⒉ 決着、マッドネスドック
どうも、古石 セツナです。
今回は、題名の通り、決着いたします。はい。
最後の一撃を取るのは誰かなー?
もしかして魔物が側だったりして。
きゃあー。頑張って『ボク』の人!
それでは、どうぞ!
腰より下をなるべく見ないようにして歩く。
なぜか? それは見たくないモノがあるからだ。
トボトボと歩く。
なぜか? それは精神的に余裕がないからだ。
ゾンビのような足取りで、迷宮内を歩く千暁。
薄い蒼の結界も、彼をその円筒の中心に捉えて動いていた。
「……。あー、この道さっきも通ったなぁ……」
地図を買えばよかった。と、千暁は一人呟いた。
『『『『『ガウウ゛! グオゥウ! ギャイギャィ!』』』』』
「……しかも一匹増えるってなによ…………」
『『『『『ガウウ゛! グオゥウ! ギャイギャィ!』』』』』
「うっせえよォ……犬っころが。いい加減諦めろよォ……」
『『『『『ガウウ゛! グオゥウ! ギャイギャィ!』』』』』
「………………………………せめて涎がなきゃなぁ……」
『『『『『ガウウ゛! グオ――――……、………………』』』』』
どうしたのだろうか。犬型の魔物たちが急に吠えなくなった。
呼吸を止めたかのように静かになったモンスターたちに違和感を覚えた千暁は視線を下に向けた。
すると、モンスターたちは結界を引っ掻いたりしたポーズのまま固まって、前方に眼を向けていた。
つられて、目を向けていると、
「……………………」
人がいた。
少女がいた。ウルトラマリンライトのポニーテールとぱっちりした目が特徴的な少女だ。
どうやら、魔物たちはあの少女を発見してフリーズしていたようだ。
あれだ。
甲羅に籠もったカメ食べようと悪戦していたハイエナの群れのところに、いい感じの山羊が現れた、みたいな。うん。
いや、ほぼまんまか。
『『『『『…………――――グオゥウ!!! ギャイギャィ!!!』』』』』
「ぅえ――――――――!?」
「おっ、助かった」
得物に向かって犬型モンスターたちは標的を少女に変えて疾走した。
どこぞの男が最低な言葉を零したが、彼がマッドネスドックの群れに遭遇したのは、(多分)〝ニケの敬愛〟のせいであり、彼も被害者なので、お目に見てやってほしい。
少女もマッドネスドックが吠えたから男のセリフは聞こえていないようだし、なかったことにするのが一番だ。
「観戦に徹っすか」
殺せぇ――――!! 奴は人間のクズだぁ――――――――!!
前言撤回である!
◇ ◇ ◇
==== side == クラリス・S・ファイサリス ====
『『『『『ガウウ゛! グオゥウ! ギャイギャィ!』』』』』
「………………………………せめて涎がなきゃなぁ……」
グレーの髪の初年が危険度Cランクモンスターの代表格、マッドネスドックの群れに襲われていた。
(ウソぉぉぉおおお――――――――――――!!?)
胃に悪すぎるよ!
でもよく見ると、少年は結界を自分の周りに張って、マッドネスドックから身を守っている。
だけども……、表情がすぐれないしところを見るに、もうすぐあの結界を維持できるだけの魔力が無くなるのだと思う。
【ヤトミネ・チアキ】
種族…人族
LV.28
H P:410/410
M P:520/520
攻撃力:250
防御力:230
精神力:310
瞬発力:440
(弱いっ!!? なんでそのレベルで迷宮に潜ってるのさ!?)
【マッドネスドック】
種族…魔物
LV.41
H P:2368/2368
M P: 49/ 49
攻撃力:2313
防御力:1597
精神力: 345
瞬発力:1348
立て続けに〝心眼〟を使ってステータスを確認する。
(うう……、やっぱり攻撃力があるなあ…………ッ)
これはつまり、防御力が低い彼は戦力としてカウントすることができないということ。
でも、ボク一人で五匹全部を相手にするのはキツイいものがある。支援魔法を全開にすれば勝てると思うけれど、一つでもミスをしたら押し切られることは確定だ。
(そもそもなんで群れないハズのマッドネスドックが群れているのさァ!)
『『『『『ガウウ゛! グオ――――……、………………』』』』』
とりあえず《エンチャント》を掛け直して、攻撃力と瞬発力を強化した時、ボクは異変に気が付いた。
『『『『『……………………………………………………』』』』』
「……………………」
見ている。
マッドネスドック(と青年)がボクをその目でガッチリ見ている。
『『『『『…………――――グオゥウ! ギャイギャィ!』』』』』
「ぅえ――――――――!?」
こっち来たよ! 五体全部!?
