第5話 幼き頃
――ここは、どこだろう。
真っ白な背景に、小さな子供がふたり。
ひとりは男の子で、もうひとりは...私?
ああ、これ、私と総悟だ。
何故か子供の頃の私達を客観視して見ている。
まだ幼い私が、同じく幼い総悟に何か話しかけている。
...上手く聞き取れない。もっと近づけないのかしら。
耳を澄ますと、かすかに聞こえるふたりの会話。
『――いいの?』
『うん、紗雪のだよ』
なに――? 私はなにかもらったの?
『紗雪がひとりで泣かなくて済むじゃん』
『わあ... ありがとう総悟!』
『別に。毎回泣き止ますの面倒なだけだし』
満面の笑みの私に、少し照れくさそうにそっぽを向く、総悟。
この会話――覚えてる。
たしか、私が7歳になった誕生日だ。
この頃の私は、親が家にいないのをすごく寂しがってた。
――どうして紗雪ちゃんはいつも家にひとりなの?
――あのね、パパとママ、お仕事なの
――ずっとお仕事なの? 夜には帰ってこないの?
――うん、帰ってこないよ。ふたりともね、外国に行ってるの
――ふーん、変なの
友達を家に呼ぶ度に、同じ会話のくりかえし。
本当に、私の家は変なのかもしれないって、本気で思った。パパとママは、私を捨てたんじゃないかって。
そのたびに『馬鹿じゃねぇの?』って、頭を撫でながら慰めてくれた総悟。
寂しくて寂しくて、涙が止まらなくて。
そんな夜には、私が眠りにつくまでずっと一緒にいてくれた総悟。
総悟が頭を撫でてくれるたびに、抱きしめてくれるたびに、私は笑顔をもらってたんだよ。
目の前の幼い私は、もらったくまのぬいぐるみを大事そうに抱きしめて、笑っていた。
同じように、幼い総悟も笑っていた。
そして、ふざけあって、抱きついて、...