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「なんだよ、動揺してるのか?」
からかい口調の言葉が飛んでくる。
「うるさい」
「なんだよ、言えよ」
「何でお前に言わなくちゃいけないんだ」
「いいじゃん。俺が聞きたいんだよ」
しつこく食い下がってくるジェラルド。
「お前の事なんか知るか」
突っぱねると、ジェラルドは眉をはねあげた。
「俺、アデライン様の事が好きだよ」
「……は?」
とっさには俺はジェラルドの言った言葉が理解できず、まぬけな声をあげた。
「だ・か・ら、俺はアデライン様の事が好きなんだ」
はっきりと言い切った後、ジェラルドは目を細めた。
「別にお前がアデライン様の事を好きでも好きじゃなくてもどっちでもいいけど、俺の気持ちをお前に知っておいてほしかったんだ」
訊けるものならお前がアデライン様の事をどう思ってるか聞きたかったけどな。
俺は絶句した。まさかジェラルドもメーベル様を好きだなんて。
「……俺も」
「ん?」
「俺も、アデライン様の事が好きだ」
ジェラルドが言ったのだから俺も言わなきゃ嘘だ。
俺の目を見て、ジェラルドは笑った。
「じゃあ俺たちはライバルって訳だ」
「あぁ、そうだな」
「剣だけじゃなくて恋愛もってことだな」
「あぁ」
「俺、負ける気ないから」
ジェラルドの言葉をきいて、俺も望むところだと頷いた。
――俺だって負ける気はないさ、もちろん。