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月の雫“ルイシャ”と四燿星の男達  作者: 蒼水無月
第一章【第三部】
15/24

アルトゥールとキハル

今回は会話文だけで進ませてみます。

* * *


「ア、アル……ッアル……や、いややリュウちゃん……っ…誰か来て……っ、アル――ッ」


「うるさい、そんなに何度も呼ばなくても聴こえてる」


「っ!アルっ!?」


「なに、その信じられないって顔。まったく、よくもこんなところまで…ほら、姫ちゃん貸して」


「ど、どないしよ…っリュウちゃん死んじゃいやや!」


「あーもーわかったから、キハルが泣いてもどうしようもないでしょ、馬鹿。さっさと戻るよ」


「助けて…っリュウちゃん助けてお願いアルっ!」


「当然でしょ。ほら行くよ」


* * *


「ありゃ、アル。今日は一人なん?」


「暇なん?仕事終わったんか?」


「まぁねー。でさ、あの馬鹿どこ?この分じゃ、仕事になってないでしょ」


「あー…まぁなぁ……」


「もう六日経つねんけど……やっぱ重症やねぇ」


「わかんなくもないけどなぁ。なんせ、あん時のリュウちゃんって――…って、どこ行くん、アル?」


「あの馬鹿がいそうなところかなぁ。じゃあね」


「……行ってもうたわ」


「まぁ、アルやしなぁ」


「キハルがあんなん落ち込んどる理由も、わかってんやろなぁ」


「せやなぁ」


「ってぇことは、アルはそのために来たんかいなぁ?」


「やないの?あないなったキハルに土足で堂々踏み込めるの、アルくらいやしなぁ」


「なあなあ、結局、あの二人ってなんなん?」


「さぁ?こればっかりはようわからへん」


「うん、あの二人だけはようわからん」


「ただのバカップルに見えるんはウチだけか?」


「そんなん言うてみ、即行ぶん殴られるで」


「せやけどなぁ」


「あれ?でも、そういえばアルが好きだった人って確か――」


「わぁーっ!それ禁句やねん!睨まれるから止めときや!!」


「そ、そうやね…」


「ウチはあの二人、結構良いコンビやと思うねんけど…」


















「仕事放ったらかしで、こんなとこでなにやってんの。馬鹿キハル」


「――――」


「ウチに不真面目な領民はいらないんだけど」


「――――」


「なに、返事できないくらい馬鹿になったの?」


「――――」


「やめてよね。ここって元から湿気多いのに、そんなカビ臭い顔してたらもっとジメジメして気持ち悪いじゃない」


「――――」


「あーそう。本当に口利けなくなったんだ?別にいいけどねぇ、馬鹿が一人減って清々するしさ」


「――――」



















「あのさぁ、君がウザったいほどそうなってんのって、姫ちゃんのことだけじゃないんでしょ」


「――――」


「ミチルのこと、思い出しでもした?」


「(ビク…ッ)」


「やっぱりね……で?他の子達は君が“あの時”のことを思い出して泣いてる、なぁんて風に思ってるみたいだけど―――本当はちょっと違うんでしょ」


「…………」


「そうだなぁ、強いて言えば自己嫌悪?ま、馬鹿キハルには似合わない単語だけど」


「………………ウチ、最悪や……」


「うわぁ、想像以上に酷い声」


「…………リュウちゃんと、ミチル(ねぇ)のこと、比べよった……」


「ふぅん…それで?」


「………ぜんぜん……全然、違うんや。リュウちゃんとミチル姉は違うって判ってるんや。せやけど……ウチら庇ってあないなったリュウちゃんが、ミチル姉と重なって見えてもうた……」


「そんなに、似てた?」


「ちゃうねん。本当に全然ちゃうねんけど…ウチにもようわからんのや……アル、ウチはまた失くすんか…?」


「僕に言われてもねぇ」


「ミチル姉に、皆の事お願いって頼まれたんはウチやったんに…また、なんにもできんかった。リュウちゃん怪我させて、ウチはかすり傷一つつけんで……」


「……」


「全然、駄目や……そんなんウチが、リュウちゃんにミチル姉重ねて見るとか最悪やろ……っ」














「まぁ確かに、成長は全然してないよねぇ。馬鹿が一人で勝手に突っ走ってるようにしか見えないし?」


「…………」


「ほんと、馬鹿じゃないの?馬鹿キハルがミチルになれるわけないでしょ。なのに君は“あの時”からずっとミチルになろうとして躍起になってる。ほんと馬鹿。見ててウザい」


「――――」


「はぁ……あのね、誰も君にそういうこと求めてないから。馬鹿が馬鹿以外になりようがないんだしさ、いい加減やめたら?」


「…………気づいてたんか…?」


「それこそ今更。だいたい、方向音痴のくせに調子に乗って山奥に入って迷子になった君を、いつも誰が捜し当ててきたと思ってんのさ。ま、お陰で君の情けない声が聴こえて姫ちゃん連れて帰ってこれたけど」


「……音痴やないもん………」


「この状況で言っても説得力ないから。でもまぁ、君には良い機会じゃない?姫ちゃんの前では普通にキハルになってるみたいだし」


「え……?」


「ミチルがいなくなってから、みょーに大人しくなっちゃってさ。見ててムカムカするんだよねぇ。馬鹿は馬鹿なりに馬鹿やってればいいのに」


「―――――――――――…なんか、ごっつぅムカついてきたわ」


「へぇ?」


「一体なんなん?さっきから馬鹿バカ言いよってからに!」


「そうだけど?やっと馬鹿が馬鹿らしくなってきたんだから言わないわけないでしょ」


「はぁ!?」


「まだ気付かない?ミチルがいなくなってからの数年間、姫ちゃんが来るまでの間に僕はキハルのことを一度も馬鹿って言ったことないんだけど」


「…………は?」


「馬鹿って言い甲斐のない相手に言ったって虚しいだけだしねぇ」


「―――むっちゃムカつく言い草やな。馬鹿っていう方が馬鹿やねんで」


「僕は客観的に評価しただけだよ」


「アホに言われたかないわ!」


「君の言い分だと、たった今自分をアホ認定してことわかってる?」


「こンの……減らず口!!」


「それはお互い様だねぇ」
















「そうそう。姫ちゃんさ、三日前の夜明けに目ぇ覚ましたよ。今は静養中」


「っ!?なんでそれをはよう言わへんのや!!」


「さっきまでの君に言ったって意味ないし?今みたいに言葉より先に腰上げないで、ウジウジしてただろうしねぇ。キハルには、猪突猛進のバカの方が似合ってるよ」




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