第15話『第三試験と……』
第一、第二の試験をクリアし、第三試験が始まった。今度は一体、どんな難問を問われるのかと思っていたカナタだが、先生はただ一つ、単純なことを言った。
「三つ目は試験っていうか、質問だな。お前の『権能』を二つとも教えろ」
三つ目の試験は、これまでの魔法を測るものとは違い、『権能』を伝えるだけだ。
……そうはいったものの、『権能』とは何だ? どこかで聞いた覚えがある。――そうだ。アッシュが教えてくれたではないか。
『この世界は、はるか昔に『創世神』によって創られたんだ。そして、人間だけじゃない色んな種族も生み出した。そんな僕たちは、産まれた時に二つの『権能』っていう能力を授かるんだ』
そう言っていた。この世界に産まれた者に与えられる特殊能力のようなもの。それが、『権能』だ。
カナタ自身、その力を持っている自覚は無いし、そもそも地球人であるカナタはこの世界で産まれたわけでもない。どうして持っているのか分からない。
アッシュは、カナタの持つ『権能』は《創造》と《破壊》と言っていた。
どういう原理で使用できるか分かっていない状態だが、とりあえずはそれを答えよう。
「えっと……《創造》と《破壊》です」
「へぇ、そうなのか。俺が受け持ってる生徒の中に、お前と全く同じやつがいるぞ。そいつから教えて貰ってもいいかもな。――って、合格する前提で話していたな。悪い悪い」
合格したい気分としては、全然合格する前提で話していてもらって構わないのだが。
それにしても、まさか全く同じ『権能』を持つ人がこの学園にいるなんて驚きだ。
「さて、これで三つの試験は終わったな」
「あ、これで終わりですか?」
これまでのように、「第〜試験を始める」のようなことは言っていないため、これで入学試験が終わったのかとカナタは思った。
だが、
「いや、あと一つだけ残ってる」
と、そう言われた。これ以上何をさせられるのかと怖くなり、肩をすくめるカナタを見て笑う。
「去年までなら、今の三つだけだったんだ。お前はタイミングが悪かったな」
「え? 今年から変わったんですか? どうしてですか?」
なんと、昨年までは、今日カナタが受けた三つの試験だけで住んだらしい。ではなぜ今年から増えてしまったのだろうか。カナタが質問をすると、先生は頭を抱えて話し出した。
「去年は転校生が五人も来てな。多すぎるってことで、今年から試験をすこーしだけ難しくすることになったんだ」
(去年はなんでそんなに転校してきたんだ……? それが無ければ俺はもう試験終わってたのに!)
心の中でそう叫ぶが、結果は変わらない。残り一つは受けなければならない。
「――それで、最後の試験は何をすれば良いんですか?」
覚悟を決め、そう尋ねる。すると、先生は口角を上げニヤリとし、恐ろしいことを呟いた。
「お前には、俺と戦ってもらう。一度でも俺に魔法を当てることが出来たら試験は終わりだ」
「……え」
――こうして、最後の試験が始まった。
◆◇◆◇
「なぁ」
「ん? なに?」
「なんか今日はいつもより近くないか?」
「別に? 普通でしょ」
リビングのソファーに深く腰をかける長男のラインと妹のセツナ。
ラインの隣にくっついて座り、図書室から持ってきた分厚い本を読みながら、ラインの質問に淡々と答える。
「兄さん、今日はどこか行く?」
「アレスはどっか行きたいのか? 俺はいいや。今日は日差し強いし外出たくないな」
「えー今日はみんなで商店街行こうと思ってたのにー!」
ラインの言う通り、今日は日が照っていてまあまあ暑い。そのため、外に出たくないのだが、末妹のレンゲはそうはいかないようだ。残念そうにそう嘆いている。
緋色の瞳でじーっとラインを見つめるレンゲを見て、ラインはため息をつく。
「はぁ、仕方ないな。一緒に行ってやるよ」
「やったー! ラインお兄ちゃん大好き!」
「お兄ちゃん、レンゲに甘すぎない?」
「別に甘くねえって。あんなふうに見られたら断れるかよ」
末妹に対して甘い長男を呆れたように見つめるアレスとセツナ。だが二人もまた、末妹に対して甘い。そんな二人が取る手段は――
「仕方ないなー。私も行くよ」
「それじゃあ僕も行くよ」
なんと仲の良い四つ子の兄妹だろう。ソファーに腰掛けていたラインとセツナも立ち上がり、四人で玄関の扉まで向かう。
そして、扉を内側から開こうと――
――その瞬間、外側から扉を開かれた。
「うおっ!?」
扉が開いたその先にいたのは――
「あら、ごめんね。痛くなかったかしら?」
ラインたち四つ子と全く同じ緋色の瞳を持ち、真っ赤な髪を腰下まで伸ばしている美しい女性だった。




