腹斬顚末（はらきりてんまつ）
君、僕は腹を切るよ。そう、腹を召すのさ。桜も散る折、頃合でもあろうしね。許婚の君を残していくのは、何とも心苦しいのだが。
理由？ 聞くまでもないだろう、先の大戦。敗北の後、この界隈でおめおめと生きて帰ったのは僕ぐらいのものだ。他にもたんといるじゃありませんこと、って？ 分かっていない、分かっていないよ君。
生きて虜囚の辱めを受けること勿れ。御国の陣地で負けたなら結構、ところが僕は虜囚だった。敵陣にて捕縛され、以降戦火に身を置かず――捕虜も辛いが弾に当たる心配はなかったね――のうのうとしておって、敗戦の後に帰された。
あれから半年以上経つが。今になって全く、吾が身が恥ずかしいのさ。同じ釜の飯を食った仲間も大勢死んだというのに……って、何だね急に手など握って、ちょ、痛い、痛いぞ君、それに顔、顔が近い！
何？ あぁも少し声を落として落として、鼓膜が震えるばかりで何も聞こえんよ。お気になさいますな、と？ 同じ釜の御飯を召せども、同じ米粒まで召しはせず。お仲間のことは不憫なれど、貴方様はこうしてご無事。わたくしはただただ嬉しゅう御座います、か。その心は嬉しくあるが、まずは手を離して。いえ離しませぬ決して、じゃなくて離して！ いいから離せ、痛っ、痛たたただっ！
全く。真心込めた言葉は嬉しいが、力まで込めずともいいだろうに。ああもうそれに、唾が唾が。目の前で鼻息と代わる代わるに飛んでくるもんで、花の嵐とはこのことかよ。ん、いや拭わずともいい、自分でやる。大体それぁ何だね、全体何でまた雑巾なぞ持ち歩いておるんだい。え、手巾？ 自分で刺繡した？ ……そうか、うん。
兎に角、だ。僕は近く腹を切るよ。男の意気地だ、辛かろうとも分かっておくれ。何、君は若い。お家柄とて旧くは士族、世が世であれば御家人の息女だ。それに君は乙女だ、白百合のように清楚で、そう薔薇の如く……や、うん、清楚な、そう白薔薇の如く清らかな乙女だ。僕などより良い人が見つかるさ。この住まいも伯父に引き払ってもらうよう頼んである、君の手を煩わすことはない。
そう言うな、僕とて辛い。吾が身の裂ける如しだよ。されども別れは避けられぬ、こうしていても悲しいばかりだ。申し訳ないが、もう会いに来ないでおくれ。ご両親には後で伝えよう。さ、来てくれたばかりで相済まぬが、これにてお然らば。今生の別れとしよう。
……泣くな。泣くな、互いに未練が募るばかりだ。そら塵紙だ、鼻をかんで。まだいるか、そら。……また紙か、そら、束でやろう。……なあ君、泣き声はもう少し落とせんか。お隣で赤子が泣き出したし、逆隣じゃ猫が唸り始めた。それに向かいじゃ仲間と見たか、犬まで遠吠えしているぞ。
大丈夫かい、もう落ち着いたね。さあ、これで然らば――ん？ 何、腹をお召しになるならなるで、仕方ないとは分かったが。せめてその前、お別れに一献差し上げたい？
有難う。丁度召し上がって頂こうと、手料理を持って来ていたって？ 尾頭付き？ それぁまた豪勢だね、喜んで頂戴するよ。
先ずは一杯――うん、いい酒だ。舌に胃の腑に染み透るね。君も、そら。で、これが……尾頭付き、かね。黒焼きかと思ったが……うん、随分炭のようだが、尾も頭も付いている。随分、掌に載せられそうだが。鰯なら鰯と言ってくれてよかったんだが。
まあまあ、頂くよ……ん、何だい妙な声を出して。鰯を裂く度、ぐっ、だの、うぎぎ、だの。おいおい何だ、手を伸ばして、箸で鰯の頭を外して……介錯仕りました、って。 君ね。確かに僕は、何の腹を切るとは言ってなかったかも知れない。けど鰯で切腹はなかろうよ、そういう頓智はいいんだよ。
