⒎ 超強化
どうも、古石 セツナです。
今回は、最近すごく暑くなりましたね、くらいしか言うことがありません。
それでは、どうぞ!
建物が揺れた。
地震ではない。そこにいた人々のどよめきでで揺れたのだ。早速水を差すようで申し訳ないが、揺れたと言うのも実際は少しだけであり、その意味合いの大分は比喩である。
ここは、アッティカで南部地域において最も話題の宿。――――の、一階・食堂エリア。
「おい、聞いたか? あのハイエルフが男連れ込んだんだってよ!?」
「はあ!? 冗談だろォ!? 百近い男が玉砕したってのに!!」
「あー昨日の四時くらいでしょ? それ、私見たよ。受付中ずっと可愛く頬染めながら自分の部屋に運んでたな~」
「あのハイエルフが赤面した!? しかも運んだ側かよ! 決定的じゃねぇかぁぁあああああ」
「ぐあ~! 俺も狙ってたのに~~!!」
「は? 領主さまの息子さんでも無理だったのにアンタがいけるわけないでしょうが」
三人は昼間っから酒を飲んでいた。
男二人はヤケ酒で、女は付き合い酒である。
彼らは冒険者である。ランクはAAであり、業界ではそれなりに名が通っている実力派のパーティ、〈トライデント〉だ。 もう理解していると思うが、彼ら三人が話題にしているのは四ヶ月前からこの都市で冒険者をやり始めたハイエルフの美女――――アリーフィアスのことである。
彼女と彼らは何度かともにクエストをこなしたことがあり、二回誘えば内一回は食事に付き合うような仲であった。アリーフィアスとそれなりに仲のいい彼らは、彼女が告白してくる数多の男を蹴散らしている最大の理由を知っていた。
曰く。自分より弱い男には、興味がない。
若干のツリ目に男口調。それでいて、身持ちまで堅いとは…………、初めはどこの宮殿の騎士かと思ったものだ。アリーフィアスはSSランクの優秀な冒険者だ。つまり、ワイバーンやバジリスクと一対一で戦えるほどの実力者であり、世界最高格の一人である。そのSSランクの傑物と正面から戦って勝利を収めることが出来る者など、まず、このアッティカにはいない。
…………自分たちが生きている間にアリーフィアスが意中の男を見つけることは不可能に近いだろうな。と、彼らは思ったものだ。
が、ところがどっこい。
現在、アリーフィアスがココの二階の一室に男を連れ込んでいるのである。
パーティリーダーがその目で見たし、受付の猫人族の女性にも確認したから間違いはない。
そいて、どうやらアリーフィアスとその男は昨日から下(一階)に降りてきていないようである。
若い男女が同じ部屋に泊まりそれが翌日昼になっても起きてこない。
――――寝過ごした理由と言えばもう…………アレ、以外ありえないだろう。
ふちらな妄想を繰り広げ、三人は悪い笑みを浮かべた。
◇ ◇ ◇
オレは…………、
異世界に来て、
早々にワイバーンに襲われかけて、
都市に逃げ込んだけど、
結局、ワイバーンと戦って……。そのあと、スゲー脱力感に襲われて……気絶したんだっけか。
しっかし、神のくせにワイバーンに勝てないとか……、マジでダ女神だわアイツ………………。
そんなふうに自分の記憶を漁っていたら、ふと、何者かが脳内に介入してくる感覚を覚えた。
『その〝ダ女神〟は定着ですか……。ニケが可哀想です』
その声はニケと同じで陽性の声だが、ニケのアニメ的なものと比較すると、随分と現実味のある声だった。
(……、…………。
主人を差し置いて我先に逃げ出す従者に可哀想もクソもあるか)
それにしても。と、その声は語る。
『〝アイギス〟――――失礼、今は〝イサナミ〟でしたね。アレにあのような使用法があるとは思ってもみませんでした。流石ですね、神ヤトミネ』
(そりゃどうも)
神じゃないけどな、半神半人だけどな。
『わたくしは盾としか使用したことがありませんから。攻撃手段にしようなんて、考えたこともありませんでした』
ニケのことといい、イサナミのことといい…………コイツの正体は確定したな。死んだと聞いたが、案外神はタフらしい。ぜひオレにも少し分けてほしいかぎりだ。
(知恵の女神が聞いて呆れるな)
『まあ、わたくしはまだ名乗っていませんよ』
(名乗ったも同然だろうが)
虚空に向かってニラみを利かせる。格下に見られてはいけない。相手の性格にもよるが、おおよその場合付け込まれるからだ。意思を込めた目で接しなければならないのだ。
やがて、声は答えた。
『そうですね。確かに、――――――わたくしは女神アテネなる者です』
女神との対話が始まった。
◇ ◇ ◇
チアキは目を覚ました。
もう、あの強烈な虚脱感はもう全くない。身体はいたって正常だ。
【ヤトミネ・チアキ】
種族…人族
LV.241
H P:345800/345800
M P:547600/547600
攻撃力:345700
防御力:345900
精神力:547400
