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第13話『第一試験』


 ――第一の試験。それは、受験者に闇以外の全ての属性魔法、治癒魔法、防御魔法の精度を測るものである。

 そして、それはこの広い校庭――魔法実習場で行われる。


「ではこれより、第一の試験を始める」


 ヴァルディ先生はそう言うと、カナタの背中側へ歩いていった。そして、


「前を見ろ。奥に(まと)があるのが見えるな?」


「え? 的? え?」


 先生の指さす方を見るが、砂と草が生い茂っている地面しか目に入らない。場所間違えてるのでは? と思って不思議そうにしていると、いきなりカナタの頭が掴まれた。


「よく見ろ。あれだ」


 ……目を擦ってよく見てみると、何やら少し青色に光っているものが目に入った。直径十センチの円のようだ。


「あ、あの円ですか?」


「そうだ。お前にはあれに向かって属性魔法を撃ってもらう。何度失敗してもいいが、制限時間がある。五分以内に炎、水、雷、氷、風、光魔法を当てろ」


 そんなむちゃくちゃな。今カナタが立っている場所から的までざっと五十メートルはある。その上、あの馬鹿みたいに小さい的に六つの魔法を正確に当てろと? いくらなんでも無理難題と叫びたい。――それでも、やるしかない。


「さて。三分経ったら俺が合図する。それまで何度でも挑戦していい」


「分かりました」


 ――そして、第一の試験が始まった。


 (それじゃあまずは……)


「フレイムスパーク」


 炎魔法を詠唱し、指先から炎の弾丸を高速で放った。


(……いや、当たってんのか当たってないのか分からないんだけど!?)


 的が遠すぎる上に小さすぎるので、当たってるのか当たってないのか分からない。どうしたものか。そう考えていると、先生が声を上げた。


「あ、言い忘れていた。魔法が当たれば的の色が変わる。炎魔法が当たれば赤、水魔法なら青、氷魔法なら水色、雷魔法なら紫、風魔法なら緑、光魔法なら黄色に光るぞ」


 (なるほど……。元々青色に光ってて、今も青か。じゃあ炎魔法は当たってなかったのか)

 

 先生によると、属性魔法を当てる毎に色が変わるようだ。見たところ、最初の時と色は変わっていないので、先の炎魔法は当たっていなかったことを確認できた。


 (いや、これ、めちゃくちゃシビアじゃん……)


 そう言いたいが、泣き言は言ってられない。再び右腕を前に向け、左目を閉じ、もう一度詠唱する。


「フレイムスパーク」


「――へえ、二発目で当てるか。見込みありそうだなお前」


 なんと、二発目の炎魔法が当たり、的の色が赤色に変化したのだ。正直、二発目で当たるとは思っていなかった。先生も驚いたような感じを見せているので、もしかすると

結構早い段階で当てれたのではないだろうか。


 今の角度で当てればいい。腕を上げたまま動かず、今度は水魔法を詠唱する。


「アクアパレット」


 指先から魔力が水魔法に変換され、水の弾丸が飛ばされた。


 

 そして、氷魔法――「フリーズニードル」、風魔法――「ウィンドカッター」、雷魔法――「サンダークラッシュ」も見事一発で成功したのだ。


 ――さて、残るは光魔法。グレイスとの鬼の訓練によって、属性魔法は威力も精度もかなりのものとなった。

 だがしかし、ただ一つだけ上手くいかない魔法があった。


「ルミナスアロー」

 

 指先を向け、カナタが詠唱した。それが、光魔法だ。だが、どれだけ待っても一閃を描く光は生まれない。


 グレイスから教えられた時もそうだった。

 光魔法は、良心を持つものしか扱えない。そう彼に言われた。

 カナタだって、もちろん善悪の区別はしっかりしている。彼自身でも思っている通り、彼は結構優秀な子だ。性格が捻くれているとか、暴力的だとかそんな事はない。

 なのに、何故か光魔法が使えないのだ。


(……なんで、使えないんだよ……)


 あと一つだけだというのに。出来ない自分を嘆いていると、カナタが光魔法を出せていないことに先生が気づいた。


「なんだお前、光魔法を使えないのか? その見た目で意外だな」


「意外ってどういうことですか?」


「犯罪者とかは光魔法を使えないんだが、お前は犯罪を犯すようなタイプには見えねえし、こんなのは初めて見たな」


 なんか興味深そうにカナタを見ているが、それどころではない。時間は刻一刻と迫ってきている。六つの属性魔法を成功させなければならないのに、光魔法を使えないせいで試験を突破できない可能性がある。


「まずい……どうする? どうする!?)


 思考が脳内を走り、どうすべきか様々なパターンを考える。

 どうやったら第一の試験をクリアできるか。

 その答えは、六つの属性魔法を的に当てること。


 それならば、カナタの取る手段は――


「――シャドウ・エクリプス」


 次の瞬間、闇が的を包み込み、その外見を真っ黒に染め上げた。

 ――同タイミング、先生の三分経った合図が出た。


「――――」


「せ、先生……」


 先生は合図を送ると、何も言わずにカナタを見つめる。闇魔法を使うのはダメだったか。それとも大丈夫だったのか。何も言ってこない無言の時間が、カナタの心を締め上げる。

 そして、先生が伝える結果は――


「――合格だ。第二の試験を始めるぞ」

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