表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
《全面改稿中》リーンカーネイション・オブ・ダイアリー  作者: 古石セツナ
第二章 『アイオライト騎士学院 ~上~ 』
18/71

⒋ 押し負け千暁

 どうも、古石 セツナです。


 ごめんなさい。活動報告で22日か23日になりそうです、とか言ってましたが…………アレ、盛大な打ち間違いです。ホントすいません。

 14日か15日になりそうです、って打つはずだったんです。ええ。

 活動報告でのお約束通り、投稿できました!

 ……出来てますよね? 急いで自転車でおばあちゃん()に来た苦労はちゃんと反映されてますよね……?


 そ、それでは、どうぞ!

「では、ごゆっくり……」

 カチャ


 扉が閉められた。メイドの悪質な言葉と、外からカギを掛ける音と共に。


 メイド(アレ)、完全に楽しんでいるぜ。



 たいして分厚くもない扉が閉じた音は、まるで鋼鉄ものかと思うほど重く鈍く感じられた。

 クラリスの首筋に汗が流れた。

 打って変わって…………平々とした千暁の表情。

 だが、誤解することなかれ。千暁は動じなかったわけではない。ただ、諦めただけである。性欲のコントロールが人より長けているというのも関係しているかもしれないが…………。


 部屋の広めの部屋の中央に謀ったように設置されたキングサイズのベット。


 千暁は内心頭を抱えながら、しかし感づかれないよう淡泊に動揺しているクラリスに言葉を放った。


「オレは床で寝るから、アンタはベット(アレ)で寝ろよ」


「――――――ク、クラリスっ! クラリスって呼んで!」


 今言うことか。いや、今だからこそなのか…………?


「じゃあ、クラリス。オレは床で寝るから、クラリ――――――」


「早く寝よう! ほら! はやくベット行って!」


 クラリスがぐいぐいと千暁の腕を引っ張る。夕食の酒が抜けていないのが見て取れた。

 もしもし、クラリスさん? ヤケが入っておりませんか?


「いやいやいやいやいやいやいや――――――――――――。

 いいか? オレは男で、クラリスは女だ。普通に考えて一緒になんて寝れるわけきゃねぇーだろ」


 千暁の必死の抵抗でか、クラリスの瞳が(うる)んできた。


「…………ボクには魅力がないかなぁ?」


「いいや、そんなことはない。確かに一人称が不思議だが、クラリスは十分魅力的だ。

 魅力的だからこそ! ダメなんだよ!!」


 それはつまり? っとクラリスは悟る。


「ボ、ボクは良いよ…………。

 ボクは女だから、ファイサリス家にそこまで影響力がないし。何よりこんなんだから、縁談も舞い込まない……。

 な、なななな何されても構わn――――――――」


「――――――。」


 トンっ……


「あっ……ぅ…………」


 千暁は詰め寄ってきたクラリスの額を小突いた。睡眠の魔法をかけたのである。南部統括冒険者ギルドで、親切な冒険者カップルから代表的な状態異常魔法を教えてもらったのだ。《スリープ》はその内の一つである。あの時は、まさかこんなことに使うことになるなどと、夢にも思わなかったが……。


 前のめりに倒れてきたクラリスを抱き上げて、やさしくベットに寝かせた。見れば見るほど、美しい顔である。ただ、夫婦ゲンカで半殺しになりたくない一心で、縁談を持ち込まないのであろう世の中の男性貴族たちの気持ちも分からんでもない。武芸派の貴族たちも、嫁にはか弱い乙女が欲しいのだろう。

 まあ、LV.242――――1上がったのだ。クリスタルビヒーモスを倒したのが大きかった――――の千暁には関係ない話だが。

 軽く、眠り姫の頬を撫でる。


「悪く思わないでくれよ…………。

 アンタが酒で酔ってなきゃ、たぶん食ったけどな。

 これは、なんか違うだろ……」


 扉は鍵が閉められている。まさか鍵を破壊して部屋を出るわけにはいくまい。 

 だから、千暁は《テレポーテーション》を使用することにした。

 したのだが――――……、…………。

 ちょんっ……と、上着の裾を掴んできた小さな手を、どうしても振りほどくことが出来なかった。


「…………っ、…………。

 ……、…………はぁ」


 結局――――――千暁はまた、クラリスに押し負けたのだ。


 千暁はベットの端の身を横たえた。




        ◇ ◇ ◇




==== side == ゴードン・(オールダ)・ファイサリス ====



 いやはや、驚いた。

 我が目を疑ってしまったよ。

 儂は、こんな日が来ることなど、夢にも思ってなかったからなぁ。

 もう、かなり前から諦めていたんだ。


 娘が、男を連れてくるなんて……な。

 いいや、正確には連れてこられた、というのが正しいか。

 なんていったって、あの子は背負われたからな。

 しかし。――――背負われた娘の安心しきった寝顔にはそれはそれは安らかな表情(もの)であった。


 それで、目を覚ました直後のあのセリフ。


『いかないで! お風呂入ってって! 夕ご飯も食べて行ってよ! 迷惑じゃなかったら今日は泊まってって!』


『ねっ? 泊まってって?

