッハッハー」


そして話が面白いわけでもない。

けど今田と居て楽しいし笑顔が光っていてこっちまで明るくいられる。

今田は一昨年こっちに越してきたそうだ。


 「いまっちゃん、それ俺2回目―、一言一句いっしょ。考えてきたやろ?」


正人は、基本的にはのほほんとしていることが多く、あだ名をつけてみたり

人とは違う呼び方をするのがポリシーらしい。


けど、じつは切れ者で、いろいろ発案し実行する。

たまに鋭いことを言うのでびっくりさせられる。


 「んなこと気にしちゃいかんよ正人!

  でもあの鳥、バー落とした後、

  視線戻したらいなくなっとった!!」


 「そりゃ、いまっちゃんのドカーン!にびっくりして飛んでくよー」


―ピンポーン


 「きたきた」


正人が玄関にハルを迎えに行く。


 「いらっしゃい、ハルちゃん」


 「ごめんね、ちょっとおそくなっちゃった」


靴を脱ぎ、みんなのいる居間へ入ってきた。


 「ハル、5分遅刻ね。いつも通りで安心するけど」


 「春香!遅いやないかー、聞いてほしい話ある!あんなー、、


 「「もういい!!」」


 「いいじゃん、教えてよーいまっち」


予想通り今田は同じ話をこれまた一言一句間違えず話した。

逆に3回も同じ話を間違えず話したことに敬意を表したくなる。


でも、今田の話には1つ引っかかることがある。 鳥のことだ。

今朝、自分が見た鳥もじっとこっちを見て

目を離した一瞬で消えてしまった。


シチュエーションは違えど同じ現象が起こっている。


 「あははー、どかーん!って。いまっちの効果音面白ーい、

  もっかい言って!」


 「お、おう。ドカーン!ドカーン!」


今田はまさか笑ってもらえるとは思ってなかったみたいで、

たじろいでいる。

その顔に俺と正人は笑ってしまう。


 「あははー、さすがいまっちー、なら次は私の番だね」


彼女は春香と言って、隣の中学から一緒の高校に入ってきた。

頭がよく、試験のときはいつも勉強を教えてもらう。

1年の時から同じクラスで、あることをきっかけに

俺たち3人と仲良くなった。

それからはいつもこの4人でいることが多い。


 「ハルちゃんの話きくー」


 「あのね、昨日の夜の話なんだけどね、、、歩いて帰ってたらね、、」


 声が少しづつ小さくしてきた。

 手招きして小さい声で話そうとしていたので、みんなも近寄る。

 俺は、まさか。と思った。



 「ドカーーーン!!!」



 「「「うぎゃーーー!!」」」


 「あははははー、あー気持ちよかった。はい、終わり」


 「まじかよー、聞き入って損した―、ハルちゃんそりゃないよー」


その通りだ。

今田は自分の決めネタをパクられてショックを受けている。

顔に出過ぎていて面白い。


当の俺は、まさか鳥の話が出るんじゃないかと思っていただけに

拍子抜けしてしまった。



こうして4人が揃い、打ち合わせを始めるのだった。

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