全く。もう料理はいい、気持ちだけ受けておくよ。さあこれで……え？ だったらせめて名残に？ 立派なお姿を拝見したい？ いいだろう、少し待ち給え。
――さ、どうだ。軍装も久々に着たものだが。お似合いで御座います？ 有難う。これも大分くたびれたものだが、僕はと言えば戦場よりも、俘虜労役で随分くたびれた。吾が隊じゃ真っ先に囚われたものだったからね、殺しも殺されもする前に。全く君、生き恥だよ。
ん、そのお腰のものはって？ 立派なものだろう、御守り代わりの家伝の小太刀さ。僕には過ぎたる逸物だな。ああそれと、そうだこの背嚢。あの世へ担う荷もなかろうし、形見と言っては難だが君にやろう。僕へ情けがあるならば、どうか背負っていってくれ。重ければいつでも打ち捨て給え、その方が僕の望みだ。
これでいいだろう、どうか元気で生きてくれ。もう帰――え？ 確かにこれでよう御座います、お腹をお召しになるには……て、何だって？
おいおい何だね君、袖をまくって裾をからげて。手巾を折って畳んで鉢巻に締めて――随分でかいな手巾――、頬を自分の手で張って、両のその手に唾して。
準備は整いました、って何の。何？ 不束ながら？ 貴方様が苦しむのを見るに忍びない、せめて介錯仕りますぅ？
……いや、いやいやいやいや。君、君ね。さすがにそれぁ無茶じゃないかな。大体この小太刀の他、うちに刀はないし。大体そもそも元から何も、今すぐ腹を切ろうってんじゃあない――おい、ちょっと君、聞けよどこ行くんだいそっちは外……ん？ 納屋に入って？ 出てきた、出てきたよそれぁいいけど担いでんの何だいその、斧。熊にまたがりお馬の稽古、ってんなら随分合点がいきそうだが……え？ これで？ 介錯仕りますぅ？
……剣呑なんじゃないかなあ。随分それぁちょっと、剣呑……なんじゃないかなあ。大体、その細腕……じゃないにしろ、女の腕でそんなのが振るえるもんかね。ん、何だい裏庭へ出て、薪用の丸太を切り株の上に置いて――ああお見事、両断したね。切り株も半分ぐらいまで。その刺さった斧を、あ、軽々と抜いて――バットみたいに振る。振る。振る。ちょっと、こっち向いてやらんでくれるかな。被っても被っても、風で軍帽が飛ぶんだが。
これにてどうぞ一思いに、って、ちょっ、ちょ、ちょちょっと待ってくれ。それぁ余りにも、その……そうだ、これは男意気地の問題だから。女に手を借りたとあっては僕の名折れだ、どうか勘弁して、や、手を出さんでもらえるかね。
それならよしておく？ そうかい、それぁ助かった。寿命が縮む思いだったよ。や、寿命も何も今更関係ないわけだが……うん、関係ない。関係ないよ。
え？ 何、その代わり？ 貴方様なくばこの世に未練も何もなし、わたくしもあの世の旅路にお連れ下さいまし？ 心中、ということかね。……駄目だ。駄目だ駄目だ、君を連れて行く気はない。生き給え、独りでも強く――は言うまでもないか――生きてくれ給え、それだけは約束だ。何、さっきも言ったが君は若い。健康だし、汚れのない乙女だ。僕のことは忘れろ、きっと良い人が見つかる。
……え？ 何だって？ 汚れないなんて身ではないし、忘れることなんて出来はしない？ それぁどういう……え？ 忘れたのか、って？ あぁ恨めしや、わたくしの操をお奪いになっておい……て、ええええぇぇえ！
