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第14話『第二試験』


「――これより、第二試験を始める」


 第一の試験をクリアした矢先、すぐに先生はそう発した。

 六つの属性魔法を離れた的に当てなければならない第一の試験。光魔法が使えないカナタは、光魔法ではなく闇魔法で挑むというイレギュラーな方法を行い、成功を手にした。


 そして始まる第二の試験。その内容は――


「お前には、俺が出した二つの魔法をそのまま真似てもらう。威力や精度はどうでもいい。とにかく俺と同じ魔法を打て」


 と、いうわけだ。先生がどんな魔法を撃つか知らないが、カナタが知っているのは属性魔法、防御魔法、治癒魔法だけ。ならば、初見の魔法を三つも模倣しなければならないことになる。


 正直いってめちゃくちゃ難しいだろう。


「まず一つ目だ。――ライトニングカッター」


 先生がそう詠唱した瞬間、雷属性の刃が空を切り裂いて遠くに飛ばされた。

 こんな魔法をグレイスから教わったことはない。驚きながら先生を見ても、彼は何も説明する気はないようだ。そりゃあ試験だし当たり前だが。


 (えっと……雷の刃だったよな?)


 現在カナタが知っている魔法を脳内で並べる。属性魔法にはそれぞれ威力や効果の違う四つの技があるのだが、雷魔法に刃を飛ばすものはない。

 そして、刃を飛ばせる属性魔法は風魔法のみ。


 (だったら、この二つを組み合わせればいいのか……?)


「ライトニングカッター」


 魔力を指先に集め、風魔法と雷魔法に変換し、詠唱する。すると、見事に雷の刃が飛び、成功した。


「へえ、やるな。まあ、精度がゴミすぎるが今回は構わん。二つ目の魔法に移るぞ」


 ……なんかちょっとディスられたが、まあクリアしたようなのでいいだろう。


「フレイムスパーク」


 二つ目。先生はそう詠唱した。それは、ただの炎魔法だった。指先から炎の弾丸が放たれ、遠くに飛ぶ。


(え、これだけ?)


 ただ炎魔法を撃つだけでいいのか? そう思って安堵していたカナタの思惑は一瞬にして崩された。


「あ、え!?」


 なんと、奥に向かった炎の弾丸が戻ってきたのだ。そして、それは先生の手に触れると、魔力に変換されて体内へと戻っていった。


「……え? な、なんですかそれ……」


「教えるわけないだろ。いいからさっさとやれ」


 無慈悲にもそう突き放され、カナタは前を向く。

 今の魔法はただの炎魔法だった。しかし普通と違うのは、魔法を発動した先生の元に帰ってきたことだ。

 一体どうなっているのか。


「フレイムスパーク」


 詠唱し、炎魔法を放ったカナタ。だがもちろん、それは遠くに行っただけで戻っては来なかった。

 

 (一体どうなってんだ……? もう一回くらい見られればいいんだけど、多分見せてくれないよな……)


 もう一度見れば、なにかコツが分かるかもしれない。しかし、もう一度見せてくださいと言って見せてくれそうな感じではない。

 どうすれば……と悩んでいたカナタ。彼は、大事なことを忘れていた。


 (……いや、俺記憶力めっちゃいいじゃん)


 そう。彼はフォトグラフィックメモリーを持っている。そのため、今先程見せてもらった魔法を鮮明に思い出せるのだ。

 目を閉じ、記憶を巡ることに集中する。

 カナタの脳内には、さっきの情景が完璧に再現されている。そして思い出し続けていると、あることに気づいた。


 (……なるほど、そういう事か! だったら――)


 どうすればいいのか理解した。ニヤリと笑いを浮かべ、右手を前に出す。


「フレイムスパーク」


 詠唱によって魔力が変換され、炎魔法が高速で撃ち出される。それは一直線に進み続け、そのまま木に激突――


「――っ!」


 しなかった。釣竿を引くように腕を引っ張ると、炎の弾丸はこちらに向かって飛んできたのだ。そして、それはカナタの右掌にぶつかる。


「熱っ!?」


 残念ながら、魔力に変換して体内に戻すことは出来なかった。それでも、先生が行ったように魔法は帰ってきた。


「……」


 興味深そうにカナタを見つめ、先生は口を開いた。


「どうやって魔法を自分のもとまで戻した?」


「魔力を糸みたいにして、炎魔法と繋げたんです。あとは手を引けば、俺のもとに帰ってくるってことです」


 カナタは炎魔法を発動した際、魔力を糸のようにし、炎の弾丸に括り付けた。

 そうすることで、一度放った魔法を自分のもとまで引っ張ることができたというわけだ。


 カナタの説明を聞き、先生は「へー」と呟き、


「俺とはやり方が違うな」


「先生のは、魔力の糸すら付けてなかったですよね。仕組みが分からなくて俺には真似できなかったので、即席で考えたんですよ」


「一度しか見せていないのに、そこまで分かったのか? その上に自分で新しい方法を考えつくとはな」


 そこまで見抜いたカナタを興味深そうに見つめる。

 

「俺はてっきり、『もう一度見せてください』ってお願いされると思ってたんだがな」


「……え? 頼めば見せてくれたんですか?」


「ん? ああ。言ってくれれば何度でも見せてやったぞ? 俺は魔法の原理を教えないって言っただけで、頼んできたら何回でも見せたぞ」


 頼んでも見せてくれないと思っていたが、そんな心配は必要なかったようだ。無駄に緊張して損した。


「はぁ……」

 

 先生に気づかれないようにため息をつきつつも、その目を見つめる。これで、第二の試験は終わった……はずだ。

 もしかすれば、魔法を魔力に戻し、体内に戻すことが出来なかったためにもう一度しなければならないかもと不安になるカナタ。

 だがその不安は、一瞬にしてかき消された。


「――ま、いいだろ。第三試験を始めるぞ」

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