⒐ 対話の記憶(上)
どうも。古石セツナです。
作業中にお弁当を食べていると横からおばあちゃんが、塩イカを投入してきます。その塩イカのしょっぱいのなんの。あまりの濃さにお顔がチャウチャウみたいになっちゃいます。うう~。
しょ、しょれじぇは、どうしょ!
『そうですね。確かに、――――――わたくしは女神アテネなる者です』
(ニケからは死んだって聞いたんだが?)
『死にましたよ。神格に意識が残滓しているだけです』
(もっと早く干渉してほしかったんだが)
『しましたよ』
(は? オレ、アンタと今はじめて話すんだけど)
『ウィザードワイバーンと戦ったではありませんか』
(オレがな。なんか気絶したけど)
『意絶したのは魔力枯渇です。
それで、――――たった200の精神力で〝イサナミ〟を御せるわけないではありませんか。発現のみでしたらまだしもですが。二つも同時に操ろうなんて』
(〝アイギス〟、でいいぜ、アンタにとっては〝イサナミ〟じゃ違和感バリバリだろ。
で、つまりそれは…………陰ながらサポートしました。と言っているのか?)
『そういうことです。わたくしの精神力を40000ばかし譲渡しました。とは言いましても、あの間だけですけどね。
まったく、素晴らしい発想力をお持ちですね。防御をそのまま攻撃に利用しただけではなく、回復もこなすとは。とてもアビリティーを初めて使った者とは思えません。天才と言うやつでしょうか』
(…………40000とか。……化けもんだなアンタ。
……あんたはちょっと頭が固いんだな。アビリティーの説明には確かに防御とか載ってたけどよ、イメージに依存、とか、本人のイメージ力に影響、とか書いてあっただろうに)
『ええ、そうですね。ですから、強固なイメージをし盾の形をとったり、盾の表面を覆わせたりしてたんです。……わたくしはとりわけ頭脳が固い訳ではないと思うのですがね』
(まあ、どうでもいいわ)
『ところで神ヤトミネ』
(……なんだ?)
『貴方は神となるのが嫌なのですか?』
(……………………それ、答えを分かって訊いてるだろ)
『では、言い直しましょう。
なぜ、神であることを否定しますか?』
(オレは他人に崇拝されるような玉じゃねぇよ)
『そうですか。……本心は?』
(めんどくさい。他人の目線うざい。自由に生きさせろ。精神病になるヴォケィ)
『はぁ…………。意思は堅いのですね。ヤトミ・ネチアキ殿』
(そう、それでいいんだ)
◇ ◇ ◇
(化け物呼ばわりしたが……、オレの方が化け物だったなぁ…………)
【チアキ・ヤトミネ】
LV.241 種族…人族
HP :312200/312200
MP :480400/480400
攻撃力:312100
防御力:312300
精神力:480200
瞬発力:312200
〔アビリティー〕・アテネの神格 ・イサナミ
・神眼 ・ニケの敬愛
・神格解放 ・治癒士の匠
・魔法士の匠 ・祈祷師の覇者
・覇王の神髄
穏やかな夕日を背に受けながらの道中、千暁が自身のステータスを確認して苦笑いをしているとアリーフィアスが声をかけてきた。
「そんなに学院に通いたいの?」
「ああ。アッティカにはいい教育機関があるんだろ? いつまでもアンタにおんぶ抱っこななわけにはいかないからな。今日一日だけで十分だぜ? 一般教養と常識くらいは自身で身に着けるさ」
「えっ、いいわよ? 別に! むむむしろ歓迎するわよ!」
「アンタな…………。無闇に異性にそんなセリフ吐くもんじゃないぜ。誤解されるぞ」
「いや、その……!」
「それより、まだ着かないのか?」
「アタシは……っ。――――って、ううん。あそこに見えるのがそうよ」
千暁とアリーフィアスは一通り食堂で一通り話し込んだ後、宿を出て冒険者ギルドに向かっていた。
記憶喪失のせいでこの世界のあれこれがうんぬん。という話になった時にアリーフィアスがアイオライト騎士学院のことを口にしたのだ。ならばそこに通うと千暁が言い、お金はあるのか、となった。ここまでくればもう分るかと思うが、二人が冒険者ギルドに向かっているのはひとえに、
学院に通うに当たって発生する諸々の費用をアリーフィアスのランクを利用した高額クエストをこなして一気に稼ごう。
――――――と、言う魂胆である。
レンガ(に見えるけど……)造りの町並み。その中でひときわ目立つ、黄色い旗が掲げられた大きい建物があった。
二十四時間、三百六十五日。パンセリノス皇国、二大主要都市アッティカの南北二大ギルドは休みの概念がない。南東、北西にあるFランク(最下級)~Cランクまでの冒険者たち主にが使用している小規模な支部ギルドは夜間は開いていないがそれは些細なことだ。この国の二十四時間営業冒険者ギルドは皇都とアッティカにしか存在しない。
