⒈ 呼ばれた者と出て行く者
はじめまして。古石 セツナです。
まず、この小説は不定期更新です。
それから、読みやすいようにと不自然でない程度に改行はなるべくしたつもりです――――――が、何分ネットでの書き込みは初めてなものでして、書き方がふらついております。二章の途中からは三人称書きに落ち着いていますが、それまでは地に足が着いていないと言いますか、手探りの面があります。
どうか暖かい目で読んで下さりますようお願い申し上げすm(_ _)m
現在は温め中の新作はそうはならないと思います(汗)。
それでは、『リーンカーネイション・オブ・ダイアリー』――――どうぞ!
時は午後十一時をまわった頃。とある国の、とある王城。
そこでは、こんな声が飛び交っていた。
「くっそう、これからって時に!」
「うっせいやい! 相手がいるだけでも恵まれてらぁッ」
「五月蠅いわよ! スケベ野郎ども。しっかり捜索しなさいよ!」
「スケベじゃねぇよ! 俺はダークエルフだから受精率ん関係で数ヤるしかねぇんだよ!!」
「と、言いつつも実はお前がヘタクソなだけっだたりしてな」
「ヘタクソなんだ? 奥さんかわいそぉ」
「へ、へたじゃねぇよ! ……多分」
彼らは、品のない会話をしながら城内を疾走していた。しかしただ闇雲に駆けまわっているわけではない。書庫や食堂や謁見の間といった、かの偉大なる人物が行きそうな場所を優先してまわっているのだ。
書庫ならば奥の本棚の上で寝そべっているだろう。食堂ならばワインの保管庫にいるはずで、謁見の間ならば玉座だ。
だが、充ては全て不発に終わった。
「だ、ダメだ~」
「はぁ、はぁ……ウソだろ」
「嘘じゃ、ないでしょ……現実見なさいよ」
最後の望みを賭けて開け放った謁見の間で彼らを出迎えたのは、冷え込んだ夜の空気と空の王座であった。
疲労感から扉と廊下の間の座り込む三人。
「ふむ。やはり、いませんか」
呼吸を整えていると、背後から声がかけられた。
驚いて振り向くと、そこに立っていたのは国王の次に権力を有している大元帥であった。
「「「だだだ、大元帥さま!?」」」
「何ですかその反応は。私は化け物か何かですか」
「「「……、…………」」」
「否定しないのですか。そうですかそうですか、そんなにお給金が要りませんか」
「「いや!? ちょっ!」」
「い、いや、化け物並にお強いですねという意味ですよ!」
三人のうちの一人、女性の兵士がただ働きは洒落にならないと挽回を試みるが、当のミカエルはまだ疑惑たっぷりの目線をしている。
「「いい意味ですよ!いい意味!」」
「そうです。いい意味です!」
「“化け物”にいい意味ですか。無理がありませんか」
「そ、そんなことないですよ!」
「「いやぁ! ミカエルさまお一人がいればこの城は安泰です!!」」
「なら、あなた方を城兵として雇う必要はありませんね?」
世間ではこれを鬼と言う。
「「「そんなァ!!」」」
「冗談ですよ」
そんなことより。と、ミカエルは言葉をつむいだ。
「あなた方の目は節穴ですか」
はて何のことだかという表情の三人。
「王座をよく見なさい」
「「「? お?」」」
そこには一枚の紙があった。見れば、何やら文字が書いてある。
手に取った女性兵士が文字を読み上げた。
~~~~~~
旅に出ます。
探すでないぞ。
しばらく国はまかせるからの。
じゃ、そゆことで。
~~~~~~
しばらく国はまかせるからの。とあるから、探さないでください。は、フリではないとみていいだろう。
つまり、悪く言えば期間未定の本格的な家出である。
「……陛下もそーゆーお歳になったんだなぁ」
「馬鹿みたいに強いから心配はいらないな」
「私も世界各地を旅したことを思い出すわぁ~」
階級の低い巡回警備兵である三人が、国に対して渉力を持ち合わせていないがために三者三様、能天気なコメントをこぼす。
しかし、国家の重鎮である大元帥はそうはいかない。実質、国の政治は大元帥がほぼ一人で行っていたようなものなので、他の重鎮たちが欠けてもいうほど支障はないのだが、
その賭けた重鎮の肩書が、――――『国王』ともなれば当然話は別である。
さらにこの国は、国王自身の圧倒的なまでのカリスマより成り立っているようなものである。
だというのに…………、
「どおぉぉぉぉぉしてぇぇぇぇぇぇ!! そんなァ! 無責任な行動起こしますかねぇぇぇエエエエエ!!」
「「「ひぃぃッ!」」」
至近距離で憤激のオーラに当てられた哀れな者たちが身を寄せ抱き合う。目の端には少なくない涙が浮いている。
「あのアホ様もどうして私に何も言ってくださらないのか!」
アホ、様。
見下しているのか、敬っているのか。判断に困る。
「その上ぇぇぇぇえ!!」
バカンッ!
