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アデライン様の馬車を見送って、俺は城へと振り返り、歩きだした。
中庭に到着すると、さっきよりも大きい人垣ができていた。
大方、着替えに行っていていなかった奴らも入ったのだろう。
近づくと声が聞こえた。
「グレイ様、アデライン様とどうやって知り合ったんですか?」
「……舞踏会で彼女を助けただけだ」
「本当にですか!?」
「嘘ついてどうする」
「そりゃそうですけどね、気になるじゃないですか!!」
俺も輪の中に入った。
「本当はそれだけじゃないだろう、グレイ」
俺のかけた声にグレイは振り返って目をむいた。
「何言ってるんだ、お前」
「俺、アデライン様に聞いちゃったんだよなー」
「は!?何をだ」
目にみえて動揺の色を現したグレイ。
正直な奴だなあとつくづく思う。
でも言葉は止めない。
「お前がアデライン様を抱きしめちゃったこと」
「はぁ!?「えー!!」」
グレイが声を上げるのと周りの騎士たちの悲鳴が重なった。
「そりゃないですよグレイ様!」
叫んで詰めよる騎士たちを手で制しながらグレイが弁解する。
「ちがっ……あれは抱きしめたとかそういうのではなくて……」
「言い訳ですか!?」
騎士の1人がグレイに噛みつく。
グレイがぐっと言葉に詰まる。
「というかジェラルドは何を聞いたんだ」
騎士たちには劣勢とみたのかグレイは俺に話を振ってきた。
「いや、特に聞いてないよ?」
「嘘をつくな」
「ついてないって」
本当か?と疑わしそうなグレイ。そんなグレイに向かって、これは事故だったんだけど、と前置きしてから話しだした。
「アデライン様が倒れたのを助けたらやけに動揺してたからさー」
正直そうだもんね、アデライン様。
俺の言葉にグレイは強く同意した。
「あぁ」
見てられないくらいにな。
俺はグレイの口がそう小さく動くのも見た。
その頬がわずかに朱に染まっていることも。