千暁とアリーフィアスが入場した南にあるギルドは、主にBランクからしか使用することのできない、言わば――――エリートのみが集うギルドであった。
「南部統括冒険者ギルドへようこそ、バシウス様」
受け付け嬢は、職業魂で気にしてません風を装っているが、十六歳の青年が現れれば否が応でも目立つに決まっている。
「オルバいる? アタシが来たって伝えてくれない?」
受け付け嬢と会話するアリーフィアスから少し引いたところに立っている千暁は、この場にいた冒険者たちに嫉妬や悋気、怨念のこもった視線が集中した。いや、アリーフィアスにも咎めるような視線が少し飛んでいるようだ。
「はい、奥の部屋におります。どうぞお入りください」
カントターを抜けて奥の通路を進む途中、千暁が声をかけた。
「なあ、もしかして暴挙に出てないか?」
「少なくとも規則違反はしていないわ。冒険者以外は立ち入り禁止なんてルールないもの」
視線が凄まじかったわけだ。
「アンタ、オレと同種の思考回路してんのな…………」
指定された部屋に入ると、初老の男がよくわからない書類から顔を上げたところだった。
隆起した筋肉が服の上からでも分かるほどの肉体をしている。きっと最近に引退した冒険者なのだろう。ハルバードあたりを振り回している姿が想像できる。
「そいつかァ! ウィザードワイバーンを倒したガキってのは」
開口一番、初老の男、オルバは爆弾を落とした。
「ぶっ!? ――――、ッッ」
ガシィッッ
千暁はアリーフィアスの肩を掴むと問答無用で反転させた。
「な、なにかしらぁ……」
「(おい、なんでオレが倒したこと知ってるんだ!!)」
「(じ、実際倒したのはヤトミネ君じゃないぃ……)」
「(兵士四人を一瞬でぶち殺す奴だぞ!? 世の中に慣れないままの悪目立ちは回避したかったからアンタに頼んだんだぞ!?)」
「(だ、だってぇ~)」
「(だってもクソもあるかよっ)」
怒髪天を衝く千暁にアリーフィアスが完全に気をされている様子が後ろからでも分かったらしい…………見かねたオルバが千暁に声をかける。
「あ――――…………、しょ、少年?」
「――――なんだ?」
「嬢ちゃんは懸命に隠そうとしてたぞ。うん」
「あ? じゃあなんでアンタが知ってンだよ」
「嬢ちゃんの戦闘スタイル上、ワイバーンを倒すにはフランベルジェの大きな裂傷が入っているはずだからな。現場には大した傷が見られないワイバーンの死体と、ポッキリ折れた嬢ちゃんの剣。…………どうみたって嬢ちゃんが倒したわけじゃないのはわかるさ」
「それだけじゃオレを特定するのは不可能だが?」
「嬢ちゃんは口が人一倍ヘタなんだ」
「……アリーフィアスさんよォ…………!」
「オ、オルバがアタシに誘導尋問を」
ちなみに、死体の回収をしたのもオルバらしい。
「まま、とりあえず二人とも座れよ。な?」
「…………そうだな」
(こ、怖かった…………)
安心するのはまだ早かった。
「そいやあ。嬢ちゃんはかなり少年は気を許してんだな?」
「えっ?」
「それはオレも感じてた。オレにだけ口調が柔らかいんだ。
ん? ……オルバ、アンタにもだな」
「いや、そうだけど。俺に対するのは単純に信頼だ。少年に対するのは――――」
「ね!? ちょ、そんなことよりも!! 速く本題に入りましょ! 速く!!」
空でも飛べるのではないか。
そう思えるほどアリーフィアスは両腕をパタパタせわしく動かした。
◇ ◇ ◇
クラウドが焦っている。
「やっちまったぜぃ!!?」
一応言っておくが、事後とか、そーいうのではない。
「なんてこった……! 子供一人のお守りすら出来ないなんて!」
単純にニケの迷子幼女―――ニケの引率に失敗しただけである。
騎士団に行って迷子連絡をしていたら、いつの間にか消えていたのである。
まさか骨付き肉を食べていた一人の騎士に本人も無意識のままついて行ってしまったなんて、誰も思わなかった。
「嬢ちゃん!! どこだァ~!!」
クラウドの叫びがニケがいる方向とは反対方向の商店街に響いた。
=1=
ニケ「お休みですか(泣)?」
古石「つ、次出すからさ」
ニケ「……………………」
うるうる
古石「だ、大丈夫! きっと感想でニケ可愛いいよ! とか来るから」
金の卵ちゃん「泣き虫幼女に感想なんてくるかの」
ニケ「……………」
ポロリ
古石「あなた若干毒舌キャラ入ってない!? 崩壊しないでぇ!」
金の卵ちゃん「事実じゃからの」
ニケ「ふ、ふぇぇぇええええ」
だぁー
古石「鬼ですかっ! まだ正体完全に明かされていない身分で!」
金の卵ちゃん「感想待ってるのじゃ~!!」
缶コーヒーは微糖六割、無糖四割の今日この頃…………。