第6話 初恋
ハッと目が覚めて、目の前にはいつもの同じ天井があった。
――夢か。
眠ってしまう前は黄金色だった空が、いつの間にか吸い込まれそうな濃いブルーに変わっていた。
今日は月、出てないのかなぁ。
ゆっくり起き上がって横を見ると、古くなって少しボロボロになったくまのぬいぐるみ。
そう、あの時総悟にもらったもの。
あれから毎日抱きしめて寝てるんだよ。
寂しくても、総悟が近くにいる気がしたから。
涙が出そうになっても、ぎゅうって抱きしめたら、答えてくれてる気がしたから。
それでも泣いちゃう時はあったけど、総悟が傍にいてくれた。
私って本当に、総悟に依存しすぎだなぁ...
少し離れただけで、不安になって、泣いて。
中3だもん、彼女くらいできるよね。なのに、私が総悟を好きだからって、総悟の前であんな態度とって。
そんなだから、いつだってお子様扱いで、相手にしてくれないんだって。
「総悟...」
そっと呟いてみても、そこに総悟がいるわけでも、まして来てくれるわけでもないのに。
好き。
この感情がなければ、いつまでも幼馴染として、ずっと一緒にいられるのだろうか。
伝えなければ、今までどおり、楽しく笑いあえるのだろうか。
ならばいっそ、捨ててしまおう。
醜い私の心と一緒に、広い夜空に捨ててしまおう。
窓を開けると、真冬の凍えるような風が部屋に入り込んで、思わず身震いする。
――ばいばい。
初恋なんて、ろくなものじゃない。
そう思った、15歳の冬――