第2話 「ごめんね」
家に帰って私服に着替えると、私、総悟の家に飛び込んだ。
「総悟ぉー! うあぁー」
「何、どうした」
リビングのソファに寝そべってテレビを見ていた総悟。余裕だなぁ。
「うぐ…っ、あのね、怒らないでね?」
総悟の近くに寄っていっても、寝そべったままで視線もテレビに向けたまま。いつものことだけどね。
「場合によるけど聞いてやるよ」
「上から目線だなぁ、あ、いだだだ」
即ほっぺをつねられた。もう、ちょっと文句言っただけじゃん。すぐつねるんだから。
仕切り直してテストの件を総悟に話した。相変わらずテレビを見ていたけど、ちゃんと聞いてくれてるっていうのは分かる。
「それでね、あと2ヶ月なのに間に合うかなぁって…」
「ふーん」
「…それだけ?」
慰めてくれないのか…。ちょっと落ち込んで俯いた。総悟はやっと起き上がったみたいで、ふぁ~っと欠伸なんかしてる。私、諦めて自分の家に帰ることにした。
「あれ、凜ちゃん! 久しぶり!」
「おー紗雪ちゃん! 大きくなったねぇ」
玄関の前でバッタリ会った。えへへ、と照れ笑いして、昔よりもっと美人さんになった凜ちゃんを見る。
凜ちゃんは総悟のお姉さんで、スタイル抜群だし頭もいいし運動もできるし、姉弟そろってうらやましい限り。
「遊びに来てたの?」
「うん、慰めて欲しかったんだけどね、総悟テレビ見てたから…」
「あはは。相変わらず仲いいのねぇ」
夜。いつものように総悟が私の部屋に来て、特訓。いつも私が途中で寝ちゃって、総悟が叩き起こす、みたいな流れでいつも勉強してる。問題児だな私。
今日もいつもみたいに始めて、苦手な理科を教えてもらっていた。
「・・・紗雪?」
突然シャーペンの動きを止めた私。何故か、心の奥の不安が込み上げてきたの。
このままで、大丈夫なのかな。私本当に、総悟と同じ学校行けるのかな。
「私・・・総悟と同じ学校行けるのかな」
不安を口に出してしまって、後悔したけどもう遅かった。溜まっていた不安感と焦燥感が一気に私の口からこぼれ出た。
「私には無理だったのかな。最初は努力圏にすら入ってなかったもん、今だってやっとボーダー圏で。あと少ししかないのに、どうしよう、どうしよう・・・」
平常心を失ってしまって、瞳から涙がボロボロこぼれ落ちる。総悟は慌てる様子もなく、泣きじゃくる私を見ていた。
「無理だろ」
え・・・。
冷静に言い放たれたその言葉は、矢になって私の心に突き刺さる。総悟の声があまりにも冷淡に、冷酷に聞こえて、言葉を失った。
「総悟…」
必死に何か話そうとしては辞め、しばらく何も言えなかった私が発した言葉は、
「ごめんね」
だった。それには、´今まで教えてもらってたのに期待に背いてごめん´ とか ´毎晩遅くまで眠かっただろうに、付き合わせてごめん´ とか、色々な『ごめん』が詰まっていた。
「紗雪、さゆ…」
「ごめん。ごめんね。私もう寝るね。おやすみ」
無理矢理総悟を追い出して、布団にもぐって泣いた。目が腫れるなんて、気にする余裕なんてなくて、疲れて眠り込むまでひたすら泣いた。
やっぱり無理だったんだ。ごめんね総悟。小さい頃からこんな私に付き合わされて、嫌だったよね。ごめんね、ごめんね……。
無理矢理すぎましたかね(汗
すみません。