第4話 裏づけ
家に帰って、考えた。
今日の噂、3組の伊川さんとやらが総悟と付き合ってるっていう。
それに関して私は完全に部外者でしかない。ということは...
「総悟おかえりっ!」
「は...?」
祝福するしかないではないか!!
「きのうはごめんね? ちょっとおかしかったんだ私。お詫びも兼ねて、今日はごちそう作ったから。一緒に食べよう!」
「......」
...怪しまれてる。こっちを警戒して睨んでるよ総悟。
ど、どうしよう...
早くも涙目の私に総悟はゆっくり近づいて、
「なんかあった?」
と、ほっぺを抓る。
さすが幼馴染。私が落ち込んでたりすると、すぐ分かるんだ。そしてなぜか、ほっぺを抓ってくるんだ。
「にゃ、にゃんでもにゃいよぅ」
「『にゃー』じゃねぇよ。言え馬鹿」
抓られてるからでしょっ!
でも、よかった。いつもどおりだ。大丈夫。もう泣かないんだから。
抓られて赤くなったほっぺを擦りながら、ランチョンマットの上にシチューやらなにやらを用意していく。その間も総悟は、私を観察しているようだった。
「さっ、できたよ! いっただきま...
「噂きいたー?」
え...ここでその話題? しかも遮ってまでする話ですか!?
「う、うん、聞いたよ? 3組の伊川さんと、付き合ってるんでしょ?」
あくまで平静を装う私。だけど、心は悲鳴をあげていた。
自分の口から出た言葉が、そのまま矢になって突き刺さる。
もう、駄目。これ以上は、泣いてしまう。祝福するって決めたのに。
「そ、そんなことよりもさ、どう? 今日のシチューは気合入れて作ったんだよ!」
わざと話題を変えてみる。
『おめでとう』って言えなかったな。
「あー、この前初めて喋ったんだけどさ」
「え...あ、うん」
「なんか、ぶりっこだよな」
え、何の話だろう、伊川さんの話だよね?
自分の彼女ぶりっことか言っちゃ駄目でしょ...。あ、ぶりっこは男子にモテるのか。
「いや、私伊川さんと話したことないんだー」
「ふーん」
相変わらず興味なさそうですね。
もう、やめてよ。伊川さんの話なんて。聞きたくないよ。
「でさ、伊川がこの前...」
バンッ。
気づいたら私、立ち上がってた。
「あっ、えっと、あの」
気まずくて、総悟の家から飛び出しちゃった。
そのまま家に帰ってベッドにダイブする。
やっぱり、あの噂は本当だったんだね...。
噂が本当だったことよりも、それを私に言ってくれなかったことが悲しいよ。
もう私は関係ないからかな。追いかけてもくれないし。
なんて自分勝手なことを考えながらないていると、いつの間にか寝ちゃったんだ...