第24話:中間世界(School J'ail)(1)
“世界の冬”を迎え、デウスとの戦いを終えてから、大陸の沿岸部を起点として、人類は復興を開始した。バンドリカやラルトンといった、黎明期からある“古王国”のほか、復興の過程でさまざまな国家が出現した。
ある国家は台頭し、またある国家は衰微していったが、そうした興亡の陰には、常に傭兵ギルドがあった。国家はその軍事力を傭兵ギルドに依存していたが、ギルドが大規模化するにつれ、軍事だけでなく、政治や経済までをギルドに依存するような国家もあらわれ始めた。
やがて、大規模化した傭兵ギルドは、三つの勢力へと収れんしていく。“カリハ大盾白衣傭兵団”、“廃業傭兵年金機構”そして“ハウエル・カエヤデル六芒星傭兵団”である。いつしか、傭兵ギルドと契約していない国家は、他国から侵略されて当然というのが、国際関係における不文律となっていった。
にもかかわらず、傭兵団と契約することなく存続している国家がある。バンドリカ王国がそのような国家に該当したが、それはバンドリカが“古王国”、すなわち権威ある国家に該当するためである。
“古王国”に当てはまらず、しかし、傭兵団と契約できないような国家。それらの国家は、大陸の中間部、俗に“中間世界”と呼ばれる地域にあった。
“中間世界”は、三大傭兵ギルドの勢力圏のいずれからも遠く、したがって、どの傭兵ギルドからも庇護を受けられなかった。また、大きくなりすぎた傭兵ギルドも、“中間世界”をそのままにしておいた方が都合が良かった。なぜなら、“中間世界”の国々をみずからの勢力範囲とするのは、他の二つの傭兵ギルドを刺激する行為にほかならなかったからだ。
かくして、“中間世界”にある国々は、どの傭兵ギルドからも支援を受けられず、脆弱で、国土は荒廃していた。
レウキリア侯国は、そんな中間世界にある小国のひとつだった。