 ――――――いいでしょ!? 父上!!』


 あの恥ずかしさに押しつぶされそうになりながらも頑張って声を出しました、と言わんばかりの(かお)

 儂は顎が戻らなくなるかと思ったものだよ。

 まさに恋する乙女そのものであった。若き頃の妻(正室)を思い出させてもらった。

 あの、男勝りの武芸娘がなぁ…………。恋なんか無縁だと思っていたが。しかもどうやら、娘は本能的にヤトミネ殿に惹かれているようだ。ピンと来た、というやつであろう。




さて。

それで、娘を背負っていた男なのだか…………。


この男がよく分からない。


平民にしてはふるまいが整っておるし、貴族にしては、礼儀作法が少しおそろかだ。あとは、常識を知らぬ所があるな。食事をとってゆけと言ったのに対し、ためらいなく断ってきたのには驚いた。


 それだけではない。

 ヤトミネ殿の驚くべきところはそれだけではない。

 強い。あの男はとてつもなく強いのだ。


 実はヤトミネ殿が儂の屋敷を訪ねて早々、すれ違いの事故が起こった。

 娘――――――が何かされたと勘違いした儂の私兵が激昂して、ヤトミネ殿に襲い掛かったのだ。

 儂は、魔法水晶を使って、自室でその様子を見ていたのだが…………戦慄したよ。

 当たらない当たらない。

 儂の私兵、LV.60以上の精鋭のみで固められた達人集団の剣捌(けんさば)きが、かすりすらしないのだ。気が付けば半歩左にずれており、気が付けば……全員の後ろに立っている。

 儂はここまで素晴らしい転移魔法を見たことがなかった。

 しかもヤトミネ殿は娘を背負ったままの状態でその連続転移をこなしているのだ。

 そして、その戦いの幕はあっけないものだった。

 ヤトミネ殿から凄まじい威圧感が溢れだしたと思ったら、接近した兵はその場で崩れ落ちてしまった。慌てた儂が現場に到着したころには、ゆうに半数以上の私兵が無力化されてしまっていた。

 倒れた兵の中には、LV.80越えの者も混ざっていたというのに、手を触れずしてあしらわれてしまったのだ…………。あれが魔法か、アビリティーかはわからない。しかし、魔力を消費している様子が垣間見えたので、何等(なんら)かの技であるという事は分かった。


 あの男――――――ヤトミネ殿は、なんとしても我が手に収めておきたいものだ。



「うん……、炭酸風呂は正義だな」


 噂をすれば、である。

 風呂を終えたヤトミネ殿が食堂にやって来た。


「たんさん?」


「っ、これは伯爵。お風呂を頂きました。いい湯でした、ありがとうございます」


 ごまかされてしまった。まぁ、またの機会に訊けばよかろう。

 それにしても、敬語というのは面倒臭く、神経を使うものだ。貴族である儂が言うのだから、間違いない。


「ところで、やはり億劫そうだな?」


「は? 何のことでしょうか」


 とぼけおって。察しの良い貴殿なら分かっているだろう?


「儂が許す。普通に喋ってかまわんぞ。既に娘にはタメ口の様であるがな」


「……、…………耳が痛いな……。

 どうして分かったんだ? 顔にでてたかね。結構自身あったんだが」


 …………やはり平民ではないのだろうか。

 普通、勧められたからといって遠慮なく口調を崩すなど、同格の貴族でしかありえないだろうに。

 もし本当にただの平民だとしたら、なかなか豪気な男だ……。




 夕食と夕食後の席でもヤトミネ殿は儂の心を躍らせてくれた。

 まずノリがいい。そして、周りをよく見ている。言葉の溜めるタイミング。それから、結論を先に言って、あとから内容を(ほど)いてゆく、あの独特の話術。

 まるで、城に使える文官のようであった。

 しかしながら。

 聞けば、ヤトミネ殿は記憶喪失であるそうだ。       


 これは、女神アテネが儂に与えたチャンスである。


 勝手ながら、儂はそう確信した。

 こんな将来有望な男を抱え込まずして何が貴族か。娘のためにも、この屋敷にヤトミネ殿を留まらせておかなくては。そのためにはまず、留まることに(あたい)するのメリットが必要だ。


「よぅし…………!」


 儂は魔法水晶越しに、寝息を立てる二人の若者を見ながら――――――メイド長兼秘書のナンシーを呼びつけた。



 ヤトミネ殿には、儂の経営する学院に入学してもらおう。







=13=



古石「あ、やっとニケと千暁が再開しそうな伏線が見えましたね」


ニケ「……………………っ!!!」←超笑顔


メイド「親方さまは、騎士学院とも、アイオライトとも言っていませんよ?」


ニケ「……………………ッ」← 涙をこらえてる


古石「貴女、絶対『ごゆっくり』って吐いたメイドでしょ」


メイド「さぁ? どうでしょうか」



 感想を頂けたら嬉しいです。よろしくお願いします。



 湿布を腕に貼る今日この頃…………。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