⒌ イメージ依存のアビリティー
どうも、古石 セツナです。
今回はワイバーンとの決着が付くはずです。
千暁は戦うのでしょうか。また、戦うのでであればどのようにして戦うのでしょうか。もしかしたら、門兵が実はすごく強いかもしれませんね……?
それでは、どうぞ!
==== side == アリーフィアス・R・バシウス ====
休みなく次から次へと繰り出される強靭な翼や長い尻尾を身体強化の魔法を駆使して避ける。
しかしそのMPは残り三分の二を切ったけど、マナポーションを煽ればなんとかなる。
けれど、武器にもひびが入り始めた。
これはどうしようもない。
ただのワイバーンだと思ってかかったのがいけなかった。最初から強固に魔力で剣を覆えばよかったのだ。
ワイバーンはドラゴンと違ってブレスを吐けない。だからヤツがブレスを吐いた時は肝が冷えた。
なんでこんな人の多く集まるところまでワイバーン――――いや、ウィザードワイバーンが降りてきたのかは全くの不明だが、このままアタシが対処するしかない。今日は騎士団は闇ギルドの一斉摘発で加勢は望めないからだ。
「ハアァァァアアアアッ!!」
『GOaaaAAAAAAAAッッ!!!!!』
なんて威圧。なんという覇気。
やはり普通のワイバーンとは全然違う。
その風格に当てられて、たいして強くない他の四人はすでにやられてしまった。
「せぇぇええええい!!」
ボキンっ!
しまった……っ!。
フランベルジェが根元から折れてしまった……ッ、やはりヒビがはいった状態で強化してところでたかが知れてたと言うことか。
今から魔法攻撃に切り替えてもせいぜい4、5発だろう。詠唱に集中でき、第魔法を放てるなら問題ないけれど、こも持ち手でウィザードワイバーンを倒そうなどと、歴史の中の英雄たちでなければ無理だ。陣構築での魔法は苦手だから、そんもそもナンセンス。
アタシは一撃必殺のバトルスタイルじゃない。剣が折れてしまえば、出来るのは魔法攻撃だけだ。
つまり、もう打つ手がない。
これでもアタシは七百年生きてきたハイエルフ。人間たちよりずっと強力な魔法攻撃を使える。でも、繰り返すようだけど、そんな余裕は与えてくれない……。
『ガァアア!!』
「あう゛ァ!」
集中力を乱したアタシは、ウィザードワイバーンの尾で都市の外壁に叩きつけられた。
尻尾の振り回しを食らってしまったのだ。
体に熱が走る…………、立ち上が、れない……!
なんて、なんて……無力なことか…………、いや……安価な剣で危険度Sランクの魔物を倒そうというのが間違っていたんだ。住民の避難は完了したんだから、ワイバーンじゃなくてウィザードワイバーンだと分かった瞬間に逃げに徹すればよかったじゃないか。
馬鹿だな……アタシは……女の身に生まれておいて 恋のひとつも経験できないまま死ぬなんて……………………。
『GUooooooooo!!』
ああ…………奴が大きくのけっぞて力を溜めてる……………………。
ブレスだ…………奴が使ってた魔法は風属性と炎属性、アタシは細切れになりながら燃えて、最終的には……アタシはハイエルフだから魔結晶を残して灰になるんだろう――――――――――――――――。
『GAaaaッッッ!!』
ウィザードワイバーンが吐いたのは風の唸る音と炎の燻ぶる音がしている球体だった。
なによ……………………圧縮系ブレスじゃないの…………普通のブレスの三倍は威力があるやつじゃない……………………。
ごめんなさい、おじいちゃん…………たったの七百十二歳で逝くアタシをどうか許してください……………………。
「――――――――イサナミッッッ! 結界陣ッ!!!」
…………………………………………ぇ?
