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《全面改稿中》リーンカーネイション・オブ・ダイアリー  作者: 古石セツナ
第一章 『召喚』
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⒏ 驚愕する人々

 どうも、古石です。


 最近私の作業場の窓のところに、おばあちゃんがすだれをかけてくれました。しかし効果はありません!

「おばあちゃん、コレ全然涼しくないよ。エアコン設置しよう?」

 なんて、言えるわけがありません!

 夏なんて嫌いよ~~!


 それでは、どうぞ!

「ヤトミネ君もこれ食べる? おいしいわよ」


 勧められたのは、アイスクレインの手羽先、という料理だった。


(氷の鶴ねぇ…………)


「? どうしたの? もしかして食べたことある? 嫌いだった?」


「あ、いや。そんなことはない。貰う貰う」


「そ、良かった」


 手渡された手羽先を見る。よく見なくても分かるほどに降りていく冷気に顔が引きつりそうになるのを、男のプライドに鞭を打ち何とか笑顔にもってゆく。突っついてみると、普通の手羽先のように柔らかいことが分かる。

 普通、ここまで冷気を帯びたものは堅いのが常識ではないだろうか。

 千暁の中でアイスクレインの手羽先に対する抵抗が高まった。


「このアイスクレインね、ヤトミネ君が眠っている間にアタシが森の奥で取ってきたの。近くにたくさんいたのに気付かなくて大変だったわ。魔法で氷の槍を延々と飛ばしてくるんだもん」


「いや~! うまいなこれぇ!」


「そうでしょ、アタシの好物なの」


 本格的に食べざるを得なくなり、ヤケでかぶりついた手羽先。しかし千暁は後悔はしなかった。何故なら、ウソ偽りなくおいしかったからである。まず、予想に反してジューシーであった。普通、油分は冷めたり冷やしたりしようものなら、固まってしまい不味くなると相場は決まっているのだが、この手羽先はそうはならなかった。そして、何より肉自体がよかった。ぷりっぷりの食感はまさに癖になるに違いないものである。千暁は日本の高級レストランで食べたささみ肉を思い出した。

 結局、千暁は二本目に手を伸ばした。

 と、そこで本題を思い出した。


「……なあ、そろそろ話さないか」


「あ、そうね。 じゃあ、どうぞ?」


「は?」


「もう、だから、ヤトミネ君がアタシに知りたいことを訊ねるの。アタシがそれに答えるから」


 なるほど。

 確かに効率がいいようだ。空振り、行き違いの心配もしなくていい。


「じゃあ、なんでオレの名前知ってるんだ?」


「それはアタシが〝慧眼〟の持ち主だから」


「慧眼? アビリティーか?」


「そうよ。ヤトミネ君レベルで知らないなんてことはないと思うんだけど」


 彼女が言うには、レベル差が四倍未満の対象生物の名前とLV、HP・MPの状態がパーセンテージ表示で看破できるスキルらしい。

 ん―――、つまり。


「〝()眼〟の劣化版ってとこか」


「〝()眼〟が使えるの!? うそ! 各国に百人くらいしか使い手がいないのよ!?」


 ……行き違いをしている………………。

 まあ、〝()眼〟なんて一人もいないので……結果オーライとしようではないか。


「どうやって使うんだ?」


「――――…………え?」


 仕方がないので千暁はお約束の嘘をつくことにした。


「オレな、記憶がないんだよ。

 草原であの金色の髪の女の子に助けられて目が覚めたら、速攻でワイバーンに目ぇつけられて、その子とこの都市まで死にもの狂いで逃げ込んだんだ。体に染みついていたらしい感覚を駆使して、何とかワイバーンを倒せたけどな、所詮不確かな感覚だったわけだ。虚脱感に襲われてアンタに助けを求めた。

 それで今に今に至るわけだ」


「ぁ………………。ご、ごめんなさい……」


「おい、なんでアンタが謝るんだ。オレが困るだろ。主に、周囲の目線で」


 冗談抜きで本当に困るのだ。

 今はお昼をとうに回った時間帯であり、客は少ないが、それは交わされる会話が少ないということである。先ほど彼女が、〝心眼〟を使えるのか、と声を出した時には近くを通った従業員が一瞬停止し、少し離れた席に座っていた若い男女三人組の内、男二人が飲み物でむせていた。


「そうね、ごめんなさい。アタシ、こう見えて結構有名なの」


「そりゃまたどうして?」


「SSランクなの」


 下から数えて……Fランク、Eランク、Dランク、Cランク、Bランク、Aランク、AAランク、Sランク、SSランク、Rランクと十段階に分かれており、Sランクになると国から何らかの接触があるらしい。現在、Rランクの保持者は存在しないらしいので…………現状、彼女は頂点の一人ということになる。


