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第16話『最終試験』


 最後の試験。それは、先生と勝負し、魔法を当てること。それが今、始まった。

 

 「うおっ!?」


「あー悪い。強すぎた。まあ緊張せずに来い。俺に当てれば試験は終わるんだからな」


 炎、水、氷の魔法が一斉に放たれ、カナタの腕や足を掠っていく。これは試験のため、先生も本気じゃなく手加減してくれているのは重々承知だが、それでもカナタが先生に反撃するのは簡単では無い。


「ッ! サンダークラッシュ!」


「グレイシャル・シールド。ウィンドカッター」


「危なっ!? インフェルノ!」

 

 カナタの雷魔法を氷の壁で防ぎつつ、風の刃を飛ばす。頬をかすりそうになるそれをギリギリで避け、カナタは反撃の炎魔法を繰り出した。


「ウォータージェイル」


 だが、地面から燃え上がった火柱は水の球体に閉じ込められ、鎮火されてしまった。


 (マジかよ……。この人に魔法を当てるの無理ゲーじゃね……?)


 そう思ってしまうほどの強者。そんな先生に攻撃を当てるため、カナタは頭を回転させる。

 このまま魔法で攻め続けても、こちらが魔力切れになってしまうだけ。少しだけ隙が作れればいい。

 だから――


「シャドウ・エクリプス!」


 闇魔法を詠唱したことで、漆黒の霧が先生を包み込み始める。

 それは五感と力を一時的に奪う魔法。そして、その状態で攻撃をされると不可避だ。

 ――霧が完全に覆い尽くさない限りは。


「エクスプロード」


 刹那の一瞬で先生が詠唱された、炎魔法。四方八方に巨大な音とともに大爆発が起き、霧は完全に消し飛ばされてしまった。


「視界を奪うのは良い判断だぞ。だが、少し甘かった……な?」


 燃え上がる火柱の中で、先生はそうつぶやく。同時に、彼は違和感を感じた。目の前に居たはずのカナタが消えていたのだ。

 そして、カナタは既に――


「アクアパレット!」


「――――」


 氷魔法で全身を包み込み、業火を潜り抜けたカナタが水魔法を詠唱し、水の弾丸が先生の右掌を掠……らなかった。

 直前に先生が発動した防御魔法がそれを防いだことで、彼に魔法は当たることはなかった。


 (ガードされた!? まじかよ……)


 それを見て、カナタは残念で悔しい思いをした。せっかく気付かれずに後ろに回り込めたというのに。しかし先生は驚いたような顔をし、笑う。


「お前、本当に面白いな。大爆発が起きたってのに、それを潜って俺の背中を取るとはな。俺に魔法を当てれてねえが、ま、良いだろう」


「え? 良いって何がですか?」


「はぁ、察しが悪いな。今ので試験終わりだって言ってんだよ。炎が消えるまで待つんじゃなく、突進してきたんだからな。その勇気を称えてやる」


 なんと、今のカナタの行動が気にいられたようだ。魔法を当ててもいないのに、最後の試験を終わっていいと言ってくれた。

 嬉しさが込み上げてくる中で、先生は手元に何やら一枚の紙を取り出し、話し出した。


「結果は明日送るが、お前の家はどこだったか……。あー、ファルレフィアと同じ所か。お前、アイツらと一緒に住んでるのか?」


 (え!? なんで!?)

 

 どうしてラインたちの家に住んでることになっているのかと驚愕したが、そりゃそうだ。

 なぜなら先生が持っているのは、グレイスが言っていた、ラインたちが勝手に作って提出したカナタの願書だ。

 そしてそこには、ラインたちの家の住所が書かれていた。


「ま、明日に結果を送るから、心して待ってろ。帰って良いぞ」


「あ、ありがとうございました」


 ――そして、聖煌魔法学園せいこうまほうがくえんへの入学試験は終わった。



◆◇◆◇



 (はぁ、はぁ、ラインたちの家まで行きたいけど、遠いなこれ……)


 学園から出てから、カナタはずっと歩き続けている。本当に山が多く、今は下っている最中だ。


「下り坂って、疲れるんだよな……」


 そんなことを呟きながら、歩く。段々と地面が平らになっていき、ようやく山から降りることができた。

 そこにあるのはかなりでかい商店街だ。読めないが、看板が沢山出されて客も大勢いる。


 初めてこの世界に来た時、ライン、セツナと一緒に回り、ここにも訪れた。

 何か買おうかとも考えたが、カナタはお金を持っていないので何も買えない。


 (とっとと登っちまおう)


 この商店街を抜けた先にも山があり、それを越えるとラインたち四つ子のバカでかい屋敷があるのだ。


 (みんな、いつもこんな道通って帰ってるのかな? 絶対大変だろ……)


 商店街の道を歩きながら、そんな事を考えているカナタ。すると、右手側にある花屋から出てきた男にぶつかってしまった。


「おっと」


「あっ!? すみません! 大丈夫ですか?」


 咄嗟に謝り、少年の顔を見る。その隣には少女がいて、二人ともカナタと同じくらいの歳に見える。


「いえいえ、大丈夫ですよ。こちらも不注意だったので」


「そーそー、あんまり気にしなくていーよー」


 丁寧に敬語で話す少年と、明るく振る舞う少女。二人にもう一度頭を下げ、前に向かって進もうとする。

 すると、


「――あの」


「え? どうかしましたか?」


 少年に呼び止められ、振り返る。何かまずいことをしてしまったか? そんな不安で焦り、汗が流れてくる。

 焦るカナタをよそに、二人はカナタの顔をジロジロと見る。


「いやー、なんでもないよー。ごめんねー」


「は、はい」


 突然、少女がそう言って手を振ってきたため、カナタも手を振り返して山に向かって歩いていった。


「はぁ、ビックリした。何かヤバいことやったかと焦ったぜ……」


 誰にも聞こえないようにそう呟き、山を登り始める。


「……ねぇー、気のせい?」


「さあ、どうでしょうね……」


 ――カナタの背中を、少年と少女は値踏みするように見つめていた。

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