瞬発力:345800
〔アビリティー〕・アテネの神格 ・イサナミ
・神眼 ・ニケの敬愛
・神格解放 ・治癒士の匠
・魔法士の匠 ・祈祷師の覇者
・覇王の神髄
(…………。
……………………。
…………………………o……oh…………)
すこぶる正常である。俗にいう元気ハツラツというやつである。
宝の持ち腐れではしょうがないので、千暁は半ば諦めて意識を集中させた。
【アテネの神格】
故創造神アテネの神格。
レベルアップ時のステータス上昇幅が極めて大幅になる。この効果はレベルが低いほど大きい。
例)LV. 1~100 上昇幅10倍
LV.101~200 上昇幅 9倍
LV.201~300 上昇幅 8 ・
・
・
LV.801~ 上昇幅 2倍
【イサナミ】
旧アイギス。〝イサナミ〟へと覚醒した。神々の中でも最高格のアビリティーであり、防御系のなかではもっとも強かな最高峰のアビリティー。
形状は本人のイメージに依存するので、剣にかえて武器とすることも可能。ただしその場合に保障されるのは強度のみであり、切れ味はなどは本人のイメージ力に影響される。
【神眼】
〝心眼〟の上位互換アビリティー。神の眼とも呼ばれ、一定以上の神格保持者にしか会得不可能。
対象のステータスの全てを閲覧可能であり、対象物の詳細を見ることが出来る。またアイテムの効果を見ることも出来る。この世界にこの眼で見透せないモノは無い。
非発動時であっても第六感に冴え、奇襲や探索においても猛威を発する。
【神格解放】
封印された神格を解放するアビリティー。
神へと覚醒することが出来る。また、その逆も可能。
始祖神ヤトミネの神格。
【治癒士の匠】
〝治癒士の才覚〟の上位互換アビリティー。
MP消費率が80%になり、レベルアップ時のMPと精神力の伸び幅は三倍になる。また、治癒魔法の威力が大幅に上昇する。
【魔法士の匠】
〝魔法士の才覚〟の上位互換アビリティー。
MPの自然回復量が三倍になり、レベルアップ時のMPと精神力の伸び幅は三倍になる。また、攻撃魔法の威力が大幅に上昇する。
【祈祷士の覇者】
〝祈祷士の匠〟の上位互換アビリティー。
MPの自然回復量が四倍になり、レベルアップ時のMPと精神力の伸び幅は四倍になる。また、祈祷魔法の威力が大幅に上昇する。
【覇王の神髄】
〝覇王の真髄〟の上位互換アビリティー。
威圧で対象を怯ませることが出来る。不要な戦闘を避けたい時などに使用するのが代表的。精神力の差によっては対象を絶命させることも可能。
非発動時であっても魔法を代表として全てにおいて抵抗力を発揮する。
レベルアップ時のHP・MPの自然回復速度が三倍になり、全てのステータス上昇幅が三倍になる。
(……………………、…………………………………………、)
千暁はもう、ワイバーンとの戦闘で自分がかなり強い方であると理解している。
少なくとも門兵四人分、もしくは魔法を使う前のワイバーンと互角以上に戦っていたあの紅い髪の女性よりは強いのだ。
そこにとんでもないレベルアップとアビリティーの数々(よく分からないのもあるが)という応酬が来れば絶句するのは仕方がないことだと言えよう。
千暁が240もレベルアップしたのにはちゃんと理由がある。それは、この世界の法則が関係している。
経験値というものは、弱者が強者を倒すと多く得られ、強者が弱者を倒してところでさしていられないものだからだ。
それが、この世界だ。
上昇幅については、特別な神なのでレベル1上昇につき各120アップ。そこに〝アテネの神格〟の恩恵で(LV.1だったので)×10倍。さらに同時取得した格アビリティーの効果が加算されている。MPで例をあげてみると、元々 + レベルアップ数 × 基本上昇値 × アビリティーの恩恵で、400 + 240 × 120 × 19となる。
と、部屋のドアが開いた。
「あ、起きたのね。――――って、どうしたの? 変な夢でも見た?」
入ってきた女に千暁は見覚えがあった。
(そうか……。気絶する前の女だ)
どんな女だ。
「昨日はどうもありがとう。ヤトミネ君がいなければアタシは死んでたわ」
「あ、ああ」
とは言われたものの、仕方がなかったとはいえあのワイバーンを連れてきたのは千暁たちである。
千暁は罪悪感に苛まれた。
「お腹すいたでしょ? 下が食堂なの。一緒に行かない? 積もる話もあるでしょ、食べながらはなしましょう」
「ああ、了解」
アリーフィアスは千暁と共に食堂に向かった。
AAランクパーティ、〈トライデント〉が今か今かと待ち構えているのも知らないで。
=1=
アテネさんが出てきましたね。しかし、展開のために切らせて頂きました! えへ。 いや、物投げないでぇ!
次回はニケが登場します。今回お休みでしたので。
感想と誤字かな? の指摘を頂けると嬉しいです。
温泉卵はおいしいと確信した今日この頃…………。