え、いや、いやいやいやいや。無い、無いよそれぁあるわけが無い。君に手をつけるなんぞ――や、未婚の男女という意味でだね――ある訳が無い。え？ 覚えていらっしゃらないのですか、年の瀬のことを、って？ 敗戦のことで随分荒れて、お酒をたんとお召しになった日を、雪花のしんしんと散るあの静かな日を？ それぁ確かに、そんな日はあった。昼に訪ねて来てくれた時だ、随分と飲んでしまって君に介抱されたのは覚えている。でも、僕は眠っていただけで――
え？ 確かにお情けを頂戴した？ 熱を帯びた手で押し倒されて？ 雪花の如く純潔を散らされた？ 天井の染みでも眺めていろの、畳の目でも数えろの。児の名でも考えておれば、そのうちに終わると言われて組んずほぐれつ、前から抱きの後ろから突きの……ってそんな、そんなっ、馬鹿な。
あ？ お、おい何をする！ 急に僕の小太刀など取って。それは女子の持つものではない、返し給え。うん？ 信じて下さらぬなら、自ら身を証すまで？ ……何だね、何だね笑って。おい何だね、何故そう自分の下腹を撫で回すんだい。おい……おい、何だ、こっちを見給え、下腹ばかり見ているんじゃあない。
え？ 六月ばかり早いが――誰に語っているんだ、こっちを見給え――？ 児や児、愛し子や、父様がせっかちな仰せじゃ、顔をご覧に入れておあげ……って、小太刀を抜いて逆手に持って振り上げて腹に振り下ろ――って待て待て待て待て！
あああ間一髪、離せ、小太刀を離さんか！ ほらよこせ、ほらっ！ ……ふう、どうにか取り上げた。怪我、怪我はないか。血がにじんでいるな、すまん。少し手を切らせてしまったか。
……何だ、何で笑っている。何が可笑し……え？ これで？ 嘘から真が出た？
何だ、息を大きく吸い込んで、両手を口の横に添えて、おい、ちょっ、やかましい叫ぶな！ 傷ものにされた傷ものにされた、硬くて長い見事な小太刀で、お腰の立派な逸物で、白百合の如き乙女の清い肌を破って血を――って、ぉおいいぃぃい！ や、間違ってはいない、間違いではないが、間違ってないから黙れ！
――――いや、違うんですお隣さん、本当何でもなくて、何でもないんですただの喧嘩です戯言ですよただの、大丈夫ですってば。はい、はい本当お騒がせして、はい――
……はぁ。君、おい君ねえ。何をしてくれるんだ本当に！ いいか、はっきりと言わせてもらうが――ああ、お隣さん済みません今度は静かに――え？ お客？ 僕に？
あ、伯父さん、これはどうも。先日の件？ や、その、ちょっと今取り込み中でして、申し訳ありませんがまた後日で――せっかく来たから、って？ や、でも済みませんけどもうちょっと後で、や、すぐ済むすぐ済むって言われても、本当に済みませんと申しますか。
だからだからその、ちょっと、ああ結局仰るんで――はい、引越しの段取り、ええそりゃ確かに期日までにはちゃんと。人手を寄越して下さる、そりゃ有難い。あ、越した先での職の世話まで、こりゃ本当にどうも。ええ、ええそれで、是非お願い致しますはい。ええまたその日に、どうも、それじゃあまた――
…………さて。何だ、何だい君、その目は。何か言いたいことでも、おい、何だいこの手、離してくれんかね痛っ、痛たたた！ 顔もも少し離したらどうだね、鼻息もだがその口、頭からかぶりつかれそうで堪らんのだが。
え？ お腹を召すと仰っていたのに、お引越しとは求職とは、いかがしたことで御座います？ 得心のいくお答えを伺いたいもので？ うん、分かった、分かったから、鼻の穴をそんなにひくりひくりさせないで。牙を、や、歯を鳴らすな歯を。手も離せ手も、腕の骨が軋んでいる。
……よし。それじゃあ言ってやろう。いいか、よっく聞いておくれ。言うぞいいか……落ち着き給えよ？