「うわ~…………。敬語使った方が良かった感じか、これ」


「ううん、いいのいいの! アタシが手も足も出なかったウィザードワイバーンを魔法一発で沈める上に、瀕死のアタシを傷跡一つも残さずに全快にしてくれたのよ? そんな人に敬語使われたら、アタシが困っちゃうから!」


「そ、そうか」


 予想していなかった凄まじい捲くし立てに千暁はたじろぐはめになった。




        ◇ ◇ ◇




 リーダー、竜人族(りゅうじんぞく)・魔法士ロゼット。斬り込み、猫人族(ねこびとぞく)・剣士クラウド。遊撃手、ダークエルフ・魔弓士ロディン。 

 彼らは半年前にこのアッティカに来た冒険者で、AAランクパーティ〈トライデント〉である。



「「「――――――――ぶフォッッッ!!!??」」」



 彼らは飲料を盛大に噴き出していた。

 と、言うのも。先刻から驚きの連続なのである。知り合いのアリーフィアスを張り込んでいたのだが――――。 

 普段は酔った時にしか聴くことにできない女らしい言葉遣いと、女らしい仕草。加え、恋する乙女が如く、頬を若干ピンクに染めているではないか。それだけでは飽き足らず、なんと自分であの少年ためにCランクモンスター、アイスクレインの集団に単身で突っ込んだとか。

 

 彼女がきつめの口調を取る理由を酒の席で訊いたことがある。

『若くしてSSランクを持ってるとね~、変な輩に絡まれやすいのよぉ。だかりゃ舐められないように仮初めでもいいから、少しでも風格を纏うのよ~、ヒック』 

 と、語っていた。

 つまり、あの少年には、


「絡まれらい、舐められたい、」


「仮初めじゃないホントのアタシを見てほしいっ、と」


「あんたら、……それ意味が変わってるわよね?」


「「きゃ――――!!」」


 聞いちゃいねぇ。てか男がそんな声ださないでくれるか。



『〝心眼〟が使えるの!? うそ! 各国に百人くらいしか使い手がいないのよ!?』



「「!? げっふっげッほ……」」


「!! …………さすがアリーフィアスを射止める男だわ……」


 〝心眼〟と言えば彼らををここに送り込んだ上司も使えるが、その上司以外に使える者を見たのは一度しかない。今回でやっと二度目である。


「俺たち三人とも〝慧眼〟すら持ってないないよな……」


「いいじゃん。持っててもどうせLV差四倍以上の相手は見れないんだからさ」


「大元帥様は確か600超えてるって話よ…………。67と66と70でどうしようって言うのよ………」



『ううん、いいのいいの! アタシが手も足も出なかったウィザードワイバーンを魔法一発で沈める上に、瀕死のアタシを傷跡一つも残さずに全快にしてくれたのよ? そんな人に敬語使われたら、アタシが困っちゃうから!』



「「「ぶっっっフォ――――――――!!!!???」」」


 

 三人が囲んでいる机に、同情の目をした従業員がフキンを静かに置いていった。




        ◇ ◇ ◇




 チアキさまがいません。

 ウィザードワイバーンが暴れた恐怖で気絶したわたしに愛想を尽かしてしまったのでしょうか……?


「まあ、そう嘆くな。これを食べたら妾も探してやるからの」


「だってぇ…………」


 クラウドとかいう一緒に探してくれると言ったおじさんはもういません。どこかに消えてしまいました。きっとわたしが邪魔だったんです。お金やそれに準じる物を持っていないと分かって姿をくらませたんです。ううううう~~。


「お主はさっきから泣いてばかりじゃの。一緒に探してやると言っておるじゃろう?」


 今は、先ほどわたしに声をかけてきた方と居酒屋でホーンラビットの焼き鳥を食べています。オレンジ色のツインテールがよく似合っています。


「あなた子供じゃないですか~~!!」


「な! お主も十分子供じゃろぉーに!!」


「わたしは神様だからいいんですぅ~~!! 千年以上生きてますぅ~~!!」


「せッ!? わ、妾だって四百年生きてるのじゃ! しかも魔お――――」


「わたしより年下じゃないですかぁ~!」


「子供じゃないという意味じゃ!!」


 居酒屋の店主は思った。



(ここまでヒドイ中二病があったか………………!!)


=1=



 第一話ぶりにちょこっと出てきましたね、大元帥。まぁ、ストーリー上、後々ばしばし出現するようになります。本当にレベルが三百超えかどうかは噂なので分かりません。はい。


 サイダーの偉大さを痛感する今日この頃…………。

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