◇ ◇ ◇
「どどどどうしましょぉぉぉ千暁さまぁ! なんかあのワイバーン、ウィザードワイバーンだったみたいですぅ!! あの人押されはじめましたよぉ!!!」
「わぁかってる!! 全ては一瞬でやられちまったあの四人が悪い! しかも一人、背中が土で汚れてた奴! あいつ門兵のくせに早々に逃走しやがったよな!!?」
「今そんなこと言っても始まらないです! わたしは今アレと戦えるほど回復してないので千暁がやる他ありません!」
「だー! 少し黙れぇえ!」
千暁は偏差値六十二、雑学たくさんの十六年間付き合ってきた脳みそをフル回転させた。
しかし、何にも出てこなかった。
学校の授業では戦闘なんてもちろん、ワイバーンの知識なんてやるはずもない。雑学といえば男子と女子の脳の違いとか嘘をつく人の目とかあの偉人は実はうんぬんとかしかない。
もともとの材料が全滅なら、異世界に召喚されてからの新材料に頼るしかない。
今から魔法を覚えるなどは論外として。
【ヤトミネ・チアキ】
LV.1 種族…半人半神
HP :200/200
MP :400/400
攻撃力:100
防御力:300
精神力:200
瞬発力:200
アビリティー: ・アテネの神格 ・アイギス
・ニケの敬愛
(……そうか! まだアイギスを見てねぇじゃねぇか!!」
千暁は最後の望みをかけて精神を集中させた。
まず、目をとじて視界を捨てる。次に意識を胸の真ん中に集めて自身に心音を精神で感じる。これは、地球で妹と組み手をやるときの始めと終わりに毎回必ず行ってきたことだった。これにより触覚を放棄し、聴覚も時期に遮断される。大きく息を吸って吐き、浅く呼吸をすることを意識する。ついには嗅覚さえもなくなるまでまで。
(アイギス………………)
【アイギス】
故女神アテネの神格に宿っていたアビリティー。神々の中でも最高格のアビリティーであり、防御系のなかではもっとも強かな最高峰のアビリティー。
故女神アテネは盾の形状をさせていたが、形状は本人のイメージに依存するので、剣にかえて武器とすることも可能。ただしその場合に保障されるのは強度のみであり、切れ味はなどは本人のイメージ力に影響される。また、〝アイギス〟となっているが、このアビリティーに決まった名目は実は存在しない。加え、〝アイギス〟は故女神アテネがこのアビリティーを使用する際に唱えたキーなので故女神アテネ以外が唱えても発動しない。ついては、この神格を持ったものが新たに名前を唱える必要が発生する。
(……。
…………。
……………………つまり、何でもありってことか――――――?)
千暁と違って状況を全て見ていたニケが千暁の肩を揺すりだした。
「あわわわ~~~、千暁さまぁぁ、あの人絶体絶命ですよぉ!! あのウィザードワイバーンたぶんブレスだすつもりですぅっっ!!」
「だ・ま・れ!」
「ひぃ!? は、はい! 黙らせていただきます!」
しかし結局いつぞやの死神にお世話になって黙らされてしまった。
(イメージだ……………………イメージ。
集中しろ…………、人一人の命がかかってる………………。
想像しろ………………漫画やアニメだって人並みに見てきたはずだろ…………!)
気恥ずかしさに押しつぶされないように羞恥心を捨てた。今ばかりは脳内が春な奴らがうらやましい。
両手を前に突き出し、イメージを限界まで鮮明にする。
新しい名前はもう考えた。後は名前とイメージを結びつけるだけだ。
…………。解放を、した。
「――――――――イサナミッッッ! 結界陣ッ!!!」
◇ ◇ ◇
「――――――――イサナミッッッ! 結界陣ッ!!!」
…………………………………………え?
人…………? 避難してなかったの………………?
キィィイイイ――――――ゴオオオオオオオオ!!!!!
ああ、なんて凄まじいブレス……………………あれ、どうしてだろう……?
炎の竜巻はアタシに当たってない…………、
「……何この、透明、な壁は――――?」
この壁に阻まれてブレスがアタシに接触できないんだ…………。なんか……意識がはっきりしてきた。
!? 嘘っ? 血が止まってる! いや、ありえない速度で傷が治ってゆく!
意識が覚醒した直後、奴がアタシに放ったブレスが効果時間を終えて周りの景色がはっきりする。
そこでアタシはまたも驚愕させられた。
ハイエルフの中ではまだまだ若輩だけど、人間換算で小娘もいいところだけども、これでもアタシはこの国の人間たちよりも遥かに長い時間生きていた。アッティカどころかパンセリノス皇国が出来る前から生きてきたのだ。
そのあたしでも、今目の前で起こっている現状を完全に理解することはかなわなかった。
『GUaaaAaAaAaAaA!?!?!?』
アタシの周りには正六角形の薄くて透明なピースが隙間なくくっ付いている壁がぐるりと立っていて、悶絶しておるウィザードワイバーンの顔には、アタシの周りにあるような見た目の透明の箱が出来ていた。
「呼吸が…………出来てない……?」
「よく分かったな。正解だ」
アタシは突然後ろから声をかけられた。
振り向くと、
そこには、灰色の短髪が特徴的な――――――一人の少年が立っていた。
呆然とするアタシのをよそに、…………時期にウィザードワイバーンは静かになっていた。
=1=
勝ちましたね。
千暁も戦いました。
アイギスはチートというやつですかね。まあ、この作品のキーワードには『チート』が含まれているので問題はないはずです。
何にもしていないニケちゃん。
これは古石も予想しておりました。きっとあれです。韋駄天走りですべてを出し切ってしまったのでしょう。
千暁と金の卵ちゃんをどうやって合わせようかと思案する今日この頃…………。