第3話 噂
「ぎゃはははは、急にネガティブ入るよねぇ、紗雪って」
「もうっ、笑い事じゃないってば...」
総悟とけんか(?)した次の日。
いつも総悟と一緒にくぐる校門を、今日はひとりで。
教室についたら総悟もう来てるし、やっぱり嫌われちゃったのかな...
「紗雪? ...永瀬くんなら大丈夫だよ」
「唯... 今日、謝ってみるね」
「うんっ、きっと許してくれるよ!」
唯に励まされてちょっと元気になった私。
そうだよね、このままじゃ駄目だ。この恋だって片想いのまま終わっちゃうよ!
今日帰ったら、久しぶりに総悟の家にご飯作りに行こう。
何がいいかな、なんて考えてると、廊下の方から女子の歓声が、というより悲鳴が聞こえてきた。
「え、なに、何の騒ぎ?」
「行ってみようよ紗雪!」
唯と一緒に廊下に出てみると、さきほどの悲鳴の主と思われる女子たちが口々に、
「本当らしいよ」「えーっ、やだ! 私だって好きなのに!」
と、なんのことだか全く分からない。
「ちょっと、何の話?」
唯が近くの女の子に聞いてくれた。
その女の子はいかにも不愉快そうに、事情を説明してくれた。
「知らないの? 2組の永瀬くんよ。どうやら3組の伊川さんと付き合ってるらしいの。許せないわよ! この前ふたりで相合傘してるとこ、見た子がいるんだって!」
早口で話す女の子の話を呆然としながら聞く私。
気を使ったのか、唯は私の手を引っ張って屋上の階段まで走った。
「はぁ、はぁ...ねぇ、今の話...」
「紗雪、泣かないで。ごめんね、私が聞いちゃったから...」
無意識にも涙をこぼしていたらしい私に、申し訳なさそうに唯が謝ってる。
「唯が悪いんじゃないよ! どうせ、いつかは耳に入るんだし...」
「紗雪...。1限目は、サボろっか? 永瀬くんと同じ教室にいるの、辛いでしょ?」
唯の気遣いが心をあったかくしてくれる。唯は優しい。
「ううん、大丈夫。行こう唯!」
無理に強がって見せたけど、本当は今すぐ声をあげて泣きたかった。