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ドン・シャレオで満足そうに料理を貪る騎士たちから離れたテーブルに、俺とジェラルドは座った。
「結構奢らされたな」
俺がため息まじりに呟くと向かいのジェラルドはくくっと声を殺して笑った。
「それはお互い様でしょ」
まあそうだな、と同意して俺は手に持っていた茶のカップを口元に運んだ。
「でも、元々の原因はアデライン様だよね」
俺はカップを傾ける手を一旦止め、代わりに息を吐きだした。
「正直だからな」
短く答えてもう一度カップを傾けると、カップの向こう側のいたずらな光が灯っている目と目が合った。
「ずいぶん詳しいみたいだね、アデライン様のこと」
「別に」
素っ気ない言葉を向けて、茶を口に含んだ。
「ふうん。で、グレイはアデライン様のこと好きなの?」
「!! げほっげほっ」
さりげなくいきなり核心を突いた問いを向けられて俺はむせ返った。
「あーあ……もっと落ち着いて飲みなよ、グレイ」
ほら布巾、と手渡された布で口元を拭う。
周りのテーブルの騎士たちが何事かとこちらを眺めている。
なんでもないなんでもないと手を振って、俺はジェラルドに向き直った。
「いきなり何を言いだすんだ、お前は!」
ジェラルドに噛み付くとジェラルドは人の食えない顔をして笑った。