少年を見捨てるわけにもいかないので、ボクはマッドネスドックに立ち向かった。
走りながら左手のに持った短剣には水の刃を纏わせ、右手の杖には硬化の魔法をかける。二つとも《エンチャント》を応用した祈祷魔法だ。
「やァ!」
『ギャオ!?』
壁を蹴って最後尾で駆けてくるマッドネスドックドックの首を深く斬りつけた。そのまま地に倒れる姿が視界の端に移る。
犬型のモンスターにはこの上からの攻撃が有効なのだ。師匠に教わった。
ボクは少年と残りの四匹の間に降り立った。
これで少年を守りながら戦うためのポジショニングは完了だ。
「キミ! 何か使える攻撃魔法はある!?」
「ガンバレ!」
帰ってきたのは質問の答えじゃなくて応援だった。
ホントなんで十一階層これたのさァ! それ以前に祈祷士がソロで迷宮に入るのが間違っているよ! ボクは以前に魔法士だったことがあって、中級まで攻撃魔法を使えるし、高レベルだからソロで潜れるんだよ!?
『ガァァア』
跳び掛かってきた一匹を杖で殴りながら右に転がり、なおかつ転がりながらマインゴーシュで首を斬りつけた。ぎりぎり届かないのが分かっていたから、水の刃を二倍に伸ばして深く届かせる。
これで、二匹。
さっきまでボクがいたところに別のマッドネスドックの顎が空を切った。
「下がって!」
後ろの少年に声を飛ばす。
「あー? もっとハッキリ大きく言ってくれー!」
杞憂だった。
少年はすでに十分に後退していた。
ボクの邪魔になりうることが分かっていたのだ。状況判断力はそれなりにあるようだ。それが少年が十一階層これた要因なのかもしれない。
『グゥウ゛ゥ……!』
しまった! 後ろに回り込まれてしまった。
正面と左にも一匹ずついる。右二は壁がある。
だんッ
ボクは飛び上がった。壁を思いっきり蹴って左のマッドネスドックの頭上を通過しようと試みた。
――――それが安直だった。
三匹はまるでその行動は予測してましたと言わんばかりに、一直線にボクの着地地点に跳んでくる。
(あ……。これは…………)
死んだかな。
(なら、せめて左のオマエだけでも――――!!!)
位置関係で、ボクが飛び越えようとした一匹は前後の二匹より若干早く早くボクに飛び掛かれる。
『ガアアア!!』
「ぁ゛あッ!」
右手をわざと噛ませたてやった。そしてボクのマインゴーシュは正確に魔物にのどに尽き刺さった。
…………。
一瞬の気の緩みが命取りになる。師匠に散々教わったのに、後ろに回り込むのを許してしまった。ボクの死因はそれ一択だな。
まあ、頑張ったさ。魔力を大量に使って支援魔法を全力でかけて、脳みそをフルに使って頑張ったよ。
頭から地面に落ちた。
「ぁ゛ぐっ」
すごく痛い。
痛いけど、ボク目掛けて今飛び上がっている二匹に今からされることの痛みは、コこれの比じゃないハズだ。
ドスッッッ!!
目を閉じたボクは、マッドネスドックの鋭い牙が自分の首に食い込む音を聞いた。
……。
…………。
……………………。
?
……あれ?
「あー、ダイジョブか? スゲー着地してたけど」
恐る恐る目を開けると、さっきの少年と迷宮の天井が見えた。
「……………………」
「あー、手ぇ噛まれたの見間違いじゃなかったんだな、《ハイヒール》
分かってるか、状況。戦闘は終了したぜ?」
「……………………、…………ふえ?」
「あれ見ろ。あれ」
少年はT字路の方向を指差した。
直剣で串刺しにされた二匹のマッドネスドックが無造作に転がっていた。
「……………………、……………………、…………ふえ??」
「オッケ。状況理解が終わるまで何も言うな」
そう言って、少年は土と返り血で汚れたボクを抱っこすると、ゆっくり歩き出した。
串刺しの直剣はほりっぱだ。
(あ、温かい…………)
ボクは瞼を閉じた。
=13=
ニケ「……………………」
焼き鳥が食べたいですね!
ね! ニルケ・アデルペーさん!
ニケ「…………嘘つきは嫌いですぅ(泣)」
分かりました。正直に言います。
多分、しばらくお休みです。あの二人にスポットライトを当てたいので。そうじゃないとメインストーリーが進まないので。
ロンバルディ「ニルケさん。授業サボってまで裏世界に行かないでくれませんか」
よっ、熱いね! 教師魂!
ロンバルディ「……ブレない方々ですね…………」
風船ガムをカミカミする今日この頃…………。