腹を切る、というのは嘘だ。金輪際、君とは縁を切りたい。それだけだ、嘘はその方便。これでも気を使ったのだ、そうした別れなら君もそう傷つくまいし……僕もそれ以上は追及されまいし。生きよと約束しておけば、君は違うような人でもない。
怒ったか、それとも嫌ったか？ いずれにせよ当然だ、責めたくもなるだろう。何か言いたいことがあれば……何か、無いのかい？ あるだろう、恨み言の幾らも……ん、おい、何か言い給え。……おい、泣くな。泣くなよ。
何か言えよおい、何か聞きたいことなど……どうしてって？ ああその……そもそも僕らが許婚というのも、祖父様同士が戯れに仰ったのが元だそうだし。それも亡くなられる前、僕らが嫌ならよしていいと仰せであったそうだし。そう泣くな、そう泣くな。ほら、額の手巾使い給えよ、その大きさなら拭うに丁度良かろうよ。
ん、何だい。何故？ 何故にお嫌で、わたくしをお捨てになるので、と？ 聞きたいか。そうか。
……言わなきゃ分からんかね？ いいか、あのねえ。鏡を見給えよ、それで分からなけりゃあ嘘だぜ君。なあ、分からんか？ 分からんかねこの……ちんくしゃ。いいか、君みたいな獅子鼻で、丸太ん棒のような太腕で、誰が娶ろうと思うものか。このちんくしゃめ、狆がくしゃみをしたようなら可愛げもあろうが、猪を真正面から叩き潰したみたいな顔しやがって！ その不味い顔、味噌汁ででも洗ってどこなりと行き給え。
……何だ、何だい君、その目は。何か言いたいことでも。おい、何だね何かあるなら言って……って、痛っ！ 離せ、離せよ痛っ、痛い痛い痛い手首を捻り上げるなよ肘がっ、肘がみちみちと鳴ってあああ！ 何だ、何だい君、何か言いたいなら言って、や、言って、言って下さい何か言って腕を捻り上げてないで、肘が、肩が！
ふぅ、ようやく離してくれたか……と思いきや何だい今度は片手で襟首つかんで、つかみ上げて、おいおいちょっと、足が、足が床から浮いてるんだが僕！
ん、何だいそのもう片手で持ってんのは……背嚢？ 僕があげたものか。え？ お仲間が死んでなお、生きるその身が恥ずかしい、だから腹を召す。そういうお話でございましたが？ それも嘘ごとでございますか、と？ ちょっ、待っ、苦し、揺さぶるな！
ああ嘘さ、決まってるだろう！ いみじくも君の言ったとおり、同じ釜の飯を食ったとて、同じ米粒食いはせず。吾が身でもなし、義理も情けもあるものか！ どころか、死んでいるなら僥倖よ！ 君のことを知る奴がおって、やれ豪傑嫁よちんくしゃよ。その許婚に腕でかなわぬ青ビョウタンよ、そう隊中から囃されいびられしごき倒され。奴らのため、誰が腹など切るものか！
何だい君、いつまでそうしてるんだ。下ろし給えよ。何か文句でも……って何だい、何で、吊るし上げたままその場で回って、回って回って――おい何だか足が浮かんできたんだが僕――まだ回って回って回って回って――っておいおい浮かんでる浮かんでるよ僕完全に飛んでる外へ足から吹っ飛びそうに！ 離せ……や、離すな離すなよ絶対に！ 下ろして、って……離しおっっ……たああぁぁぁぁぁぁ！
――痛っ、痛たたた……何が何やら分からんが……ああ押入れに飛び込んだか、布団に突っ込んで助かった。襖はもうどうにもならんが。
君、君ねえ全体何してくれるんだ、幾ら何でも……って、何だい何だい両の手を握り鳴らして、右拳を固めて、振りかぶ――って、ぶがっっ！ 痛、いっっ……たああぁぁ！