大元帥が腰の洋剣を抜き放ち、王座を一刀の下に両断した。刃物というより鈍器のそれに近い破壊を受けた王座。
「「「○△☓P※ッ」」」
ガクガクブルブル
その王座の破片が狙いすましたように三人の頭髪を数本ずつ宙に舞わせた。
「……して」
怒りを発散し切ったのか、言葉に覇気がなくなった大元帥。
次の瞬間、三人は目を見張った。
「……どうしてぇ、」
大元帥の涙声など、今まで耳にした者がいただろうか。
「どどおおおおしてぇぇぇえええええ! 私にぃぃぃいい!! 面倒事を起こすのですかぁぁぁぁぁあああああああッ!!!! う゛ぁかああああああ!!!!!!」
哀れな被害者の魂の絶叫が響き渡る深夜の王城で、
三人は事の重大さを思い知しるのであった。
◇ ◇ ◇
見渡す限り、一面の雲。
その雲の絨毯の上に青年は存在していた。
また、驚いたことに直前の記憶がない。いや、〝ない〟というよりも思い出せないといった方が正しい。思い出せそうで思い出せない。海馬と前頭葉がうまくコネクションしないのだ。
だから当然、
――――なぜ?
という自問にも、まともな自答をすることすらままならない。
(……、…………。死んだか……?)
いや、さすがにそれはないだろう。なんて青年は苦笑い。
なんてことだ。……この三次元からかけ離れた景色はその可能性を真っ向から肯定しているとしか思えない。
仮にそうだとして。
だとすれば、ここは天上の世界か。
……とにもかくにもやることがない。出来ることもない。なにしろ周囲が殺風景すぎるのである。
(これがロールプレイングゲームなら、時間に伴って何かしらのアクションが起こったりするもんだがね)
と、青年がそこまで思考した時だった。
「良かった。魂は健在のようですね」
……。
…………。
……………………。
鳩が豆鉄砲を食ったよう。そんなことわざがある。おそらく、今の青年は正にそれに該当していることだろう。それほど、突如として頭上に現れた存在はNGであった。
また、死んだ魚のような瞳。という言葉も耳にする。こちらは、何らかに絶望した結果無気力状態におちいった人間に対して使う場合と、
「な、なんですか!? その目は!?」
対象人物をあざ笑うときに使用したりする。
言わずもがな、今回は後者である。
「何か言いたいことがあるなら言えばいいじゃないですかぁ!」
ほう。言ってしまっていいのか。
青年の口角が明らかに上がった。
「いや? 別にオレはスカートの中身が見えてしまって? 見えたそれが挑発的なワインレッドカラーだったもんだから? 思わず引いてしまっただけだが? 何か?」
しかも、少し守備範囲が心もとないタイプだった。
「バッ、ななん何を見てるんですかあ!?」
「お前に全面的な非があるはずだがな? そもそもなんでそんなんものを穿いているの。どう考えても背伸びしすぎだろ」
青年の辞書に“大人の対応”なる言葉は存在しない。落丁である。
指摘された以上、このまま頭上にふわふわ浮いているわけにはいかなくなったようで、モロパンはスタっと、眼前に降りてきた。
改めて目の前のモロパン女を観察する。
――――と。何を思ったのか胸ぐらを掴んで揺すり始めた。
「おおお男にゃら無条件で謝罪しゅるくらいの甲斐性を見しぇてくだしゃい!」
背中半ばまである流麗な金髪。麻色の大きめなストール、それに上半分を隠すように控えめにいるのは銀色の胸当て。腰に提げている威厳が疑える装飾付きの洋剣。
「そいつは甲斐性とは言わねぇな。てか噛み過ぎだろ。一旦落ち着けって」
そしてなりより、背から生えている純白の翼。
「か、噛んでまぜッ、……!!?」
「いや、モロに噛んでるだろ」
舌を噛んで悶えている金髪の女は間違いなく〝天使〟と呼ばれている存在であった。
神に次ぐ者のがこんなんでいいのか。
自分の事よりも、目の前の天使が心配になってきた青年であった。
=(異世界)1(日目)=
さて。大物二人(主人公とヒロインAと家出の王)が動きました。
しかし、まだまだ序盤です。本格的に動きだすのはあと少しですね。
誤字脱字指摘・感想、大歓迎な今日この頃…………。