「今日はここでキャンプとするか」「晩飯は?」「伝説の竜の角シチュー」「いやそれ納品素材のやつ」
日の沈みかけた荒野で、二人の冒険者が焚き火で暖をとっていた。
「今日はここでキャンプとするか」
冒険者の一人が言った。
「晩飯は?」
もう一人の冒険者が尋ねた。
「伝説の竜の角シチュー」
「いやそれ納品素材のやつ」
「えっマジか? やべ!」
「ヤバすぎだろ。納品素材を食材にするなよ」
「いやヤバいのはそれだけじゃない」
「どういうこと?」
「朝にもう作って、作り置きしている状態だから」
「え! もう竜の角を調理したの?」
「もちろん」
「何がもちろんじゃ。えーどうすんだよ、納品素材ないと報酬もらえんぞ」
「まあ過ぎたことは仕方ない。食おうぜ」
「ポジティブすぎるだろ、少しは気にしろや。あと、それ食うのかよ」
「だって竜の角のダシが出でてるんだぞ」
「だから食いたくないんだろ。得体が知れなすぎる」
「お前、竜の角の料理食ったことないのか?」
「ねーよ。お前はあんのか?」
「ない」
「なんだこいつ。ひでーな、報酬おじゃんにした上、晩飯もおじゃんじゃん」
「じゃんじゃんうるさいやつだな」
「お前のせいだろ。とにかく責任持って、シチューの味見をしろ」
「わかったよ。いうて、うまいと思うけど」
「お前の中の竜の角についての評価がわからん」
「いただきます……」
「どう?」
「うん。大人の味」
「なんだそのふざけたレビュー。具体的に言えや」
「あれだね、ちょい苦い」
「本当にちょいか?」
「ごめん。死ぬほど苦い、つーかマズイ」
「大人の味に謝れ」
その後、二人はダシに使った竜の角を納品した。もちろん突き返されたとさ。