お、おいやめろ、近づくな。まだ殴る気か、身構え、拳を突きつけて。何？ いやしくも共に命を張った身の、お仲間をそうも腐すとは。大和男子の風上にも置けませぬ、恥をお知りなさいませ？ わ、分かった、分かったから拳を下ろせ、やめて、来るなやめて止めて！
――あ？ 何だい、何だい急に僕に……抱きついて。そんなに、ぎうっと。母子でもあるまいに、ぎうっとぎうっと、抱きついて。殴らない、のか？
何？ けれど嬉しゅう御座います？ お仲間にわたくしのことを誹られ、それを怒ってくれたのが？ その思いはどうあれ、わたくしの名誉を守ろうとして下さったのが。それに何より、何より何より？ 貴方様が腹を召さぬと、生きてゆかれると仰った。それがこの世で一番嬉しい、ですから。ですから？
うお、何だい今度は。またつかみ上げて、何を背負わせ……背嚢？ 背嚢の背負い紐を、片方？ もう片方はそれで、君が背負って。何？ お仲間に先立たれ、虜囚の辱めを受け、それでも生きる負い目があらば？ そのお荷物、わたくしが半分背負います？ この思い、それでも重いと仰せならば――
何だ、何だ今度はまた吊るし上げて、担いで、うおお！ 背嚢ごと、僕を背負い上げて？ え？ それでも重いと仰せならば、この太腕で全て軽々。このちんくしゃめが何もかも、みぃんな背負って差し上げます……か。
……そうか、うん、そうか。ふふ、全く。ははは、全く。頼もしいな、君は。そういう所は。そういう所だけは、嫌いじゃあないよ。うん、悪くない。ま、とりあえず下ろしてくれ給え……有難う。
まあ何だ、そう。悪くない、君は。僕が悪かった。これから先がどうあれ、もっと気遣うべきだった。悪かった。
え、これから先がどうあれ？ 生きてゆかれるのが嬉しい？ 先刻も聞いたよ、有難う。
ん、けれどどうあれ？ 先の世で生きてゆかれるに、女子にあしらわれるようでは気遣われます？ 故に少々、武道の稽古をつけて差し上げましょう？ まあ、それも有難くはあるが。え、今から？
おいおいちょっと何だい、押入れから布団など広げて。何、組技の稽古を致しますから？ 投げ倒されて組み敷かれ、お怪我などなさらぬように。え、そんな本格的な稽古するつもり……て、つかんで、吊るし上げて、おおおぉぉっ！
痛たたた……君、せめて受身からなりと教えてくれ給え、いきなり投げ倒すなんて。しかも何だ、僕の腹に馬乗りになって。本式に追い討ちする気……て、何だい顔を近づけて――むぶっ！ きっ、君、何を、何故突然、接吻なぞを！
え？ さぁさ、お稽古致しましょう？ 寝技を二人でとっくりと？ おのれ男子の堅き操に、舐めたまねをとお思いでしょうが。しごいてしごいて差し上げます、上になっては下になり、組んでほぐれてまた絡む、寝技をまずはじっくりと。その後、堅き心のままに、腰を入れては突いて突く、貫くような突き技を。ただわたくしも初心にて、よろしくご指導ご鞭撻あれ？ 血の出るような突き打ちも、きっと忍んでみせますので？
って、え？ え？ おいちょっと君、やめてよして脱がさないで！ ああっ、ちょっ、よせ、あああこれなら、かつて虜囚の恥を晒した身、やっぱり死んどきゃ良かったか！ ええよせ、よさんと舌噛んで死ぬぞ！
あ？ もしも死ぬると仰せなら、わたくしめも共に昇天。あの世でお稽古いたしましょうぞ？ 何となればこの命、少しも惜しくは御座いません、貴方と共にどこまでも？ ……何でまたそこまで、君。
何？ 生きて虜囚の辱め受け、死なねばならぬと仰せであれば？ わたくしこそは死ぬるべき身。
何せ疾うからこの身も心も、全て貴方の虜囚ですもの――。
（了）
